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テーマパーク 加賀

(えっ、加賀さん?)

難波
どうした、加賀
黒澤への制裁はもういいのか?

加賀
石神たちに任せましたので

そう言うなり、加賀さんは私の腕を捕まえる。

加賀
行くぞ

サトコ
「えっ、どちらに···」

加賀
さっさとしろ、このクズ

(で、でも室長が見ていて···)

難波
おお、頑張ってこい

(頑張るってなにを‥)
(なにをですか、室長‥っ!)

【パーク内】

私の腕をグイグイ引きながら、加賀さんはパークの奥へと歩いて行く。

サトコ
「あの、加賀さん···」

加賀
······

サトコ
「これからどこへ···」

加賀
······

(この先って、たしかお化け屋敷だったような···)
(えっ、もしかしてお化け屋敷のリベンジ?)
(確かに加賀さんのお腹が鳴ってから、速攻で出て来ちゃったけど···)

私が頭をめぐらせている間も、加賀さんはどんどん歩いて行く。
そして···

加賀
来い

(ここ、スタッフ通用口···)

サトコ
「えっ、待って···」

【スタッフ通用口】

サトコ
「ダメですよ、加賀さん!このは先立ち入り禁止で···」

加賀
ずいぶん楽しそうだったな

サトコ
「えっ···」

ドンッ!

サトコ
「きゃっ」

(ご···後藤教官と迫力が···っ)

加賀
テメェは誰のものだ?あぁ?

サトコ
「か···加賀さんのもの···です」

加賀
だったら、なぜ脱出ゲームで石神についていった?
俺を追ってくるはずだろうが、クズが

(た、確かにそうだけど···)

サトコ
「し、東雲教官が···」

加賀
あぁ?

サトコ
「その···東雲教官が追いかけたからいいかなって···」

加賀
歩にテメェの代わりが務まるはずがねぇだろうが
ったく···おかげで余計なことをするはめに···

サトコ
「えっ···」

(そ、それってまさか···)

サトコ
「ライオンwith女豹···」

加賀
なんだと?

サトコ
「す、すみません!なんでもな···」
「ん···んん···っ」

噛み付くようにキスされて、口内を荒く貪られる。

(ラ···ライオンに···ライオンに食べられる···っ!)
(今日はゾウなのに!!)

だんだん脚の力が抜けてくる。
酸素がうまく回らないみたいに、頭の中がぼんやりとして‥

加賀
···いいツラだな

サトコ
「······」

加賀
やっと思い出したか。テメェが誰のものなのか

サトコ
「それは···いつだって忘れてないです···」

加賀
ん?

サトコ
「私は加賀さんのもので‥」
「だから、どこで誰といても、いつだって‥」

加賀
変わらない···ってか?

サトコ
「はい···」

頷いて顔をあげると、加賀さんはにやりと口の端を吊り上げる。

加賀
テメェにしちゃ、悪くねぇ答えだ
行くぞ

サトコ
「えっ、どこへ···」

加賀
いちいち質問するな。クズが

(そんなこと言われても···)

私の戸惑いなんて気にする様子もなく、加賀さんは私の手を引いて歩き出す。
けれども、それはさっきみたいな乱暴な感じではない。

(本当に···どこにいくつもりなんだろう)
(せっかくだから、もう少しパークを回りたいんだけどな)

【パーク内】

幸い、加賀さんはまだ帰るつもりはないらしい。
手を繋いだまま、一緒にメイン通りを歩いてくれる。

サトコ
「あの···なにかに乗ったりしないですか?」

加賀
テメェは乗りてぇのか

サトコ
「えっと、できれば···」
「ゴーカートとか観覧車とか···」
「あと、フリーフォール系で気になってるものが···」

(あ···)

ふと、目に留まったのはひときわ華やかなメリーゴーラウンドだ。

(懐かしい···子どもの頃、何度も乗ったよね)

加賀
···あれか?

