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ふたりの絆編エピローグ 後藤3話



【後藤 マンション】

後藤
まだ、お母さんには会わせられないか?

サトコ
「え?お母さん···?」

ふと箸を止めた後藤さんが真剣な顔でポツリとこぼした。

サトコ
「お母さんに会わせられないって···?」

後藤
会わせてもらえるのかと思ってたんだが···もう帰ったと聞いて···
···まだ、俺は両親に紹介するには値しないのかと

サトコ
「そ、そんな!とんでもないです!」
「むしろ、紹介してよかったんですか!?」

後藤
···いいに決まってるだろう

サトコ
「今、私は刑事ではありますけど、公安学校の訓練生で、後藤さんは教官だから···」
「お母さんにきちんと話をするのは、卒業してからの方がいいんじゃないかと思ったんです」

私の言葉に、後藤さんがハッとした顔をする。

後藤
そうか···教え子に手を出したことになるのか···

サトコ
「お互い成人してるので、気にしなくてもいいのかもしれないですが、念のため···」
「私もできれば紹介したかったんですけど···」

後藤
俺のことを気遣ってくれたのか。気付かなくて、すまない

サトコ
「私の方こそ、後藤さんが会いたいと思ってくれてるって気が付かなくて···」

(いろいろ調べてもらってたのに、本当に申し訳ない···!)

後藤
そんな顔するな。言葉で伝えなかった俺が悪い

サトコ
「そんなこと···私がちゃんと聞いておけばよかったんです」
「よく考えたら、恋人としてではなくても上官として紹介できたのに···」

後藤
また、機会があったら紹介してくれ。アンタの田舎に行ってみるのもいい

サトコ
「はい!田舎ですけど、食べ物は美味しいですよ」
「いつか···後藤さんと一緒に帰れたら嬉しいです」

後藤
ああ。ひとつ···覚えておいてくれ

スッと後藤さんが息を吸うと、真剣な瞳で見つめられた。
視線が外せずに、私もただ見つめ返す。

後藤
俺は···中途半端な気持ちで、サトコと付き合っているつもりはない
どんなかたちになろうと、必ず責任は取る

サトコ
「後藤さん···」

(私も、後藤さんが望んでくれる限りは傍にいたい···)
(望んでくれなかったとしても、簡単には諦められないけど)

気持ちを固めるタイミングは、これまでに何度かあった気がする。

(後藤さんの過去を知って、それでも彼の傍にいたいと思った時···)
(姿を消した後藤さんを追いかけて行った時···)

サトコ
「あ···もしかして、最近やけに優しかったのは、そのことを気にして···?」

後藤
っ!それは···

口ごもった後藤さんが、話す代わりにパクパクとおかずを口に運ぶ。

後藤
···いつもと違うと思ったのか?

サトコ
「なんとなくですけど···自分で進んでデスクの片付けとかしてたし···」
「コーヒーや “銀色のあんぱん” を用意してくれたので···」

後藤
それだけのことで違うと思われるんだから、日頃の俺はどれだけ気が利いていないか···だな

サトコ
「そういうわけではないんですけど!後藤さんはいつも優しいです」
「どんなに忙しい時でも、私の時間を作ろうとしてくれるじゃないですか」

後藤
俺がアンタに会いたいんだ。長期捜査になると、それもままならなくなるが···

サトコ
「それはお互い様ですよ。私が捜査に出る時もありますし」
「でも···そうやって、お互いのことを考える時間が長ければ···大丈夫だと思うんです」

後藤
···そうだな

(今回のことだって行き違っちゃったけど···でも、お互いに相手のことを考えてたからだし)
(こういうすれ違いだったら大丈夫じゃないのかな)

後藤
アンタが無事に卒業したら、改めてご挨拶に行かせてくれ

サトコ
「はい!その時は、後藤さんのご両親にも」

後藤
親父だけでもいいか?

サトコ
「そう言わずに、ぜひ、お母さんにも」

後藤
まあ···それは追々様子見てだな

ごちそうさま···と箸を置いて、ちょうど話も一段落する。

後藤
俺が片付けるから、アンタは風呂にでも入っててくれ

サトコ
「片付けでしたら、私が···お味噌汁のお鍋もありますし」

後藤
それくらいだったら、俺にも片付けられる

サトコ
「まだ、さっきのこと···」

後藤
もう気にしてない。だが、アンタの恋人として···キチンとしていたいと思うのは、いいだろう?

サトコ
「後藤さん···」

後藤
ほら、風呂で疲れをとってこい

サトコ
「ありがとうございます。それじゃ、先に入らせてもらいますね」

(やっぱり私は···幸せ者です···!)

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【寝室】

後藤
···眠れないのか?

サトコ
「な、なんとなく···」

(一緒に眠るのが久しぶりだから、緊張して···)

手が触れるか触れないかくらいの距離は空いているけれど、ちょっとした動きも意識してしまう。

後藤
こうしていれば眠れるか?

サトコ
「えっ···」

ギッとベッドが軋んだかと思うと、後藤さんに腕枕される。

(ち、近い···!)

