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総選挙2016② 加賀 2話

【訓練所】

成田

「誰だ、邪魔した奴は!」

加賀

狙われる奴がグズなんだろ

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(か、加賀さん‥!?)

成田

「貴様‥自分の補佐官をかばうつもりか」

加賀

寝言は寝てから言いやがれ

隙を見せてる奴がいりゃ、相手が誰だろうと狙うだけだ

ゆっくりと、加賀さんがこちらに歩いて来る。

加賀

失格したゴミは、さっさと出て行け

成田

「くっ‥」

(ゴミ‥!成田教官をゴミ呼ばわり!)

(でも成田教官、私を仕留められると思って油断していただろうから、言い返せないよね‥)

悔しそうに、成田教官が私たちの前から立ち去る。

成田教官から私を守ってくれた加賀さんは、

まるで『KISS or KILL』の主人公のようだった。

(憧れたシーンが、まさか本物になるなんて)

(何より、加賀さんが守ってくれたことが本当に嬉しい‥!)

立ち上がり、加賀さんの方へと歩み寄る。

サトコ

「加賀さん、助けてくれてありがとうございました」

加賀

クズが

サトコ

「えっ?」

加賀

だからテメェは、いつまで経っても使えねぇって言ってんだ

腕を伸ばして、加賀さんが私を引き寄せる。

壁に私の背中を押しつけて、閉じ込めるように手をついた。

加賀

俺は、アイツが隙を見せたから撃っただけだ

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テメェを助けるつもりなんざ、微塵もねぇ

サトコ

「で、でも‥」

加賀

結果的に、テメェは助かったかもしれねぇが‥

‥今だけはな

口元に浮かんだその笑みに、危険を察知する。

(この目は、獲物を狙う獣の‥!)

思わず加賀さんを突き飛ばして、近くに身を隠す。

間髪入れず加賀さんが発砲して、私の風船を狙い始めた。

加賀

俺は、全員を倒すことにしか興味はねぇ

サトコ

「っ‥‥‥」

加賀

訓練中に敵を助けてやるほど、お人好しに見えるか?

(そうだった‥!加賀さんは、訓練中は全然甘くないんだ)

(いや、プライベートでも甘くないけど‥!)

加賀さんの銃弾から逃げるように、身を隠しながら移動する。

途中で危ないところもあったけど、なんとかかわいて風船を死守した。

加賀

少しはマシな動きをするようになったじゃねぇか

サトコ

「くっ‥」

加賀

この俺から、どこまで逃げられるのか見ものだな

必死に走って、加賀さんとの距離を稼ぐ。

なんとか追跡を振り切って、物陰で呼吸を整えた。

(やっぱり、映画みたいにはいかないよね‥今は訓練中なんだから)

(加賀さんと私は敵同士‥味方は一人もいない)

それはまるで、映画の中のあの殺し屋のようだった。

気配を殺しながら銃の確認をして、次の戦闘に備える。

(加賀さん、まだ追ってくるかな。それとももう別の訓練生をターゲットにしてる‥?)

(私は私で、今出来ることをしなきゃ)

カツンと、誰かの足音がした。

振り返ると、こちらに気付いていないらしい訓練生が私に風船を向けて歩いている。

(チャンスだ‥悪いけど、見つかる前に先手を取らせてもらう‥!)

でも、銃を構えた瞬間‥パン!と私の風船が割れた。

サトコ

「!」

加賀

甘ぇ

サトコ

「加賀さん‥!」

加賀

テメェは、とことん甘ぇな

サトコ

「どうして、ここが‥」

加賀

テメェの気配なんざ、寝てても感じられる

他の奴には通用しても、俺には無理だ

クッと笑い、加賀さんが振り向きざまにさっき私が狙っていた訓練生も仕留める。

結局私もその訓練生も、その場で失格が決まってしまった。

【学校 廊下】

訓練が終わり、最後まで残ったのは加賀さんだった。

(さすがだな‥でもあの加賀さんを仕留められる人がいるはずないし、納得な気もする)

とぼとぼと歩いていると、廊下の向こうから歩いてきた室長が私に気付き、手を上げた。

難波

おお、訓練はどうだった?

