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このドキドキはキミにだけ発動します 加賀カレ目線

サトコ
「室長、お疲れ様です。一杯どうですか?」

難波
おお、悪いな。お前も飲んでるか?

サトコ
「いえ、私は···飲んだあとに川遊びすると危ないので」

加賀
······

サトコ
「石神さん!ビールお持ちしました!」

石神
さっきから動きっぱなしだろう。少し休め

サトコ
「ありがとうございます。でも大丈夫ですよ」
「颯馬さんも!ささっ、ぐいっと!」

颯馬
フフ···サトコさんは働き者ですね

加賀
······

サトコ
「あれ?東雲さん、どこに行くんですか?」

東雲
ねえ···こういうときは見て向ぬふりするもんでしょ
いいから、早く川溺れしてなよ

サトコ
「川溺れ!?川遊びじゃなくて!?」

加賀
······

(何やってんだあの野郎)
(···なんで俺のところに来ねぇ)

さっきから忙しそうに走り回っているサトコは、まるで俺など見えていないかのようだ。

(いや···あれはわざと見ねぇようにしてんな)
(何が気に入らねぇ···?面倒な野郎だ)

女子大生1
「それじゃみなさん、毎日お忙しいんですね~」

黒澤
そうなんですよ~。疲れた心と身体を癒してくれる人募集中でっす☆

津軽
あーいいよね。帰ったら誰かが待っててくれるって
それがウサギみたいに目を泣き腫らしてビクビクしてる子なら最高だな

加賀
······

(こっちにもいたのか、面倒な野郎が)

ただでさえサトコが他の奴にばかり酒を注いでいる姿に、苛立ちが募っている。
仕方なく追加のビールを持ってこようと立ち上がりかけたとき、腕を引っ張られた。

女子大生1
「加賀さん、どこ行くんですかぁ?」

加賀
あ?

女子大生1
「今日はずーっと一緒にいましょうよ」

加賀
······

黒澤
おーっと、加賀さんがお持ち帰り!?

津軽
いいなぁ。さすが兵吾くん

女子大生1
「私、加賀さんにならいっぱい尽くしちゃいますよぉ♪」

加賀
······
誰だテメェ

女子大生1
「!!!」
「ひ、ひどっ···」

わざとらしく泣いたふりをして、女が走り去る。
女に構わずビールを持ってきた俺に、黒澤がため息をついた。

黒澤
加賀さん、ダメですよ~女の子には優しくしないと!
せっかくお持ち帰りのチャンスだったのに

加賀
いらねぇ

津軽
まあそうだよね。兵吾くんはわざわざお持ち帰りしなくてもね

意味ありげに笑う津軽に、舌打ちが漏れた。

津軽
イライラしてるね~兵吾くん
原因は、やっぱり···

黒澤
津軽さん、しーっ。それ以上言うと逆鱗に触れますよ

加賀
······

(めんどくせぇ···向こうで飲むか)
(それにしても···ひと雨来そうだな)

空は雲に覆われていて、さっきまでのいい天気が次第に崩れてきている。
ビールを持って立ち上がり、黒澤達から離れた。

予想通り、少しすると激しい雨が降り出した。
木陰に避難するサトコを見かけて、自然と足がそちらに向く。

加賀
おい

サトコ
「ひぃ···」

上着をかけてやると、サトコが恐る恐る振り返った。
ビクビクするその姿に、おのずと津軽の言葉が思い出される。

(相変わらず、人のモンをヘンな名前で呼びやがって)

かと言って、『サトコ』呼びされても腹立たしい。

(あいつが、今さら『氷川』呼びするわけもねぇしな)

木に手をついて閉じ込めてやると、サトコがさらにビクついた。

(そういう姿を、他の野郎に見せてんじゃねぇ)

詰め寄ってやれば、後ろからでもわかるほど耳を赤くしている。
上着を落として背中の紐を引っ張ってやると、サトコが明らかに動揺を見せた。

サトコ
「ななな、何を···!?」

加賀
テメェがどんな声で啼くのか、他の野郎に聞かせてやろうか?