その温もりに包まれ、一気に鼓動が早くなった。

サトコ
「あ、あの···」

後藤
アンタ、体温高いよな

サトコ
「後藤さんは低い方ですよね」

後藤
ああ···冬場になると手足が冷たくなって眠れないこともある

サトコ
「今年の冬は私が温めますね」

後藤
二人なら温かいな

サトコ
「はい」

後藤さんが私の頭をポンポンっとしてくれる。

(なんか···身体の力抜けてきたかも···)

落ち着いてくると、今度は後藤さんの心臓の音が聞こえてくる。

サトコ
「こうしてるの···気持ちいいですね···」

後藤
なら、眠れ。寝付くまで、こうしててやる

サトコ
「はい···」

髪に触れている指先があやすように優しく動く。
その勘職を心地よく思っているうちに···私はいつの間にか眠りに落ちていた。

サトコ
「んっ···」

(あれ?いつもよりベッドが柔らかくて気持ちいい···寝具替えたっけ?)
(でも、そろそろ起きないと遅刻しちゃう···)

眠さを振り切るようにして目を開けて、一瞬で目が覚めた。

サトコ
「ご、後藤さん···!」

後藤
どうした?

(そ、そっか!昨日は後藤さんの部屋に泊まったんだった···!)

昨日腕枕されていた距離と変わらぬ位置で見つめられていて、私は視線をさまよわせる。

後藤
アンタを見てると、本当に飽きない

サトコ
「いつから起きてたんですか?先に起きたなら、起こしてくれればよかったのに···」

後藤
気持ちよさそうに寝てるから、それも忍びなくてな

(寝顔、見られてたなんて恥ずかしい···)

優しく微笑む後藤さんがカッコいいだけに、恥ずかしくて背を向けてしまう。

後藤
怒ったのか?

サトコ
「怒ってませんけど···」

後藤
こっち向いてくれ

後藤さんの手が肩にかかり、元の態勢に戻される。

後藤
アンタの幸せそうな顔を見るのが、俺の幸せなんだ

サトコ
「そんなふうに言われたら···」

(顔、隠せないじゃないですか···)

後藤
そういうアンタに、俺は元気をもらってる
ありがとな。いつも、傍にいてくれて···

その手がそっと頬に添えられ、優しく唇が重ねられる。

(朝から、こんなに幸せでいいのかな···)
(後藤さんにも、もっともっと幸せになってもらえるように、私も頑張らなくちゃ···!)

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【教官室】

休み明けの教官室。
私は張り切って朝のコーヒーの準備をしていた。

後藤
コーヒーだったら、俺が···

サトコ
「これは補佐官の仕事にしてください」
「これでも美味しいコーヒーの淹れ方とか研究してるんですよ」

後藤
そうか?···なら、頼む

サトコ
「はい!今日はコーヒーに合う長野の栗ようかんも持ってきました」

東雲
コーヒーだったら、オレのもよろしく

石神
すまんが、俺の分も頼む

颯馬
私も。ミルク入りでお願いします

加賀
ブラックだ

サトコ
「は、はい···!ちょっと待ってください!」
「颯馬教官がミルク入りで、加賀教官がブラックですね···」

後藤
氷川は俺の補佐官なんですが

東雲
コーヒー1杯淹れるのも2杯淹れるのも同じじゃないですか

後藤
はぁ···

サトコ
「大丈夫です!後藤教官はブラックでいいですか?」

後藤
ああ···

(他の教官の役に立つことは、後藤さんの役に立つことでもあるし)
(補佐官としてもサポートできるようにしていかなきゃ)

後藤
氷川···

サトコ
「はい!」

朝の雑務を終えて教場に向かおうとすると、後藤さんに呼び止められる。

後藤
今夜、空いてるか?

サトコ
「大丈夫ですけど···」

後藤
飯でも、食いに行かないか?
週末は結局、家だったからな···

(これって、デートのお誘い···だよね?)

サトコ
「素敵な週末でしたけど···」

後藤
ん?

サトコ
「外でのデートも、とっても嬉しいです!」
「なんか···この数日、幸せすぎて怖いくらいです···」

後藤
アンタは···

私を見て、後藤さんが少し困ったように笑う。

サトコ
「あ、すみません。こんなところで···」

後藤
ああ。あんまり可愛い顔を見せるな
教官として、顔に締まりがなくなるのは困る

サトコ
「は、はい···」

後藤
あとで、また連絡する

サトコ
「待ってます!」

誰もいない廊下で交わすヒミツの会話。

(こういうのって、ドキドキしちゃうな···)

去っていく後藤さんの背中に頬が緩みかけ、私はあわてて引き締める。

(ここは公安学校!壁に耳あり障子に目あり···どこに他の教官方の目があるかわからない!)
(でも、今夜は後藤さんとご飯か···1日頑張れそう!)



【街】

その日の夜。

(街中で待ち合わせって久しぶり···後藤さんは捜査の帰りなのかな?)

