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これが俺の愛し方 後藤3話



【裏庭】

週明けの昼休み。
近くのコンビニで買ったおにぎりを二つ持って、裏庭へと向かう。

(週末、サトコとゆっくり休めた)
(家でDVDを見て、たくさん話をして···こんなにのんびりできたのも久しぶりだ)

充実した休日だったと思う。
ただ、唯一気にかかるのは···休みの二日間で触れたのは、その唇に軽くだけ。
それでもサトコはいつもと同じ笑顔の中で腕の中にいた。

(あの夜···困ったような顔で止めたのは、やはり···)

気持ちが乗らず、やっとのことで断れたのでは···と思ってしまう。

(だが、『抱かれるのが嫌か』などと正面から聞くのは、いくらなんでもデリカシーに欠ける)
(誰かに相談するようなことでもなしな···)
(末広が行ったというバーにでも行けば、そんな会話を耳にすることもできるのかもしれないが···)

行ける訳もなく、結局頼ったのは現代の情報端末である携帯。

『女 夜 拒む』という曖昧な検索でも、充分過ぎるほどの検索結果が出てきた。

後藤
······

(『キスだけで充分』『しなくていいなら、したくない』『相手に付き合って仕方なく』···)

読めば読むほど、一柳が言った通りのないように出くわす。

(く···ローズマリーの発言は、あながち間違いではないということか)

おにぎりを食べる気もなくなり、そのまま芝生の上に寝転がる。
目を閉じれば、まぶたの裏に浮かぶのは抱きしめている時の彼女の姿。

(嫌がっていないと思っていたのは、俺の勝手な考えだったのかもしれない)

後藤
無理させてたか···

ブサ猫
「ぶみゃー?」

呟きに答えたのは裏庭で馴染のブサ猫だった。
俺の顔を覗きこんでから、コンビニの袋に顔を突っ込む。

後藤
お前が食べるもんはないぞ

ブサ猫
「ぶみゃ」

後藤
そのおにぎりの中身はエビグラタンだ。海苔が巻いてあるからって食べられないだろ

ブサ猫
「ぶみゃー···」

後藤
そんな顔するな。落ち込みたいのは、お互い様だ

(お前と気持ちを分かち合うことになるとはな)
(俺も男だ。好きな女といれば抱きたい。だが···)

後藤
······
一番大事にしたいのは、サトコの気持ちだからな

当分、自制しようと心に決める。

後藤
お前もダイエットでもして、俺と頑張ってみないか?

ブサ猫
「ぶみゃ」

プイッとそっぽを向くブサ猫の頭に手を置くと···

颯馬
随分、仲良しですね

後藤
周さん···

颯馬
ネコと会話なんて、寂しいんですか?

後藤
いや、こいつとは顔馴染みというか···少し痩せろって言ってたんです

颯馬
フフ、微笑ましいですね

(話してる内容は全然微笑ましくないんだが···)

それを周さんに言う訳にもいかず、ブサ猫と目を合わせることしか出来なかった。



【後藤マンション】

後藤
······

(起こしてないよな?)

サトコが寝たのを確認してから、そっとベッドを離れる。
深夜、こっそりと寝室を抜け出すのが、ここ最近の休日の恒例となっていた。

後藤
甘く見てたな···

禁欲と言うのは簡単だが、いざとなるとそこに要する精神力は相当なものだった。
頭から冷たいシャワーを浴びてきて、冷えた身体でブランデーの瓶を手にソファに座る。

(教官室でさえ気の抜けない場所になるとは···)

【個別教官室】
しばらくはサトコに触れない···そう裏庭で決意した日の夜。

サトコ
「この間の課題、集めてきました」

後藤
ああ、ありがとう

束ねたレポートをサトコから受け取る。
その時に手が触れ合い、普段では意識しないのに指先の温もりが気になる。

サトコ
「後藤さん?」

手を離せずにいると、サトコが不思議そうな声を出した。

(このまま手を引けば···)

