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このドキドキはキミにだけ発動します 黒澤1話

黒澤
おつかれさまです。スポーツドリンク、どうぞ

(透くん!)

黒澤
ずっと火のそばにいるのは暑いでしょう?
水分補給、大事ですよ

サトコ
「うわぁ、ありがとうございます!」

(で、もちろん···)

サトコ
「手伝ってくれますよね?お肉を焼くの」

黒澤
「えーオレ、食べるの専門ですから···

サトコ
「やだなー、遠慮しないでくださいよー」
「お肉、まだこーんなにありますし」

黒澤
いやいやいや
サトコさんほど、オレ、上手に焼けませんし
ていうか、必死過ぎて怖いですよ、顔

サトコ
「余計なお世話です」
「とにかく手伝ってください。こっちはもう汗だくで···」

東雲
ちょっとー!肉まだ?

黒澤
はーい、今すぐ
ってことなんで···
これにてドロン!

サトコ
「ちょっ···黒澤さん···っ」

(···逃げられた)
(絶対、透くんにも手伝ってもらおうと思ってたのに)

鳴子
「おつかれー。スカウト失敗?」

サトコ
「うん。でも、次に来たときは絶対···」
「って、鳴子、酔ってる?」

鳴子
「酔ってない。酔ってなーい」
「缶チューハイ、まだたったの3本だもーん」

(3本···いつの間に···)
(さっきまで、普通にお肉を焼いてたのに···)

千葉
「大丈夫だよ。佐々木はアルコール強いし」
「それより、こっちの野菜、どうする?」

サトコ
「うーん···ニンジンとトウモロコシを先に焼こうか」
「さっき、後藤教官···」
「じゃなくて、後藤さんが持っていって···」

(痛···っ)

千葉
「氷川?どうした?」

サトコ
「大丈夫。汗が目に入っただけ···」

(タオル···は、鞄の中だったよね)
(しょうがない、この際Tシャツで···)

千葉
「!?!?」

サトコ
「···うん?なに」

千葉
「い、いや、その···なんていうか···」

鳴子
「腹チラ」

千葉
「!!」

鳴子
「サトコ、Tシャツで汗を拭うからさー」
「お腹がチラッと見えちゃって···」

千葉
「見てない!ほんと見てないから!」
「マズイと思って、すぐに目を逸らしたし···」

サトコ
「そ、そっか。ありがとう」

(やっぱりTシャツで拭うのはマズいか)
(タオル、ちゃんと持ってこよう)

サトコ
「タオル···タオル···っと···」

???
「ねぇ、さっきの、地元の人たちかな?」

(···うん?)

女子大生1
「ああ、売店でナンパしてきた人たち?」

女子大生2
「しつこかったよねー」

女性大生3
「ほんと!絶対ムリ!」

(ナンパか···若い女の子たちは大変だな)

???
「やあ、そこのお嬢さん」

(···うん?)

津軽
いい背中してるね。警察官にならない?

(背中??)
(ていうか、こういうとき、どういうリアクションをすれば···)

津軽
···あれ、ノリが悪いなぁ
ここは、ちゃんとつっこんでくれないと

サトコ
「······わかりました」
「次からは気を付けます」

津軽
ほらほら、マジメマジメー
うちのマジメキャラは、モモだけで充分だから

(はぁ···)

津軽
それとも、もしかして···
俺、警戒されちゃってる?

サトコ
「···っ、いえ、そんなことは···」

(でも、ちょっと似てるんだよね、津軽さんって)
(出会った頃の誰かさんと···)

黒澤
あれー、津軽さん、パワハラですかー?

(ぎゃっ!)

黒澤
いけないなー。部下に『壁ドン』ならず『木ドン』って

津軽
え、これ、パワハラ?
でも、兵吾くん、しょっちゅうやってない?

黒澤
アハハッ、たしかに
ところで、百瀬さんが探してましたよ?

津軽
ほんと?
モモってば、俺のこと、大好きだからなー
それじゃ、サトコちゃん、これあげる

(···缶チューハイ?)