お昼休みに会ってからは顔を合わせておらず、待ち合わせ場所はメールで連絡をもらった。

(外での待ち合わせだから、いつもよりちょっとお洒落してみたんだけど···)
(気付いてくれるかな?)

後藤
サトコ

サトコ
「あ、後藤さん···」

名前を呼ばれ、そちらを振り返ると···

サトコ
「!」

(そのスーツ···!)

後藤
待たせてすまない

サトコ
「い、いえ、今来たところです。後藤さん、そのスーツ···」

後藤
ああ、アンタと一緒に買ったものだ
正直に言うと···アンタのお母さんに会うなら、新しいスーツの方がいいだろうと思って···

サトコ
「え!そのために買ってくれたんですか!?」

(後藤さんがそこまで考えてくれてたのに、私ってば全然気が付かないで···)
(バカバカ!本当にバカ!)

後藤
そのままクローゼットの肥やしにするのももったいないからな
せっかくのデートだし、着てみたんだ

サトコ
「素敵です!私ももっとお洒落してくればよかった···」

後藤
綺麗だ

サトコ
「え···」

後藤
制服姿で頑張っているアンタもいいが、そういう恰好のアンタもいいな

サトコ
「あ、ありがとうございます···!」

後藤
行こう。腹減ったろ?

サトコ
「ペコペコだったんですけど、後藤さんがあんまり素敵で胸がいっぱいに···」

後藤
腹がいっぱいになってないなら、大丈夫だな

今日は手ではなく、腕をスッと出される。

(腕を組むってことだよね···?)

いつもと違う雰囲気に鼓動を早くしながらも、その隣に寄り添う。

後藤
足元、気をつけろ

サトコ
「はい」

後藤
店は予約してある

(気軽に夕飯って思ったんだけど···なんか、ちょっと雰囲気が違うような)
(どこに向かってるんだろう?)

【レストラン】

後藤
どうぞ

サトコ
「あ、ありがとうございます···っ」

(ホテルの高級レストランとは···!)

サッとイスを引いて座らせてくれる後藤さんは完全なジェントルマンだ。

サトコ
「後藤さんが王子様に···」

後藤
なに言ってるんだ。レストランくらい、前にも来ただろう

サトコ
「そうなんですけど···あの···」

後藤
ん?

サトコ
「無理···してませんか?定食屋とかでもいいんですよ?」
「後藤さん、堅苦しいお店はあんまり好きじゃないんじゃ···」

後藤
堅苦しいのは好きじゃないが、シチュエーションが大事なのも分かっている
気の回らない所も多いだろうが···たまには少しの無理くらいさせてくれ

サトコ
「後藤さん···」

後藤
カッコつけようと思って、いい恋人でいたいわけじゃない
その方がアンタを幸せにできる気がするんだ

サトコ
「もうすでに、最高に幸せです···!」

後藤
なら、もっとその上を目指そう

サトコ
「···っ」

後藤
泣くな

嬉しさで涙ぐむと、クシャっとしたハンカチが出てくるのも嬉しくて。

サトコ
「私も絶対に後藤さんを幸せにします!」

後藤
ああ···

少しだけ涙で濡れたクシャクシャのハンカチを私は抱きしめた。

【教官室】

翌日の教官室。

颯馬
そういえば後藤···
グランドホテルのディナーはどうでした?

後藤
ぶっ···!

サトコ
「え?」

颯馬教官に尋ねられた後藤さんが、お茶を吹き出しそうになっている。

(グランドホテルのディナーといえば、昨日の夜行ったところだよね···?)
(どうして、颯馬教官が···?)

後藤
周さん、その話はまたあとで···

颯馬
『オヒルナンデスネ』で紹介されるようなレストランに、後藤が行きたいと言うから教えましたけど···
予約はちゃんと取れましたか?

後藤
···ええ、まあ

颯馬
それはよかった

サトコ
「······」

(なるほど···お洒落なレストランだと思ったけど、颯馬教官の知恵だったんだ)

颯馬
サトコさんは?

サトコ
「え?」

颯馬
料理の味はどうでしたか?

サトコ
「それは、もう···!」

後藤
······

サトコ
「!」

乗せられかけ、後藤さんの視線に慌てて口をつぐむ。

サトコ
「後藤教官の感想を聞く限りでは、最高そうでしたよ」

颯馬
フフ···そうですか、それはよかったです

(う、その満面の笑み···絶対に私と行ったってバレてる···)
(恐るべし···颯馬教官!!!)

後藤
そろそろ講義の時間か···行くぞ、氷川

サトコ
「はい!」

教官室を出ると後藤さんと視線をかわし、肩を並べる。

後藤
今日は朝から、前回の復習テストだ

サトコ
「えっ···!そ、そうなんですか!?」
「···がんばっていい点取ります!」

後藤
フッ···アンタなら、きっと大丈夫だろう

(いつまでも、後藤さんの隣に立っていられるように···)
(訓練生としても刑事としても恋人としても···まだまだ頑張ります···!)

Happy End



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