脅しのつもりで紐を解き、後ろから肩に手をかけて耳たぶを舌先でいじった。

サトコ
「っ······!」

(いい反応するじゃねぇか)
(そういやこのマゾ、誰かに見られて、ってのがお好みだったな)

サトコ
「か、加賀さん···!?もしかして、よからぬことをお考えでは···」

加賀
テメェの望み通りにしてやろうと思っただけだ

サトコ
「私、何も望んでないです···!」
「できれば、このまま平和に帰りたいなって···!」

水着が外れ、目の前でサトコの肌があらわになる。
日に焼けて少し赤くなった背中を伝う雨雫が、やけに官能的だった。

サトコ
「か、加賀さん···」

加賀
あ?

サトコ
「さっきは女子大生と一緒にいたのに」
「私が室長や教官たちのところに行ってたの、見ててくれたんですか···?」

加賀
······

(鈍いくせに、余計なところにはすぐ気づきやがる)

黙らせるために肌を攻めてやると、サトコが悲鳴のような声を上げた。

サトコ
「私は、加賀さんのこと大好きですけどっ···」
「加賀さんだって···私のこと、だ、大大大好きなくせに!」

加賀
······

その瞬間、強引に振り向かせて無理やり唇を奪った。

(···震えてるくせに)
(生意気なこと言いやがって···そのうえ、今度は抵抗か)

ここじゃ嫌、と真っ赤になって俺を押しのける姿も、必死に首を振るその顔も···
何もかも、自分の中の “男” を昂らせる要因にしかならない。

(···女性大生だ?)
(くだらねぇもんに、嫉妬なんざしやがって)

自分をこんな風にさせるのは、この世でこの女しかいない。
問題は、それを本人がまったく自覚していないことだった。



よほど疲れたのか、帰りの車でサトコは俺の肩にもたれかかりながら眠り始めた。

鳴子
「サトコ、大丈夫?私の方に···」

加賀
構うな

鳴子
「えっ?」

起こそうとした佐々木を止め、サトコが楽に寝れるように頭を引き寄せた。

加賀
そっとしといてやれ

鳴子
「は、はい···」

千葉
「······」

思いがけず、自分の声が穏やかに響く。
千葉と佐々木は驚きながらも、何かに気付いたようにそれ以上何も言わなかった。

(バカか···何やってんだ)
(自分の上着着せて、他の奴らがいる前で、わざとこんなマネして)

これではまるで、サトコは自分のものだと宣言したようなものだ。
前に座っている歩が振り返り、ニヤニヤした笑みを見せていることが腹立たしい。

加賀
お前、先に帰ったんじゃなかったのか

東雲
透に見つかったんですよ。そこで眠りこけてる彼女が騒いだせいで

黒澤
だってひどいじゃないですかー、オレたちを置いて帰ろうとするなんて!
オレたち、一心同体ですよね!?

東雲
大丈夫?滝つぼに打たれて修行でもしてきたら?

黒澤
歩さんがだんだん加賀さんみたいに辛らつになっていく···
あっ···でも滝に興味あるって言ったら、後藤さんとの接点が!

後藤
お前が行きたいって言っても連れて行かないからな

黒澤
なんでですか!

加賀
うるせぇ

サトコを起こさないように一喝すると、メガネ野郎の呆れたようなため息が聞こえた。
その隣で津軽が、俺の顔を覗き込むように身体を傾ける。

津軽
へぇ··· “かわいい教え子” には優しいんだね

加賀
······

津軽
あの兵吾くんが特定の誰かをかわいがる···なんて、驚きだな

意味深な言葉に、第六感のようなものが働いた。

(相変わらず読めねぇ野郎だな)
(何を企んでやがる···?)

サトコ
「むにゃ···野菜···食べないと···」

加賀
······

津軽を睨もうとしたが、耳元をサトコの寝言がくすぐり一気にその気が失せた。

(なんだっていい。誰がどういう行動に出ようが、敵になろうが構わねぇ)
(俺は自分が決めたもんを守るだけだ)

窓の外を流れる景色に、視線を移す。
解散した後、どうやってサトコを連れ出そうかと考えながら。

Happy  End

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