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あの日、僕らは隠れてキスをした プロローグ

???
「5周年ーーこの重みを知らない奴らに鉄槌を下す時が来たのだ」

黒い影が、暗闇の中でうごめく。

???
「足りない···足りないのだ···」
「イチャイチャがあああああっ!」

叫びが闇に溶けた時、パッと誰かが課の明かりを灯した。

全員
「······」

サトコ
「あの、黒澤さん?」

黒澤
あ···

変なポーズで奇怪なことを叫ぶ役に浸りきっていたのは、黒澤さん。
灯りを点けたのは百瀬さんで、石神班、加賀班、津軽班全てからの冷たい視線が飛ぶ。

黒澤
あ、これはですね!今度、女優の小杉よねさんの舞台にゲスト出演することになって···

加賀
さっさとケリつけろ

石神
後藤

後藤
はい

黒澤
ちょー!後藤さん!ヘッドロックはナシナシ!

(こういう時は、見ざる聞かざる···)

サトコ
「持ってきた備品、ここ置いておきますね」

千葉大輔
「氷川、これはここでいいか?」

佐々木鳴子
「これも上に置くよー」

サトコ
「ありがとう、ふたりとも!」

会議に参加していた千葉さんと鳴子も備品運びを手伝ってくれていた。

(こうしてると、公安学校にいた頃を思い出すなぁ)

石神
今年は研修旅行先から選ばなければいけないな

石神さんが小さく溜息を吐く。
そう、先ほどまでの会議は突然催されることが決定した公安課の研修旅行についてだった。

(公安課の研修旅行って、どんな感じなんだろう)
(研修っていうぐらいだから、訓練生の時みたいにいろいろと実力を試されるのかな)

可能性を考えて、これまで研修という名が付くもので
経験したことはノートにまとめておこうと思う。

黒澤
石神さん!オレにいい考えがあるんです!

いつ後藤さんのヘッドロックから抜け出したのか。
黒澤さんが旅行パンフレットをズラズラズラ~っとデスクに並べた。

サトコ
「『初夏の温泉特集☆』?」

石神
黒澤、遊びじゃない。あくまで庁内の研修···

黒澤
ここの名産、卵なのに甘みのある “あまみっこ” をたっぷり使ったプリン・ア・ラ・モード
季節限定、抹茶アイス付き

石神

黒澤
食べたくありませんか?

石神
誰が···汚いぞ、黒澤

(特別なプリンアラモード、食べたいんだ···)

加賀
ずいぶんと甘っちょろいじゃねぇか、サイボーグメガネ

黒澤
加賀さんには、こちらを

鼻で笑った加賀さんの前に、黒澤さんが雑誌のあるページを見せつける。

加賀
な···っ!

黒澤
そう···温泉水を使用したこの地域限定でしか食べることができない温泉饅頭ならぬ···
温泉大福(こしあん・つぶあん・うぐいすあん)···いいんですか?お召し上がりにならなくて

加賀
チッ!

ダンッ!!と加賀さんは悔しそうにテーブルを叩いた。

黒澤
次は···

後藤

(嘘でしょ···)

次々と黒澤さんは元教官たちを懐柔していく。

(恐るべし!黒澤さんのレジャー魂!)

黒澤
さて、残るは···

津軽
俺たちは別に温泉じゃなくていいしね~

百瀬
「興味ねぇ」

(確かに津軽さんは舌壊人···食べ物で釣るのは困難···)

黒澤
ふふ、そう来ると思いました···津軽さんには、こちらを

黒澤さんはラップトップPCをパカッと開くと、“裏” 温泉通サイトを見せた。

サトコ
「 “裏” って···それ、大丈夫なんですか!?」

黒澤
合法なので、ご安心ください
今はなかなかお目にかかれない···
そう、幻の混浴が存在するんですよ!

津軽
なん、だと···!

サトコ
「ちょ、それで懐柔されるんですか!?」

(しかも他の皆さんより俗物的だし!)

黒澤
津軽さんが来るなら、百瀬さんも···

百瀬
「行く」

黒澤
あ、難波さんからも連絡きました。『温泉楽しみにしてるな♡』だそうです

サトコ
「ハートマーク付きなんですか···」

(まるで恋人同士のよう···)

黒澤
せっかくだから、千葉くんたちもどうです?

千葉大輔
「えっ!」

佐々木鳴子
「いいんですか!?」

黒澤
これも勉強ですから♪難波さんからもOKももらってますよ

(すごい根回し力···でも、鳴子と千葉さんも一緒なら、嬉しいな!)

そして始まった研修旅行。
旅館に到着すると、皆さんがその古さ···歴史ある建物にゴクリと息を飲む。

女将
「はいはい、遠くからよくおいでなさった」

百瀬
「···妖怪」

サトコ
「百瀬さん、失礼ですよ!」

齢100歳を超えてそうな女将さんが全員分の荷物を一気に背中に積んだ。

百瀬
「妖怪」

サトコ
「た、確かに···」

加賀
···只者じゃねぇ

石神
ああ···

まるでミステリーが始まりそうなシリアスな空気が漂う中。
最初に声を掛けてきたのはーー

<選択してください>

難波仁

颯馬周介

加賀兵吾

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