抱きしめることも出来る。
もしかしたら、今日は嫌がらないかもしれない···そんな思いが過り、自分の意志の弱さに呆れる。

後藤
助かった。遅くまで残ってもらって悪いな

サトコ
「気にしないでください。私も訓練や課題がありましたから」

取り繕うな笑みで誤魔化し、ぱっと手を離した。

(教官という立場でありながら、下心など情けない)
(だが今は···アンタのその笑顔がいつも以上に眩しく見える)

後藤
······

サトコ
「ど、どうしたんですか?」

ガタッと急に立ち上がると、その目を丸くされてしまう。

後藤
いや、冷たい水が飲みたくなっただけだ

サトコ
「そういう時は立ってる私を使ってください」

後藤
そういうわけにもいかない

(冷たい水でも飲んで、頭を冷やせ)

冷蔵庫のペットボトルを一気に煽る。
初日から意志の弱さを痛感することになるとは思わなかった。



【後藤マンション】
(教官室で、あのザマだ···)

普段はあまり呑まない酒を口にしながら、ここ数日のことを振り返る。

(人間、意識すると駄目になるもんなんだな)
(ひとつのベッドで眠ることが、こんなに辛いとは···)

後藤
···ガキじゃあるまいし

持て余した熱を冷ますように、グラスのブランデーを一気に煽る。
カッと熱くなる喉は、反対に先程まで燻っていたものを思い出させてーー

【寝室】

風呂から出ると、自然に寝室へと足が向く。
習慣のようになっていることのはずなのに、様々な思いがあるせいか、動きがぎこちなくなる。

サトコ
「後藤さん?」

すぐに布団に入らずにいると、サトコの声がかかった。

後藤
まだ寝るには少し早いだろ

買ったまま結局あまり使っていないタブレット端末を取り出す。

(映画でも流さなければ、とてもじゃないが間が持たない)

そうして映画を観ること、約一時間ーー

サトコ
「ふわ···」

後藤
眠くなったか?

サトコ
「でも、あと少しなので···」

後藤
無理するなよ。続きは今度観ればいいんだ

サトコ
「はい。だけどラストが気になって···」

半分もたれかかるサトコの瞼が重い。
普段なら、DVDを消して一緒に寝るところだが···

サトコ
「ん···」

後藤
······

(悪い。今日は抱きしめて眠れそうにない)

睡魔に負けて眠ってしまったサトコをそっと寝かし、DVDを消す。

後藤
おやすみ

その額にキスを落とし、そっとベッドから抜け出た。

【リビング】
後藤
酒に強くなったわけでもないのに、酔えないもんだな
こういう時は···

(精神統一に限る)

久しぶりに『日本の滝、世界の滝』のDVDを取り出すと、空が明るくなるまでそれを眺めていた。

【学校 資料室】

続く禁欲生活、努力の甲斐もあり、何とか日々をやり過ごすことができている。

(これだけ抱き合わなくとも、サトコからは何も言われないということは···)
(やはり俺の都合に合わせていたということか)

これまでのことを悔いながら資料室を歩いていると、資料庫のドアがわずかに開いていた。

(鍵の閉め忘れか?それとも···)

【資料庫】

後藤
誰かいるのか?

サトコ
「え?」

(サトコ?)

後藤
氷川?

サトコ
「え、わ···ご、後藤さん!」

返ってきた返事に声のする方に行くと、サトコが脚立から落ちそうになっている。

(アンタは本当に危なっかしいな)

抱き留めてほっとしたのも束の間、今度はその距離の近さに固まった。
すぐに離さなければいけないのに腕が動かない。

後藤
······

サトコ
「あ、あの···」

(何をやってるんだ、俺は)

間近で見る彼女の瞳が何か物言いたげに揺れる。

サトコ
「この間のことなんですが···」

後藤

サトコ
「だから、その···」

言いづらそうに唇を惑わせる。
それだけでわかるほど察しのいい男でないことが悔しい。

(今、何を思ってる?何を伝えたんだ?)

後藤
この間が、何だ?

サトコ
「い、いえ···」

分からないなりに、その瞳を見つめ考えを探っていると···

黒澤
後藤さん、ここですかー?

