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カレが妬くと大変なことになりまs(略 加賀カレ目線



【会議室】

上司
「だから言っているだろう。お前は単独行動が多すぎる」
「今まで目を瞑ってやったのは、なんとか事件が解決してきたからだ」

(だったらいいじゃねぇかよ)

捜査会議と称した、上司のくだらない説教。
一応捜査の進捗状況などの報告もするが、たびたび脱線してはこっちへ集中砲火だ。

(手柄のひとつも挙げれねぇ野郎が文句たれてんじゃねぇ)
(こんなゴミみてぇな会議なんざさっさと終わらせて、現場に出させろ)

加賀
チッ···クソが

上司
「なんだと!?加賀!今なんと言った!?」

心の中で舌打ちしたつもりだったが、つい口からこぼれたらしい。
実りのない会議で缶詰させられている苛立ちは、どうやっても隠し切れなかった。

津軽
兵吾くんってほんと、世渡り下手

上層部の怒りが収まったころ、隣に座っていた津軽が小声で話しかけてきた。
同じように面白くないのか、頬杖をついて退屈そうにしている。

(こいつがいるのはいいが、なんで隣に座る···)

津軽の最初の印象は、 “食えない男” ---
そしてそれは、今でも変わっていない。

(なんの目的があって俺に絡んでくる···?)

津軽
はー、それにしても無駄な会議だな

加賀
会議なんて呼べたもんじゃねぇ

津軽
秀樹くんならこういうの堪えられそうだよね

加賀
···

津軽
そういえば···いいね、あの子
俺の “お気に入り” になるかも

津軽のほうを見ないようにして考えていたが、不意に聞かされた言葉に思わず振り返った。

津軽
はは、やっとこっち見た

加賀
······

津軽
あの兵吾くんも、専属補佐官ちゃんのことだと動揺するんだ?

加賀
何が言いてぇ

津軽
何も

(···あのクズ)
(また変なの釣り上げやがって···)

放っておいてもそばにおいても、面倒ごとを背負ってくる。
それが、俺の女だった。



【公安課ルーム】

変なもんを釣り上げた、とはいえ、あの津軽がサトコ如きに引っかかるわけもない。
ようやく会議が終わって戻ると、サトコが待っていた。

サトコ
「お疲れ様です。大変でしたね」

加賀
クソどものせいで、丸一日無駄にした

津軽
確かに、何の意味もない捜査会議だったよね
日本って案外平和?

サトコ
「そんなのんきな···」

津軽
そういえばウサちゃん、書類処理終わったんだよね?
じゃあ、兵吾くんも一緒にご飯でも行こっか

(···は?)


【居酒屋】

津軽のサトコへの態度は、しばらく様子見ーーー
のつもりだったが、結局サトコとともに半ば無理やり居酒屋へ連れてこられた。

(チッ···今日の予定が全部狂ったな)

だが、ふたりで断れば津軽は怪しむだろう。
妙なところに鼻が利くのが、面倒でもあった。

津軽
そういえば、今日はずいぶんモモに椅子蹴られてたね?

サトコ
見てたんですか···津軽さん、会議でほとんどいなかったのに

津軽
あはは、あの子が舌打ちするときって、たいていウサちゃんが近くにいるんだよね
それが、モモがウサちゃんに八つ当たりする5秒前の合図

サトコ
「わかってるなら止めてください···!」

(···何が “ウサちゃん” だ)

津軽がサトコをそう呼ぶたびに、苛立ちが募っていくような気がする。
そのうえ、どういうつもりかは知らないが今日はいつも以上にサトコにベタベタしていた。

(カマかけてるつもりか···?こいつのことだ、とっくに俺とサトコの関係は怪しんでるだろ)
(だが、暴かれたところで致命的な弱みにはなり得ねぇ)

こいつが原因で仕事がおろそかになることはない。
逆もまた然り、だ。

(だとすれば、別の目的があるのか···?)
(やたらと俺に絡んでくるのと、同じ理由か···)

サトコはとにかくさっさと津軽を酔わせて帰ろうとしているらしく、どんどん酒を注いでいる。
だが昔からザルで味音痴の津軽には、まったく効いていない。

津軽
ウサちゃん、俺を酔わせようとしてる?