津軽
さっきのパワハラのお詫び。それじゃーね

(···相変わらず掴めない人だな)
(でも、2年前の私なら、案外「いい人」って思ったりして···)

黒澤
サトコさんの好きそうなタイプですよね、津軽さんって

サトコ
「!」

黒澤
特に2年前のサトコさんなら、あっさり恋に···

サトコ
「落ちません」

黒澤
······

サトコ
「ああいうタイプの人は『誰かさん』だけでお腹がいっぱいです」

黒澤
······えー
オレなんて、津軽さんに比べればひよっこだけどなー

(······そうかな)

黒澤
ところで、これ···いただいちゃいますね

サトコ
「あっ」

(私の缶チューハイ!)

サトコ
「返してください!」

黒澤
ダメです。このままシラフでいてくれないと
理由は、あとでわかりますから

(···どういうこと?)

1時間後···

鳴子
「いやー肉も野菜も焼いたねー!」
「焼いて焼いて焼きまくったねー!」

サトコ
「鳴子、その缶チューハイ、何本目?」

鳴子
「うーん···5本目?」

千葉
「6本だよ、佐々木」

鳴子
「ハハハッ、そっかー」
「さすが、ちゃんとしてるねー、千葉くん!」

バシッ!

千葉
「痛っ···」
「佐々木、お願いだから、もうちょっと加減して···」

鳴子
「よーし、私たちも飲もう!」
「はい、缶ビール···」

千葉
「ごめん、俺、運転あるから」

鳴子
「じゃあ、サトコ···」

サトコ
「ごめん、私もちょっと···」

鳴子
「ええっ、サトコは運転手じゃないじゃん」

サトコ
「そうだけど···」

(本当は、私だって1本くらい飲みたいよ)
(でも、透くんの言葉が引っかかって···)

サトコ
「うわっ」

(気配なかったんですけど!)

サトコ
「お、お疲れさまです。ご用件は···」

百瀬
「ビール」

サトコ
「はぁ···何本ですか?」

百瀬
「あるだけだ」

(···あるだけ?)

(うわぁ···)

鳴子
「なに、この状況!ひどすぎ!」

千葉
「さ、佐々木っ、声ひそめて···」

鳴子
「だって、ひどすぎるじゃん」
「石神班はうつむいてるし、加賀班はへんなオーラが漂ってるし」
「津軽さんは、ひとりでずっと笑ってるし」

百瀬
「酒量比べだ」

サトコ
「酒量?」

百瀬
「難波さんが『利き酒ができる』っつてた」
「そこで『利き酒』」
「さらに『酒量』」

鳴子
「······どういうこと?」

サトコ
「ええと···たぶん、こういうことだと思う」
「室長きっかけで、みんなで『利き酒』比べをして···」
「その後『酒量』比べになって、それで···」

難波
おー来た来た
···ん?
なんだ、ひよっこたちじゃないか。久しぶりだな

サトコ
「は、はぁ···」

(それ、集合した時にも聞いたような···)

難波
で、酒は?

百瀬
「こちらです」

難波
おーい、喜べ!お前ら、追い酒だぞー

千葉
「···とりあえず、俺たちは空き缶を回収しようか」

サトコ
「う、うん」

(···あれ?)
(後藤教官、なんで正座を···)

後藤
おつかれさまです···
例の件ですが、特に動きはなく···

(教官、コップ!それ、紙コップですから!)

???
「ひょごしゃーん」

(今度は誰?)

東雲
ひょごしゃん、あのね

加賀
······

東雲
きのーね、オレね···

(キャラ変!?)
(東雲教官、酔うとああなっちゃうの!?)

津軽
おーい、秀樹くーん

(えっ)

津軽
秀樹くーん、素直になろうよー

石神
······

津軽
ほらほら!ありのままの秀樹くんをー

(あ、ありのままの石神教官···)
(それって怖いような、見てみたいような···)

颯馬
ちょっといいですか?

(うわっ)

颯馬
上の道路沿いに、売店がありましたよね?
そこで水を20本買ってきてください

サトコ
「えっ、水ならまだクーラーボックスに···」

颯馬
ではスポーツドリンクを20本
それと二日酔いに効きそうなドリンクを10本
もちろん3人で買ってくること
いいですね?