サトコ
「あ、その···できれば···」

(でも、さすがに子どもっぽすぎるよね)
(乗ってるの、小学生ばかりで大人はほとんどいないし···)

加賀
並ぶぞ

(えっ···)

サトコ
「いいんですか?メリーゴーラウンドですよ?」

加賀
それがどうした。テメェが乗りてぇんだろうが

(加賀さん···)

サトコ
「ありがとうございます」

加賀
いちいちニヤニヤするな

サトコ
「だって、嬉しくて···」
「加賀さんが一緒に並んでくれるなんて」

加賀
······

やがてゲートが開き、順番が回ってきた。

スタッフ
「みなさん、お好きな馬に乗ってください」
「保護者の方は、お子さんが乗るお手伝いをお願いします」

【メリーゴーラウンド】

(どうしよう、どの馬に乗ろうかな)
(とりあえず、この一番大きそうな馬に···)

サトコ
「···あれ?」

(これ···1人で乗るの、けっこう大変かも···)
(と、とりあえず足をかけて···)

次の瞬間、ふわっと身体が浮き上がった。

(えっ、抱っこされて···)

サトコ
「加賀さん!?どうして···」

加賀
さっさとよじ登れ、クズ

サトコ
「は、はいっ!」

周囲から冷やかすような歓声があがり、加賀さんが舌打ちする。

(うう、なんだか恥ずかしい···)
(でも、動き出せば、みんな注目しなくなるはず···)

加賀
もっと詰めろ

サトコ
「えっ」

加賀
このままだと乗れねぇだろが。さっさと動け

サトコ
「は、はい···って、まさか!!」

(うそ···2人乗り!?)

サトコ
「ダ、ダメです!こんなの、目立ちすぎて···」

加賀
あ?俺ひとりで別の馬に乗れってことか?

(それはそれで見てみたい···じゃなくて!)

サトコ
「こんなの恥ずかしいですってば」

加賀
···なるほどな
テメェは見られて悦ぶタイプか

サトコ
「違っ···そうじゃな···」

加賀
ほら、動くぞ

可愛らしい音楽と共に、メリーゴーラウンドが回り始める。
加賀さんは私を抱き寄せるようにして、ポールに手を伸ばした。

加賀
まだ恥ずかしいのか

サトコ
「だ、だって···」

加賀
だったら俺に抱きつけ。他のヤツに顔を見せるな

サトコ
「え···」

加賀
その顔は、俺と2人きりのときのものだろうが

音楽が鳴っているはずなのに、加賀さんの声はしっかりと私の耳に届く。
まるで、甘く縛りつけるみたいに。

(ずるい···そんな声で、そんな言い方···)

だけど、私に拒絶できるはずがない。
いつだって私は、加賀さんのものなのだ。

やがて音楽が鳴り止み、メリーゴーラウンドはゆっくりと動きを止める。
先に降りた加賀さんが、私に向けて手を伸ばしてくれた。

加賀
これで満足か、お姫様

サトコ
「はい!」

加賀
ニヤつきすぎだ、クズ

サトコ
「でも、今日の加賀さん···いつもより優しいから···」

加賀
···チッ

伸ばしてくれた手に捕まって、床の上へと降りたつ。

(あ、耳がズレた···)

直そうと手を伸ばすと、先にカチューシャを取り上げられた。

加賀
これはもういらねぇだろ

サトコ
「えっ、でも···」

加賀
それとも、今日はこれをつけたままヤルか?

(ヤ···っ!?)

サトコ
「な、何を言い出すんですか、いきなり!」
「子どもたちが聞いたら···」

加賀
関係ねぇ。それよりさっさと次に行く場所を決めろ

サトコ
「えっ···」

加賀
次はテメェが俺を満足させる番だろうが、お姫様

頭上のキャラ耳のたてがみが、ほこらしげに風になびく。

(さ、さすが肉食獣···)

サトコ
「じゃあ、2人きりになれる場所で···」

加賀
それだけじゃ満足できねぇな

(え···)

加賀
具体的にどうやって満足させるのか、ない知恵絞って考えておけ
テメェにはいろいろ仕込んだはずだからな

サトコ
「···っ」

(そ、そんなこと言われても、『具体的に』なんて···)

過去のあれこれが思い浮かんで、どうしようもなく頬が熱くなる。
当分の間は、隣にいる彼の顔をまともに見れられそうになかった。

Happy  End

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