後藤

サトコ
「!」

黒澤の登場により、結局サトコの気持ちを聞くことは出来なかった。

【個別教官室】
(あの時、何を言おうとしていたのか···)

資料庫でサトコにあった日の夜。
遅くまで残って報告書を片付けていたが、その進捗は著しいとは言えない。

(何か抱え込んでるとき···アンタはいつもそういう目をするよな)

物言いたげな視線を何度も思い出す。

(ひとりで悶々と考えていたところで答えが出るわけでもない)
(気になるなら、本人に直接···)

聞くべきかと、着替えを終え脱いでいたジャケットのポケットにある携帯に手を伸ばした時だった。
振動音が聞こえ、電話が着信しているのがわかる。

(サトコ···)

想いが通じたのだろうかと都合のいいことを考えながら、電話を取ると···

後藤
ん···?

電話の向こうから聞こえてくるのは雑音と風の音だけ。

後藤
サトコ?サトコ···

耳を澄ませるとザザッという音の向こうに、荒い息遣いが聞こえてくる。
そしてジリッと砂を踏むような音も。

後藤
サトコ!

(只事じゃない···)

ドクンっと嫌な鼓動が耳に響いた。
嫌な汗が噴き出し、過呼吸にも似た細い息が零れる。

(落ち着け!)

伝わってくる異常な空気に、反射的に飛び出しそうになる気持ちをぐっと堪える。

(まずはサトコの居場所を特定することからだ)

不規則に脈打ち始めた心臓を抑え、学内のシステムを使い携帯のGPSから居場所を拾い出す。
サトコは、ここからそう遠くない公園にいるようだった。

(ここなら走って10分···いや、5分で行く)
(絶対に、サトコだけは···)

失いたくない···失えない。
ともすれば乱れそうになる気持ちを必死に抑え、
管轄の警察に連絡を入れると、俺は教官室を飛び出した。

暮らしをおトクにかえていく|ポイントインカム

【後藤マンション】

駆けつけた公園で見たのは、凶器を振り回す男に応戦するサトコの姿。
あと少し遅れていれば、傷を負わせていたかもしれない···その状況が何度となく頭をチラつく。

(いや、落ち着け···俺よりもサトコの方がショックを受けているはずだ)

いつもと変わらぬ顔を見せているのがまた彼女らしく、心配になってくる。

後藤
風呂で温まれ。まだ気が張ってるだろ

サトコ
「ありがとうございます」

(この仕事で就いていれば、覚悟していなければいけないこと)
(頭では充分わかっているが···)

サトコが襲われた光景を思い出すだけで、浅くなりそうな呼吸を抑える。
動揺をうつさないようになるべく平静を装っていると···不意に背中に温もりを感じた。

後藤
···どうした?

硬くならないように、努めて普段通りの声を出す。

サトコ
「本当に···ありがとうございました。突然襲われたからって、あんな対応···」
「もっと訓練頑張らないとダメですね」

後藤
現場に出れば訓練通りに運ぶことの方が少ない。厳しい言い方だが、こういうことも場数だ

サトコ
「···はい」

後藤
俺たちの仕事は恨みを買いやすい。いつどこで命を狙われるかもわからない
だから···日々後悔しないように、俺はサトコと向き合っていたい

サトコ
「はい···」

(後悔、しないように···)

半ば自分に向けた言葉。
少しずつ声が喉に張り付くのが自分でもわかった。

(何を思っているのか···それを悩んで迷っている時間なんかない)
(次会ったら話そう、それが叶わないことも···)

あるのが、この仕事だ。

(サトコが想っていることを聞こう)
(それから “抱きたい” と思うこの気持ちも···正直に伝えてみよう)

後藤
サトコ···

話をしようと態勢を変えようとすると、その腕に力がこもり、強く抱きつかれた。

後藤
サトコ?

サトコ
「······」

(今になって怖くなってきたか?)