サトコ
「は、はぁ···」

【売店】

サトコ
「···ねぇ、私たち、体よく追い出された気がするんだけど」

千葉
「仕方がないよ」
「上司のああいう姿、見せたくないんだろうし」

サトコ
「でも『ありのままの石神教官』、見てみたかったかも」

千葉
「あれ、見たことないの?元担当教官だろ?」

サトコ
「ないない!あるわけないじゃん」
「石神教官、公安刑事の模範みたいな人だもん」

千葉
「まぁ、たしかにな」
「ところで、佐々木は···」

鳴子
「······ここ」

千葉
「なんだ、さっきより元気そうだな」

鳴子
「元気にもなるよ」
「歩いているうちに、すっかり酔いも覚めちゃったし」
「で、買い物は?」

サトコ
「終わったよ。スポーツドリンクと、ウコン系ドリンク」

鳴子
「じゃ、手分けして運ぼうか」

サトコ
「そうだね。千葉さんがスポドリ10本で···」
「私と鳴子で、スポドリ5本とウコン系ドリンクを分けて···」

???
「だから行かないってば!」

(···うん?)

ヤンキー1
「いいじゃん、行こうぜ」

ヤンキー2
「すげー心霊スポットに案内するからさー」

ヤンキー3
「はい、決まりー」

女子大生
「やだ、離して···っ」

鳴子
「···サトコ」

サトコ
「うん」
「千葉さん、荷物お願い」

千葉
「えっ、荷物って···」
「ちょ···待てって、ふたりとも···」

鳴子
「お待たせー!ごめんね、待たせちゃって」

サトコ
「さ、行こっか」

女子大生
「えっ、あの···」

ヤンキー1
「あんだよ、お前ら。絶対知り合いじゃないだろ」

ヤンキー2
「すっこんでろよ、オバサン」

鳴子
「は!?」
「···ちょっと裏おいで」

ヤンキー3
「なんだよ、やるのか?」
「って···」
「痛てててっ!」
「痛い痛い痛い···っ」

鳴子
「サトコ。その子連れて行って!」

サトコ
「うんっ」

ヤンキー1
「てめぇ、いい気になるな···」

ドカッ!

ヤンキー1
「い···っ」

サトコ
「えいっ」

ヤンキー1
「ぐ···っ」

ヤンキー2
「やべーぞ、こいつら!」

ヤンキー4
「逃げろーっ!」

千葉
「大丈夫か?ふたりとも」

サトコ
「うん、平気」

鳴子
「ていうか、失礼過ぎない?あいつら」
「私らのこと『オバサン』って!」

千葉
「まあまあ、落ち着いて···」

女子大生
「すみません、ありがとうございました」

鳴子
「いいよいいよ」

サトコ
「気を付けてね」

女子大生
「はい」

千葉
「···それにしても無茶苦茶すぎるだろ。ふたりとも」
「ああいうときは、俺に任せてくれないと」

鳴子
「大丈夫だよ。ただのイキがってるヤンキーだったし」

サトコ
「テロリストに比べればね」

こうして、私たちがヤンキーを撃退していたころ···

川辺は、大変なことになっていたみたいで···

サトコ
「ただいま戻りましたー」

百瀬
「おい」

サトコ
「うわっ!」

(また気配消して···)

百瀬
「黒澤が消えた」

(えっ)

サトコ
「消えたって、どういう···」

百瀬
「知らねー。とにかく消えた」
「以上」

(以上!?)
(って、ほんとにそれでおしまい!?)

サトコ
「あの!私にどうしろと···」

百瀬
「······」

(···そうですか。「自分で考えろ」ってことですか)

鳴子
「どうしたの、サトコ?」

サトコ
「黒澤さんが消えたって」

鳴子
「えっ、なんで?」

サトコ
「それがよくわからないんだけど、百瀬さんが······」

難波
お~、どうした。お前ら

サトコ
「室長!黒澤さんの行方を知りませんか?」

難波
黒澤?あいつなら、たしか···
『温泉に行ってきます!』って叫んで、どこかに行っちまったな

サトコ
「温泉······」

(まさか!)

