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お返し 颯馬1話

【車】

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颯馬さんに誘われ、車で移動中。

サトコ

「颯馬さん、今日はどこに行くんですか?」

颯馬

フフ、それは着いてからのお楽しみですよ

運転しながらそう言われ、私はそれ以上聞くことが出来なくなる。

(やっぱり、アレだよね‥?)

【街】

先日のバレンタインから一か月後の今日は、ホワイトデーだ。

以前からふたりで過ごそうと約束をしていたので、私は今日が楽しみで仕方なかった。

サトコ

「‥颯馬さん、どうしたんだろう?」

時計を見ると、待ち合わせ時間を少し過ぎていた。

(颯馬さんが約束の時間になっても来ないなんて、珍しいかも‥)

颯馬

サトコさん、お待たせしてしまってすみません

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約束の時間を少し過ぎてしまいましたね‥

サトコ

「颯馬さん‥!」

その声に振り向くと、颯馬さんが車から降りてくるところだった。

颯馬

せっかくですから、久しぶりに遠くへ出かけましょう

サトコ

「遠くへ‥?」

曖昧な言い方に疑問を感じながらも、私は颯馬さんのエスコートで車に乗り込む。

【車】

(バレンタインも私のために、プライベートクルーズを用意してくれたし‥)

(最近、颯馬さんにもてなされてばかりだなぁ)

颯馬

どうしました?

サトコ

「え?」

颯馬

いえ、さっきから黙り込んでいたので‥

サトコ

「えっと‥」

<選択してください>

A: なんでもない

サトコ

「なんでもないですよ」

颯馬

‥そうですか?

(もてなされてばかりで申し訳ない、なんて颯馬さんに言ったら気を悪くするよね‥)

颯馬

私たちは遠慮する仲ではないのですから、何でも言ってくれていいんですよ?

サトコ

「‥はい」

(黙ってる方が余計に颯馬さんに気を遣われちゃったのかも‥)

B: 運転、代わりましょうか?

サトコ

「あの、運転を代わりましょうか?」

「ずっと颯馬さんに任せきりですし、私も運転は出来ますから」

颯馬

ありがとうございます。ですが、その気持ちだけで充分ですよ

今日はホワイトデーなんですから、私に貴女をもてなさせてください

サトコ

「‥ありがとうございます。すごく嬉しいです」

C: 嬉しさと申し訳なさが‥

サトコ

「なんだか、嬉しさと申し訳なさが‥」

颯馬

申し訳ない?なぜですか?

サトコ

「ホワイトデーもサプライズデートがあるなんて、予想してなかったので‥」

颯馬

フフ、貴女を驚かせることが出来たのなら、まず第一段階はクリアですね

サトコ

「第一段階なんですか?」

颯馬

もちろんですよ。喜こんでもらてこそ、サプライズと言えるでしょう?

サトコ

「‥ありがとうございます」

颯馬

長時間車に揺られますから、眠くなった時は寝ても構いませんからね

サトコ

「いえ、大丈夫です!」

「颯馬さんが運転している姿を見ているの、好きなんです」

颯馬

フフ、ありがとうございます

颯馬さんの優しさが心に沁みて、自然と笑みが零れる。

(やっぱり颯馬さん、かっこいい‥)

(しかも運転する横顔も素敵だし‥)

颯馬

今、貴女に触れられないのが残念です‥

その分、後で触らせてくださいね

サトコ

「そ、颯馬さん‥!」

フフッと笑う颯馬さんの横顔を、私はドキッとしながらも気づかれないようにチラチラと見ていた。

【サービスエリア】

それから2時間ほど車で走った頃、サービスエリアで休憩することになった。

颯馬

サトコさん、疲れてませんか?

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サトコ

「大丈夫です。私より颯馬さんの方が‥」

颯馬

いいえ、私も大丈夫なんですが‥」

少し気恥ずかしかったりはしますね

サトコ

「‥気恥ずかしい?」

颯馬

ええ、あんなに熱っぽい視線を送られてしまうと緊張してしまいます

サトコ

「っ‥!」

(ば、バレてた‥!)