サトコ
「い、いえ!グラスが空なので、ついつい注いでしまって!」
「でも津軽さん、お酒にすごく強いんですね」

津軽
んー、普通だと思うけど

(普通じゃねぇだろ)
(難波さんと同じくらい強いんじゃねぇか)

だがそれを言うとまた面倒な話題になりそうなので、黙っておくことにした。
津軽は津軽で、運ばれてきた出し巻き卵にこれでもかというくらい七味をかけている。

津軽
ねえねえ、ウサちゃんの学校時代ってどんな感じだった?
知りたいな~、自分とこのかわいーい子のこと

加賀
······

わざと『かわいい』を強調しているのはわかっている。
それが、俺を苛立たせるためにしていることも。

(わかってんのにムカつくのは、そもそも津軽がいけすかねぇからか)
(それとも···)

本来なら自分の隣にいるべき女が、他の野郎の近くに座っているからか。

サトコ
「卵焼きにマヨネーズも美味しいですよね」
「学校時代の友達に教えてもらったんですけど」

津軽
カロリー高そう

サトコ
「うっ···」

津軽
でも、そうやって自分のことを話してくれるのは嬉しいよ

津軽が手を重ねた瞬間、サトコが笑いながら手を引っ込めた。

サトコ
「あははは!色仕掛けの任務のご指導、ありがとうございます!」

津軽
俺でよければ、手取り足取り教えてあげるよ
君の元上司よりは、ずっと優しいと思うけどね?

津軽が、俺を苛立たせようとしているのは明らかだ。
だがそれも、本来の目的を隠すためにしている行動のように見える。

(ってことはやっぱり、こいつは···)

津軽
ウサちゃんみたいな子を狙うのは、単純な男···なんだよね

加賀
くだらねぇな」

なんとなく津軽の考えが読めたので、ため息をついた。

(そろそろ、この茶番も終わりだな)
(だが···)

加賀
そいつを舐めてると、今にえらい目にあうぞ

津軽
それは、俺に対する忠告?それとも···ウサちゃんへの?

加賀
どうだかな

公安学校に入ってから今まで、サトコを一番近くで見てきたのは自分だ。
どんな困難にも立ち向かい、諦めることなく、バカ正直に今まで突っ走ってきた。

(ただの “ウサギ” だと思ってりゃいい)
(噛みつかれたとき、そいつがテメェの言う “ウサちゃん” じゃなかったことがわかる)

津軽は微かに目を見張ったが、それも一瞬のことだ。
すぐに何か企んでいるような笑みを浮かべ、席を立ったサトコを目で追っていた。

(···面倒なことにならなきゃいいがな)
(さて···)

津軽の前で、このあとサトコを誘うわけにはいかない。
津軽がサトコのほうを見ている間に、あいつのバッグから鍵を抜き取った。

(いつも同じ場所に入れてんじゃねぇ、クズが)
(誰かに場所を知られて、こうやって盗られたらどうする)

自分がしたことは棚に上げて、心の中でため息をついた。


【車内】

駅前でサトコを拾い、助手席に乗せる。
その瞬間、微かに車内に覚えのある匂いが漂った。

(···居酒屋の匂いでもねぇな)
(···クソが)

思い浮かぶのが、津軽の含みのある笑み。
あいつがベタベタ触ったせいで、その匂いがサトコに移ったらしい。

サトコ
「まさか、こんなに簡単に鍵を加賀さんに取られるなんて思いませんでした···」
「でも加賀さんだから、全然いいんですけど」

加賀
······

サトコ
「津軽さんとかも、普通にやりそうですよね。気を付けよう···」
「鍵を入れるポケット、場所変えておきますね」

サトコの口から何気なく聞かされる、あいつの名前。
それがあまりにも自然で、普段の仕事ではこいつが津軽に従順であるのが簡単に想像できた。

(テメェは誰のもんだ)
(仕事で上司に従うのは仕方ねぇ···だが)

プライベートでは、こっちだけ見てりゃいい。
自分といるときに他の男の話をされる···これがこんなにも苛立つことだとは思わなかった。

(くだらねぇな、俺も)
(たったひとりの女に、こんなに執着して何になる)