サトコ
「黒澤さーん、黒沢さーん!」

鳴子
「···ねぇ、どうして『温泉』で『川』なわけ?」

サトコ
「だって、他に思いつかないもん!」
「このあたりで『温泉みたいに浸かれる場所』なんて」

鳴子
「なるほど、たしかに······」
「って、サトコ、あの岩のところ!」
「ほら、あそこで寄り掛かってるの······」

(いた!)

サトコ
「黒澤さん!」

黒澤
ん······
あ···おつかれさまです···
聞いてくださいよ···全然温まらないんですよ···

サトコ
「当然でしょう。ここ、温泉じゃなくて、川ですし···」

黒澤
後藤さん···」

(えっ···)

黒澤
あっためてください···後藤さん···

サトコ
「違います!私は氷川···」

(って、待って!)

黒澤
後藤さん···後藤さんの温もり···

サトコ
「違います!離れてください!」

黒澤
後藤さーーん!

鳴子
「······あーあ」
「これは、思っていた以上に酔っ払ってるね」

(ほんとだよ!しかも、こんな状態で川に入るなんて···)
(バカバカ!)
(ほんと、バカなんだから!)

みんなの元に戻ると、真っ先に千葉さんが駆けつけてきてくれた。

千葉
「どうしたんだよ!ふたりともずぶ濡れになって···」
「って、氷川がおんぶしてるの、まさか···」

鳴子
「そう、黒澤さん」
「サトコのこと、後藤さんと間違ってるみたいでさ」

サトコ
「黒澤さん、降りてください」
「具合悪いなら、そこのシートに···」

黒澤
無理です···
離れたくない···

(···こんな色っぽい声、私も滅多に聞けないんですけど)
(酔ってるせい?それとも後藤さんと間違えてるから?)
(どっちにしろ、いろいろ問い詰めたい気が···)

颯馬
おや、これはまたひどい有様ですね

鳴子
「そうなんです。黒澤さん、すっかり酔っ払っちゃって」
「サトコから離れようとしなくて」

サトコ
「どうしましょう」

颯馬
そうですね、では······
今日はもうこれでお開きにしましょうか
酔っ払いもだいぶ増えましたし···

難波
おいおい、まだ早いだろ

津軽
そうだそうだー!帰るのはんたーい!

颯馬
·········あのふたりは、百瀬に任せるとして
酔いの酷い者たちを、先に帰らせてはいかがでしょう?
黒澤だけでなく、歩や後藤あたりも一緒に···

黒澤
うっ、吐く

(ええっ!?)

黒澤
吐く···吐きそう···

千葉
「大丈夫ですか!?」
「誰か、ポリ袋!」

鳴子
「待って!今、持ってくる」

黒澤
うう······

鳴子
「黒澤さん、これ!」

黒澤
う······
······
······大丈夫···おさまりました···

サトコ
「ほんとですか!?」

黒澤
でも、無理です···車は······
せめて、電車で······

(···電車?)

鳴子
「そういえば、来る途中で駅の看板があったよね」

千葉
「でも、今の黒澤さんをひとりで帰らせるのは無理じゃないか?」

(たしかに···)

サトコ
「じゃあ、私が···」

颯馬
甘やかす必要はありませんよ

サトコ
「!」

颯馬
電車にさえ押し込めば、彼はひとりで勝手に帰ります
そうですよね、黒澤?

サトコ
「あ、あの···私に言われても···」

すると、黒澤さんがぎゅうっとしがみついてきた。

黒澤
一緒がいいです

(······えっ)

黒澤
一緒に帰りましょ···
後藤さん······

サトコ
「······」

黒澤
ぐふふ···

(······ああ、そうですか)
(そんなに後藤教官がいいですか!)

サトコ
「いいです。私が付き添います」

颯馬
ですが···

サトコ
「自宅まで付き添って···」
「あとできっちり手間賃をいただきます!」

颯馬
······そうですか
では、そのように

サトコ
「はい!」

黒澤
ぐふふ···

(「ぐふふ」じゃないから)
(目が覚めたら、いろいろ問い詰めるんだから)
(覚悟しろ、黒澤透!)

to be continued

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