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加賀 恋の行方編 ハッピーエンド



【橋】

電話で呼び出されると、私はスーパーに寄ってから指定された場所へと向かった。

(ここ、前に教官がタバコを吸ってた橋だ。浜口良美さんに会った時に‥)

小走りに橋の中央まで向かうと、あの時と同じように教官が柵にもたれてタバコを吸っている。

サトコ
「教官、買ってきました」
「タバコとビールとどら焼きと梅干‥わっ!?」

袋の中身を確認しながら駆け寄ったせいか、その手前でつまずいてバランスを崩す。
咄嗟に教官が手を伸ばして、私の体を支えてくれた。

サトコ
「あ、ありがとうございます‥」

加賀
遅ぇ

サトコ
「すみません。どら焼きがなかなかなくて」
「でも‥ビールとタバコはわかるんですけど、どら焼きと梅干って」

加賀
タバコは俺のだ
他のもんは‥あいつらの好物だ

私から袋を受け取ると、教官が教官が橋の隅にその3つを置く。

サトコ
「あいつらの、って‥」

加賀
‥ここで死んだ、昔の仲間だ

サトコ
「‥‥‥」

加賀
もう舗装と整備で、5年前の面影はねぇけどな

(ここが、3人が亡くなった場所‥そうか、だから浜口さんの奥さんはここに来てたんだ)
(だから教官はあの時、寂しそうに眺めてたんだ‥)

加賀
‥お前はあいつらに似てる

サトコ
「えっ?」

加賀
クソ真面目で、刑事に向いてねぇ
特に浜口は、そういうタイプだった

サトコ
「浜口さんが‥」
「でも、奥さんのために機密情報を松田理事官に‥」

加賀
‥当時の状況を思い出せば、浜口が誰かに流したことは予想がつく
だが‥あいつには借りがある

サトコ
「借り?」

加賀
一度、命を助けられたことがある
何より‥死ぬ寸前まで、俺の心配をしていたお人よし野郎だ

(教官、浜口さんがリークの根源だって気づいてたんだ‥)

サトコ
「教官が今までしてきたことは全部、仲間のためだったんですね」

加賀
戯言を言うな

サトコ
「戯言!?」

加賀
死んだ人間の想いなんざ背負う気はねぇ
ただ‥あいつらがあげるはずだった事件も手柄も、俺が引き受けてやるだけだ

相変わらずの言い方に、つい笑ってしまった。

加賀
‥あの事件は、まだ黒幕がいる

サトコ
「解決‥してないんですか?」

加賀
ああ、松田が一人でやったにしては不可解なことが多いからな
だが‥ようやくあいつらに報告できるところまで来た

そう言って3人が好きだったものを見つめる教官の目は優しくて、どこか切なげだった。

(やっぱり、教官が好き‥でもこの気持ちは、もう口にしちゃいけない)
(尊敬できるこの人について行きたいから‥少しでも、力になりたいから)

サトコ
「何度も言いますけど、私‥これからも、教官の駒として頑張ります」

加賀
あ?

サトコ
「駒でも奴隷でも、そばにいれば教官みたいな刑事に少しでも近づけると思うんです」
「だから‥まだ色々、学ばせてください」

頭を下げても、教官は何も言ってくれない。

加賀
ダメだな

その言葉に、バッと頭を上げる。

サトコ
「でもっ‥」

加賀
もう『駒』は卒業しろ
お前は今日から、俺の『女』だ

サトコ
「え‥」

スマホ 047

サトコ
「っ‥‥!」

呆気にとられる私を押さえつけるように、教官がキスで唇をふさぐ。
頭が真っ白になり、何も考えることができない。

加賀
‥なんてツラしてんだ

サトコ
「だ、だって‥それって、どういう‥」

言いかけた時、もう一度教官の熱い唇が戻ってくる。
取調室で強引に唇を奪われたあの時とは比べ物にならないほど、気持ちがこもったキスだった。

加賀
‥こういうことだ
お前はもう離さない

サトコ
「わ、私‥」

唇が離れ、至近距離で教官に見つめられる。
それでもまだ、地に足がついていないような気持だった‥



【加賀マンション】

ふわふわしたような気持ちのまま、気が付いたら教官の部屋に来ていた。

(さっきの、本当に夢じゃないの?私が教官の女って‥)

リビングで立ち尽くしていると、教官が私の腕を掴んで顔を覗き込んでくる。

サトコ
「あ、あの‥」

加賀
なんだ

サトコ
「どうして‥だって教官、あの時‥私の気持ちなんて聞きたくないって」

加賀
取り調べの時か

サトコ
はい‥だから私、教官にフラれたんだと思って‥

加賀
あんなところで、他の奴に聞かせてやるつもりはねぇ

サトコ
‥!

加賀
それともお前は、他の奴に俺への気持ちを聞かせるつもりだったのか?

サトコ
「確かにあの時、ブラックミラー越しに見られてましたけど」
「でも‥それよりもキスの方がずっと恥ずかしいですよ!」

加賀
バカが、見られてこそ、興奮が増すんだろ

サトコ
「わ、私はまだちょっとそういうのは」

慌てる私にお構いなしに、教官の唇が首筋を這う。
手がブラウスのボタンに触れて、ひとつ、またひとつと外し始めた。

サトコ
「きょ、教官!私、その‥!」

加賀
うるせぇ

服を脱がされながら、もつれ合うように奥の部屋へと連れて行かれた。

【寝室】

サトコ
「んっ‥‥!」

体の力が抜けるような激しいキスで唇を貪られると、そのままベッドに押し倒された。

サトコ
「教官‥!あの、わ、私、生徒で‥教官は」

加賀
クズが

サトコ
「え‥?」

加賀
立場なんてくだらねぇ

自分のシャツを脱ぎ捨てると、そのまま私に覆い被さる。

サトコ
「っ‥‥!」

加賀
そういや、まだ聞いてねぇな

サトコ
「な、何をですか‥」

加賀
あん時は他の奴に聞かせたくねぇから口をふさいだが‥
今夜はじっくり聞いてやる。お前の気持ちってヤツをな

サトコ
「‥‥!」

加賀
まあ‥体に聞いてもいいが

教官の手と唇が、体の奥の奥を熱くさせる。

サトコ
「教官っ‥す、好きっ‥です!」

加賀
‥知ってる

サトコ
「好きです‥私、教官が好き‥」

(やっと言えた‥)
(これからはもう、この気持ちを隠さなくてもいいんだ)

意地悪で傲慢な言葉とは裏腹の優しい微笑みで、教官が私の頬を撫でる。

サトコ
「あの‥教官は‥私のこと‥」

加賀
さあな

サトコ
「ずるいです‥」

加賀
黙ってろ。体に教え込んでやるよ

ゆっくりと、教官と一緒にベッドに沈み込む。
教官のぬくもりを感じながら、大好きなその人と、甘く溶け合ったのだった。

Happy End

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