【寝室】
ぼんやりとした明かりで目が覚める。
サトコ
「あれ‥ここ‥」
背中にあたたかい温もり、自分の身体に回された腕の感触。
振り返って見上げれば、加賀さんの綺麗な寝顔が目に入った。
(私、教官を待ってて‥ソファで寝ちゃったのかも)
教官の胸元に顔を埋めたくて、教官を起こさないように身体の向きを変える。
加賀
「‥ん」
(やば‥)
ぼーっとする教官と目が合うと、ゆっくりと微笑んだ。
加賀
「‥起きたのか」
サトコ
「‥おかえり、なさい」
クッ、といつもの笑い声が降りてくる。
加賀
「起きて待ってろ、クズが」
目を瞑ったまま、教官は口元だけに笑みを浮かべる。
聞こえる声はいつもより掠れていて艶っぽくて‥
私を抱きしめ直すと、教官は再び眠りについた。
(最近、忙しかったもんね‥)
実は教官と会うのは10日ぶりだ。
だからこそ家で待っていたんだけど‥
(私が眠ってどうするのよ‥)
規則的に聞こえる寝息。
背中に回された腕が徐々に上がり、髪の毛を軽くいじったかと思うと‥
(え‥)
二の腕をぷにぷに、と触り始める。
サトコ
「‥‥‥」
(ね、寝てまで私をからかわなくてもいいのに‥!)
ぷにぷにと触る指は眠っているとは思えないほど、強弱をつけて触ってくる。
(うぅ‥ひどい!)
(えい‥っ!)
ちょっとだけ腕に力を入れてみるが、手は動かされたまま。
サトコ
「‥‥‥‥」
(‥もしかして、普段も私が気付かないだけで触ってるのかな?)
頭をよぎる疑問に、なんとも言えない気持ちになる。
けれど‥‥
(寝惚けながら触っているのは、ちょっとカワイイかも)
希望通り胸元に顔を埋めながら、おつかれさまです、と呟き‥
私も再び眠りについたのだった。
Happy End