まさか気付かれてるとは思わず、赤面していると‥

颯馬

あまり、無防備な姿を見せないでください

‥私も、少し我慢が出来なくなりそうですから

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颯馬さんは悪戯っぽく言い、チュッと軽くキスを落としてくる。

サトコ

「そっ、颯馬さん‥!?」

颯馬

さ、行きましょうか

楽しそうな笑みを浮かべ、颯馬さんは颯爽と歩いていく。

(ど、どうしよう。今日1日もたないかも‥)

颯馬

サトコさん?

サトコ

「あっ、い、今行きます!」

熱い頬を誤魔化しながら、少し前を歩く颯馬さんの元へと急ぐ。

颯馬

ここのパンが、女性に人気らしいです

おや、ちょうどパンが焼き上がったところみたいですね

サトコ

「わぁ‥!焼きたてのメロンパン、美味しそう‥」

(でも、向こうにはご当地アイスもあるし‥うう、どれを食べようか悩むな)

颯馬

フフッ

色んなものに目移りをしていると、突然颯馬さんが笑い始めた。

颯馬

全部美味しそう‥って顔に出ていますよ?

サトコ

「す、すみません‥つい、食い意地を張ってしまって」

颯馬

いえ、その場所でしか食べられないものを食べるのも遠出の楽しみのひとつです

それに、このサービスエリアのメロンパンは有名で、テレビでも紹介されたそうですし

サトコ

「え、そうなんですか?」

颯馬

ええ、だからサトコさんが食べたいものを好きなだけ食べましょう

サトコ

「‥でも、目移りはするんですけど、あれを全部食べるのは‥」

颯馬

でしたら、私と半分にするのはどうですか?

サトコ

「‥は、はい!」

(颯馬さんと半分こ‥なんか、恋人って感じがするなぁ)

颯馬

じゃあ、まずはメロンパンから食べましょうか

そう言って、颯馬さんはメロンパンを買い、それを私に差し出してくる。

サトコ

「あ‥あの?」

颯馬

私が食べさせて差し上げます‥

ほら、口を開けてください‥

サトコ

「えっ!」

<選択してください>

A: 恥ずかしいです‥

サトコ

「恥ずかしいです‥」

颯馬

フフ、私はそういう『恥ずかしがってる』貴女を見たいんですよ

(そ、颯馬さん、すごく楽しそう‥)

颯馬

‥ですが、やりすぎて貴女に嫌われるのは嫌なので今は諦めることにしましょう

(今はってことは、いつかするつもりなんだ‥)

B: 私が颯馬さんに食べさせてあげます!

サトコ

「わ、私が颯馬さんに食べさせてあげます」

つい言ってしまったけど、すぐに後悔した。

颯馬

それではお願いしてもいいですか?

サトコ

「すみません、冗談です‥」

颯馬

そうだったんですか?それは、残念ですね

C: 他の人もいますから‥

サトコ

「あの、他の人もいますから‥」

サービスエリアには私たちだけじゃなく、他のお客さんもいる。

そんな中で『あーん』は、少し抵抗があった。

颯馬

なるほど。確かに照れる貴女を他の人の目にさらすのは気分が良くないですね

仕方ありません。後でじっくりとすることにしましょう

(あ、後でって、これをやるのは決定事項なんだ‥)

結局、颯馬さんの言葉にドキドキしながら、私はメロンパンを食べていた。

【車】

サービスエリアを出て、しばらく経った後、高速を降りる。

颯馬

サトコさん、見てください

サトコ

「‥わぁっ、綺麗!」

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そこはフラワーラインで、春を告げる花が咲き乱れていた。

颯馬

菜の花って、サトコさんに似合いますね

サトコ

「そうですか?」

「菜の花は可愛いですし、可憐なイメージなので私には似合わないんじゃ‥」

颯馬

いえ、似合いますよ。私にとって、貴女は菜の花のような女性ですから

そこにいるだけで自然と心が温かくなるような、そんな気持ちにさせてくれます

サトコ

「‥そ、それ以上はもう‥」

颯馬

それは残念。もう少し恥ずかしがる貴女の様子を見ていたかったのですが

‥とはいっても、今は運転中なので後から見せてもらうことにしましょう

(うっ、何か後からされることが溜まっていくような‥)

颯馬

ほら、目的地が見えてきましたよ

颯馬さんの言葉に、外を見ると‥

サトコ

「‥イチゴ狩り?」

イチゴ狩りを案内する看板が立っていた。

【イチゴ農園】

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イチゴ農園に着くと、私たちの他にもお客さんが結構来ていた。