サトコの気持ちが整わないのならば、落ち着かせることを最優先にしなければいけない。
安心させるように、その手を強く握った時だった。

サトコ
「···行きませんか?」

くぐもった声をし、サトコが身体を向けさせたのは寝室。
彼女の意図も分からないのに、ドキッとさせられる。

(不謹慎な···早く休みたいというだけかもしれないだろう)

後藤
ああ···

都合よくとってしまいそうな自分を戒め、彼女の肩に腕を回すと寝室へと向かった。

もっと言葉を聞きたいと思う気持ちもあったけれど、触れたいという思いが勝った。
互いの想いを伝え合うようなキス。
ここ最近の触れるだけのものとは違うそれは簡単に身体に火を点けた。

(初めて抱くわけじゃないんだ···何度も···)

触れたはダダと落ち着かせようとすると、それがかえって記憶を呼び覚まし煽ってくる。
呼ぶ声がやけに甘く耳の奥に響く気がして苦しい。

サトコ
「ずっと···こうして欲しくて···」

後藤
サトコ···

甘い言葉を啄むようにキスを繰り返す。
キスの度に零れる数だけ、彼女の言葉に心を揺さぶられて。

(あまり可愛いことを言うな。今日は少しでも長く触れ合っていたい···)

すぐに深く抱きたい気持ちを抑え、その肌に触れていく。

サトコ
「あ!ま、待ってください···」

後藤
···どうした?

正直言えばとても待てる状況ではないのだが、それでも気力を振り絞り顔を上げる。

サトコ
「お風呂···まだ、でした···」

後藤
あとで一緒に入ればいい

サトコ
「でも···っ」

後藤
行こうと言ったのは、アンタだろう?

サトコ
「そうですけど···」

(そういう理由なら、悪いが止められない)

シャツを脱ぎながら首筋に顔を埋めると、彼女の身体が小さく跳ねる。
間が空いていることで求める気持ちが強くなっているのは同じなのか、シーツが乱れるのが早い。

後藤
そのままのサトコがいい

サトコ
「···っ」

自分本位なことはしたくない···そう思いながらも、
唇も指先もこちらの自制など関係なく求めてしまう。

サトコ
「ぁ···っ」

後藤
欲しいと···思ってくれたんだろう?

(無理をさせてないか···こんなふうに聞くのはズルいよな)
(けど···)

サトコ
「はい···」

答えるのと同時に、彼女の耳がカッと真っ赤になる。
耳たぶに唇を寄せながら、手は膝裏にかかった。

サトコ
「あっ···」

手を止めるように足に力が入り、耳にキスを落としながら指を滑らせ強張りを解く。
欲しいと思ってくれている気持ちは、すぐに指先に伝わってきた。

後藤
アンタ···

サトコ
「は、恥ずかしいです···」

後藤
そんなことない。俺だって同じだ

サトコ
「え···っ」

抑えるものがなければ、伝わるのは同じ。
それを肌で感じたサトコの顔がさらに赤くなる。

後藤
···余裕がないみたいで悪い

サトコ
「い、いえ、そんなっ···それを言ったら、私だって···」

(格好悪い···そう思っても、取り繕うことも出来ない)

キスをすればするほど、抱きしめれば抱きしめるほど···昂ぶる気持ちを抑えられなくなる。

後藤
こうする夢を何度も見た

サトコ
「え···」

後藤
俺は···もうアンタなしではいられない

サトコ
「後藤、さ···っ!」

求める気持ちをそのまま埋めるように深く抱く。

後藤
辛かったら言ってくれ

サトコ
「···っ!」

(気遣ってやりたいが···)

ただの快楽ではない、頭の芯まで熱くなるような錯覚。
一歩間違えれば凶暴なまでの欲望が込み上げてきそうで、それを奥歯を噛んで堪える。

後藤
···っ

サトコ
「ぁ···あっ!」

それでもいつも以上に彼女を求めてしまう。
揺さぶられながらも手を伸ばしてくる姿が愛おしくて、互いの手を重ねた。

後藤
愛してる···
愛してる、サトコ

強く手を握り、指を絡ませ唇を塞ぐ。
口づけの合間に洩れる声が扇情的で、求める気持ちが際限なくなる。

サトコ
「私、も···」

目尻に涙を溜めながらの言葉に、優しくしたい気持ちと、
もっと掻き抱きたい相反する想いがせめぎあう。
その涙にキスを落として、乱れた髪を梳くように後ろに流した。

後藤
もっと···欲しがっても、いいか···?