わかっているのに、感情がサトコへ向かっていくのを止めることができなかった。


【加賀マンション】

強引に口をふさいで服を脱がし、下着を押しのけて肌を攻めた。

サトコ
「ぁっーーー」

そんなに、激しく攻め立てるつもりではなかった。
だがサトコが助手席に乗ったその瞬間から、何かが崩れた。

加賀
飼い犬に手を噛まれるとは、このことだ

サトコ
「噛んでなんて···!」

加賀
他の男に尻尾振りやがって
忠犬は、常にテメェの主人と帰る場所を忘れねぇ

サトコ
「忘れて、な···っ」

柔らかい肌を愉しむ余裕すらない。
今すぐにでも、こいつに染み付いたあの野郎の匂いを消し去ってやりたかった。

サトコ
「ちゃ、ちゃんと断りましたよ、津軽さんのお誘い···!」
「っていうか、誘われたわけじゃないですけど···でも、ハニトラ講座は断りました···!」

加賀
なんで噛みつかねぇ

サトコ
「噛み···!?つ、津軽さんに!?」

加賀
言っただろ。忠犬は主人を忘れねぇ
俺の犬なら、気安く触ってくる奴には噛みつくくらいしやがれ

サトコ
「そんな、無茶、な···っ」

俺に何をされても、サトコは全身全霊ですべて受け止める。
まるで激しい感情が向けられるのは自分だけだと、わかっているかのように。

(···ガキか)
(女を組み敷いて、自分のもんだって痕残して)

サトコ
「兵吾、さ···」
「いいんです、もっと···っ」

加賀
···この程度じゃ、足りねぇか

まだ俺の中で燻ってる感情があることを、サトコは本能で見抜いている。
それをすべてぶつけるように、サトコを揺さぶり続けた。

シャワーを浴びて冷蔵庫から飲み物を取ってくると、寝室に戻る。
サトコはぐったりと投げ出した身体にシーツをかけて、倒れるように寝ていた。

加賀
···死んでんのか

サトコ
「生きてますよ···」
「でも、瀕死です···」

加賀
テメェが足りねぇって言ったんだろうが

サトコ
「足りないとは言ってないですよ!」

加賀
シャワーは

サトコ
「そんな元気、ないです···」

ぼんやりと目を開けて俺を見るサトコに近づき、口を開けさせる。
喉が渇いていたのか、頭に手を回してサトコがさらに求めてきた。

加賀
もう、この程度じゃ動じねぇな

サトコ
「えっ?あ···」

(ちょっと前なら、ぎゃーぎゃー喚いてただろうが)
(何されても受け止める、その態度が当たり前になってきたのは、いつからだったか)

居酒屋で津軽に抱き寄せられた程度で真っ赤になり、セクハラだと騒いだ女。
まるで同一人物とは思えず、口の端が自然に持ち上がる。

(純粋で素直、男としてはそばに置いておきたい存在、か)
(純粋でも素直でもあるが、こいつはそれだけの女じゃねぇ)

触られたくらいでああいう反応するのは、警戒している証拠だ。
それは、これまで積み重ねてきた時間のない相手だからだろう。

加賀
あいつの前では、せいぜい喚いてろ

サトコ
「でも、それはそれで進歩がないような気も···」
「もうちょっと落ち着きたいっていうか···大人になりたいというか」

加賀
テメェにゃ無理だろ

サトコ
「全否定···」

もう一度、口移しで水を飲ませてやる。
やはり少し恥ずかしいのか、伏し目がちになるサトコを見てなんとなく満足だった。

(築き上げた時間があろうが、根本は変わらねぇか)
(テメェはそのままでいい。俺にだけ従順でいりゃ···一生、可愛がってやる)

口をふさぎながら、再びサトコに覆いかぶさる。
さっきは散々『もう無理』だなんだと言っていたくせに、俺を求めるように背中に手を回してきた。

サトコ
「んー···」

加賀
体力ついてきたな

サトコ
「どういう意味ですか···?」

加賀
他の意味なんざねぇだろ

サトコ
「た、体力ついてきたのは、加賀さんが···!」

肌に手を這わせながら、深く口づける。
舌を絡ませてやれば、サトコはすぐ夢中になり、吐息だけをこぼし始めた。

(···テメェは、俺にだけそのツラを見せりゃいい)
(ほかの野郎なんざ、適当にあしらっとけ)

だがそれができないからこそ、目が離せない。
燃えるような感情、自分でも持て余す感情ーーーそれが向かう先は、いつだってこの女だ。

(仕置きでもねぇ、躾でもねぇ···あの感情は)
(こいつにだけの···)

加賀
···くっ

サトコ
「加賀さん···?」

加賀
なんでもねぇ

笑みがこぼれ、考えるのを止める。
そのまま、サトコへと身を沈めた。

Happy End



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