サトコ

「私、イチゴ狩りって初めてです!」

颯馬

そうなんですか?それは良かった。今日は思う存分楽しみましょう

サトコ

「はい‥!」

そして、ふたりでイチゴ狩りを楽んでいたのだけど‥

サトコ

「そ、颯馬さん‥」

颯馬

ダメですよ、今回は引いてあげません

颯馬さんはイチゴをひとつつまんで、それを私に差し出している。

つまり、メロンパンの時に出来なかった『あーん』をしようとしていて‥

颯馬

幸いにも他の人はいませんし、食べさせてもいいでしょう?

私が食べるまで、颯馬さんは本当に引き下がるつもりはないみたい。

サトコ

「い、いただきます‥」

恥ずかしさを堪えながら食べると、イチゴの甘酸っぱい味が口の中に広がる。

サトコ

「美味しいです‥」

颯馬

フフ、それは良かった。もうひとつどうですか?

サトコ

「‥でも、今日の私って食べ過ぎですよね」

「サービスエリアでメロンパン、ご当地アイスも食べちゃいましたし‥」

颯馬

私は美味しそうに食べるサトコさん、可愛いと思いますし、好きですけどね

私の頬を撫でながら、颯馬さんが言う。

(優しいな、颯馬さん‥)

颯馬

サトコ‥

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サトコ

「颯馬さん?」

颯馬

‥‥‥

颯馬さんは周りを見渡した後、イチゴの葉に隠れるようにしてキスを落としてくる。

サトコ

「‥っ」

触れるだけのキスだったけど、私の体温を上げるには充分すぎるものだった。

颯馬

フフ、甘酸っぱいキスですね

今日はこうして不意打ちのキスをたくさんしますから、油断しないようにしてくださいね

(なんか、今日の颯馬さん‥いつもよりずっと甘い気がする‥)

その言葉通り、イチゴ狩りをしている間、颯馬さんは何度も不意打ちのキスをしてきた。

おかげで私のドキドキは収まることなく、ずっと颯馬さんに翻弄されることになった‥

【海】

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イチゴ狩りを終えた後、最後に連れて来られたのは海だった。

サトコ

「気持ちいー‥」

頬を撫でる風が、ドキドキで火照った身体に心地いい。

そんな時、ふわり、と何か肩にかけられた。

サトコ

「ストール‥」

颯馬

3月とはいえ、まだ冷えますからね

念のために用意しておいて良かったです

サトコ

「‥ありがとうございます」

颯馬

いいえ、本当は抱きしめて温めようかとも思ったんですけどね。クスッ

サトコ

「そ、颯馬さん‥!」

颯馬

そうした方が、お互いに暖かくなるでしょう?

サトコ

「それは、そうですけど‥道路側から丸見えなので恥ずかしいです‥」

颯馬

私は別に、貴女となら恥ずかしくありませんよ

(うう、颯馬さん、今日は特に私をからかってくるなぁ)

そんなことを考えていると、砂浜に足を取られて転びそうになる。

サトコ

「わぁ‥!」

颯馬

っ‥‥!

転ぶ寸前で颯馬さんが私の手を取ってくれて、そのまま腕に抱き止められる。

颯馬

足元、気を付けてくださいね

それとも転ばないように、こうしてずっと抱きしめておきましょうか?

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サトコ

「‥それじゃ、歩けませんよ」

颯馬

フフ、それもそうですね。仕方ありません、それではこうしておきましょう

颯馬さんが私の手を繋いでくれる。

指と指を絡め、その艶っぽい繋ぎ方にドキッとした。

(私ばかりドキドキさせられて‥)

(‥私も、颯馬さんをドキッとさせてみたいなぁ)

しばらくふたりで砂浜を散歩した後、ふと颯馬さんの手が離れた。

それを寂しく思いながら、私はとあることを思いつく。

サトコ

「‥‥‥」

(颯馬さんは今こっちを見てない、やるなら今かな‥)

そう考え、砂浜に『好きです』と書いてみたのだけど‥

すぐに波に流され、その言葉は消えてしまった。

(や‥やってしまった。昭和の青春ドラマじゃあるまいし)

(颯馬さんに見られないまま流されて良かった‥)

心の中で呟いた時‥

to be continued

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