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サトコ

「加賀教官に撃たれました」

難波

あいつは相手が誰でも容赦ないからな

それより、今ちょっと時間あるか?

サトコ

「は、はい‥」

(なんか、嫌な予感が‥)

【資料室】

予感は的中して、私は室長と一緒に資料室に来ていた。

(室長がああいう言い方する時って、面倒なこと頼まれるんだよね‥)

(訓練の前に言っていた「言いたいことがあったような気がする」って、このことだったんだ)

難波

いやあ、悪いな。本部のお偉いさんが視察に来るから、校内を綺麗にしとかねぇと

誰かに頼もうと思ってたんだが、すっかり忘れてた

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(資料室なんて、一番面倒なところだ‥)

(こういう時に室長に会っちゃうのが、私の運のなさというか)

でも、引き受けてしまったからには、やるしかない。

サトコ

「とりあえず、見栄えをよくしておく感じでいいですか?」

難波

そうだな。どうせ片付けてもまたすぐ汚くなるだろ

とりあえず、その辺に散らばってるファイルは全部、棚の適当なところにしまっといてくれ

サトコ

「わかりました」

難波

まあ、そうだな‥今から12時間以内に終わらせといてくれればいい

サトコ

「じ、12時間以内ですか?」

難波

「お偉いさんが来るのは、明日の夕方からだから

じゃあな、頼んだぞー

ひらひらと手を振り、室長が資料室を出て行く。

(12時間以内か‥ってことは、最悪明日の朝とかでもいいんだよね)

(今日は訓練で疲れたし、早く帰って明日の朝イチで‥)

サトコ

「‥いや、ダメだ!面倒なことは早めにやっておこう」

「鳴子と千葉さんにも、手伝いをお願いしようかな」

携帯を手にしたものの、考え直して再びポケットにしまう。

(ふたりとも、訓練で疲れてるみたいだったし)

(今日ある程度終わらせて明日の朝に残りをやれば、ひとりでも大丈夫だよね)

一人で書類整理をしていると、ドアが開いて誰かが入ってくる気配がした。

加賀

こんなところで何やってやがる

サトコ

「加賀さん!お疲れさまです」

「実は、室長から資料室の整理を頼まれて」

加賀

ああ‥そういや明日だったな

サトコ

「はい、本部から偉い人が来るんですよね」

ゆっくりとこちらに歩いて来ると、加賀さんがテーブルに手をついて私を閉じ込めた。

サトコ

「ど、どうしたんですか‥?」

加賀

今日の訓練の仕置きがまだだ

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(お仕置き‥!?そんなの聞いてない‥!)

(けど、不甲斐なかったのは言い訳できないよね‥)

サトコ

「すみません‥加賀さんが助けてくれたと思って、油断してしまって」

加賀

テメェはいつになったら駄犬を卒業できる?

実際の現場だったら、野垂れ死んでるところだ

返事をする前に、加賀さんが私の顎を持ち上げて深く唇を合わせる。

息つく暇もなくらい、何度も何度も、角度を変えて激しく吸い付かれた。

サトコ

「っ‥‥か、加賀さん!」

加賀

喚くな

サトコ

「だって‥だ、誰か来たら、まずいですっ‥」

加賀

テメェは、黙って俺に従ってりゃいい

‥口開けろ

流されまいとするのに、その一言であっさり陥落する。

微かに唇を開くと、加賀さんの舌が潜り込んできて、激しく口づけられる。

加賀

この程度で感じてんのか

サトコ

「っ‥‥あ‥‥」

加賀

‥煽るとは、いい度胸だ

加賀さんと一緒に、資料室の陰へともつれ込む。

加賀さんの大きな手に制服を乱されて、必死に甘い吐息を堪えた。

(こんなお仕置き、刺激が強すぎるっ‥)

(加賀さんは、映画の主人公よりもずっと、容赦ない‥!)

次第に身体が熱を帯び、加賀さんの言いなりになりはじめ‥

密室の資料室で、加賀さん流の甘いお仕置きを受け続けた夜だった‥

Happy  End

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