サトコ
「···っ」

囁く声が掠れたのが自分でもわかる。
余裕のなさに呆れながらも、コクコクと必死に頷くサトコをさらに抱き寄せた。

後藤
···っ

次第に互いの息遣いしか聞こえなくなっていく。

(禁欲なんて、端から無理な話なんだ···)
(俺はこんなにもサトコを求めてる)

女はキスだけで満足できると言われても、どうしようもない。
こういう愛し方しか出来ないのだから。

(結局、無理をさせてしまったんじゃないだろうか···)

二人でシャワーを浴びて、再びベッドに戻った。
腕の中で寄り添うサトコは俺の青いTシャツを着ている。

後藤
やっぱりデカかったか。洗濯が済んでるのが、それぐらいしかなくて···済まない

サトコ
「いえ、嬉しいです」

後藤
嬉しい?

訊ねると、サトコは少し照れくさそうな顔をする。

サトコ
「なんか仄かに後藤さんの匂いがする気がして···ずっと抱きしめてもらってるみたいで」

後藤
サトコ···

(アンタはどうしてそう予想もしないようなことばっかり言うんだ)
(そんなこと言われたら、また···)

後藤
Tシャツだけで満足か?

サトコ
「え?あ、わっ」

後ろからぎゅっと抱きしめると、大きい襟ぐりのせいで素肌が覗く。

(華奢なんだな···普段は男たちと対等に張り合ってるから、忘れがちだが···)

彼女のことは刑事として評価している。
けれど、恋人としての立場から言えば守りたい気持ちも強い。

(複雑なもんだ。だが、サトコを大切にしたいという気持ちは、どちらも同じ)
(禁欲まではいかなくとも、サトコがその気になれない時は気を遣わなくていい···)
(それだけは伝えておかないとな)

今回のような長期は厳しいと身に染みてわかったが、一度や二度なら我慢できる。

(それにもしサトコがずっと必要ないと言う時が来たら···)

その時はその時で覚悟を決める。
何より大事なのは、サトコと共にいることだ。

後藤
あのな···

サトコ
「はい?」

髪で遊ぶようにしながら切り出すと、サトコは顔を上げてきた。

後藤
俺も気付くようにするが···気が乗らない時は、前みたいに断ってくれ
ちゃんと我慢する

サトコ
「あ、あれはその···」

(ん?)

気まずげに視線を彷徨わせながら、その顔がどんどん赤くなるのがわかった。

後藤
悪い。デリカシーのない話だったか?暗に伝える方法がわからなくて···

サトコ
「違うんです!実は、あの時は···」

意を決した顔でサトコが耳に顔を寄せてくる。

サトコ
「新しい下着を着けてみたんですが、思ったより大胆な気がして···」
「見られるのが、恥ずかしくて···」

後藤
······

(大胆な下着を着けてたから···?)

思いも寄らぬ話な上、その手の話が不意に男を刺激することをきっと彼女は知らない。
その手首を掴み引き寄せてしまう。

後藤
··馬鹿だな

サトコ
「自分でも、そう思います···今度はもっとよく見てから···」

後藤
違う

サトコ
「え?」

パジャマ代わりに着た俺のTシャツは大きく、抱き寄せた拍子に胸元がさらに乱れる。
露わになった肩を見れば、唇を塞ぐのを止められなかった。

サトコ
「ん···」

後藤
どんなアンタだって好きだ

サトコ
「後藤さ···」

(俺のために、そこまで考えてくれるアンタが···)

愛おしくて、堪らない。

後藤
全部、俺の好きなサトコだ

キスの合間に告げると、サトコの顔はますます真っ赤になる。

サトコ
「私も···後藤さんの全部が大好きです···」

(アンタは俺をどこまで惚れさせるんだろうな)

さらに真っ赤になるサトコに募るのは愛しさばかりで。
もう加減することも出来ないと···再び燻り始めた熱を分けるように抱きしめた。

Happy End



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