【お祭り会場】
縁日ののんびりとした雰囲気を引き裂いたのは、けたたましい銃声ーーー
ではなく、パンパン!という、かわいらしい射的の音だった。
店主
「はいお姉さん、これアタリね~」
サトコ
「やった!」
東雲
「······」
サトコ
「あれ?教官、もしかしてまだ景品はゼロですか?」
東雲
「うるさい」
店主
「お兄さん、さっきからちょっと惜しいんだよね」
「真ん中よりも、もっと上のほうを狙わないと」
サトコ
「そうですよ。真ん中だと以外に倒れてくれませんから」
「上のほうを狙って打って、倒すようなイメージです」
東雲
「うるさい」
サトコ
「二度目···」
「ふふ···でも私、射的なら教官に負けませんから!」
東雲
「······」
苛立った様子の教官の横で再び射的の銃を構え、的を絞る。
教官と一緒に射的をすることになった理由は、ほんの10分前にさかのぼる···
教官と、夏祭りデートにやって来たその夜。
露天を眺めながら歩いていた私の目に、かわいいぬいぐるみが飛び込んできた。
サトコ
「教官、見てください!あのマスコット、かわいくないですか?」
東雲
「キミに似てるね」
サトコ
「えっ、かわいいところが?」
東雲
「間抜け面してて一瞬で騙されそうなところが」
サトコ
「ぬいぐるみにそこまでの表情はありませんよ···!」
「もういいです。射的なら、自分で取れますから」
「教官、射撃は苦手ですもんね」
東雲
「···ちょっと」
仕返しのつもりで拗ねて言う私を、教官の声が追いかけてくる。
東雲
「あんなの、余裕で取れるけど」
サトコ
「じゃあ、勝負しませんか?どっちが先にあのマスコットを落とせるか!」
···というわけで、マスコットを賭けて勝負することになったのだった。
(でも···他のには当たるけど、あのぬいぐるみには命中しないんだよね)
(小さいから、当てるのが結構難しいな···)
東雲
「もうギブアップ?」
サトコ
「それはこっちの台詞ですよ」
「教官、さっきから全然当たってないじゃないですか」
一発、また一発と残弾が減る中、私と教官も徐々に真剣になり始める。
残り二発というところで撃った私の弾が、マスコットに命中した!
東雲
「!!!」
サトコ
「あーっ!倒れない!」
下のほうに当たってしまったので、マスコットは揺れたものの落ちることはなかった。
隣で、教官がホッと息を吐いたのがわかる。
(くっ···でもここまでは、私のほうが確実に優勢!)
(これは···初めて、教官に勝利できる!?)
サトコ
「絶対負けません!あれは私がいただきます!」
東雲
「へえ···すごい自信だね」
「でも、次はそう上手くいくかな」
サトコ
「ふふ···次こそ落としますよ!」
銃を構えた瞬間、教官の顔が近づいた。
サトコ
「······!」
チュッと頬に柔らかいものが触れて、思わず引き金を引いてしまった。
サトコ
「え···えっ!?」
東雲
「じゃあ、オレの番ね」
しどろもどろな私の隣で、教官が引き金を引く。
そこから放たれた弾は見事マスコットに命中し、台から落ちた。
店主
「お兄さん、おめでとう!はいこれ、景品!」
マスコットを私に渡しながら、教官がニヤリと笑う。
東雲
「キミがオレに勝とうなんて、一億年早いから」
サトコ
「ぐぬぬ···」
(悔しい···けど、う、嬉しい···!)
頬に触れた唇の感触が、まだ残っている。
夢かもしれないと思ったけど、手の中のマスコットが、これが現実だと教えてくれていた。
サトコ
「きょ、教官!もう一度勝負しましょう!」
東雲
「······」
よこしまな私の考えを見抜いたのか、教官が呆れたように私の頭を小突いた。
東雲
「バカ」
サトコ
「ううっ···」
(もらったマスコットよりも何よりも、教官からのキッスが一番嬉しい···)
(私、ものすごく現金···?)
負けた悔しさなど吹き飛び、どんどん先を歩いて行く教官を追いかけた。
Happy End
コメント
いつも、見させていただいています。深夜の個別指導の最新話が、見たいです。あと、颯馬さんの本編彼目線の1回目の2回目が、見たいです。お願いします。
ゆうさん
閲覧ありがとうございます(*^_^*)
深夜の個別指導が、100恋に移行になってからなくなってしまいまして・・・
颯馬教官は、、、そのうちやります笑
気長に待っててください(^_^)/
サトコ