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あの日、僕らは隠れてキスをした 加賀2話

売店を出ようとしたその瞬間、入り口近くにいた誰かがスッと現れた。

加賀
······

サトコ
「加賀さっ···」

加賀
·········

(ヒィ···!当然だけど、お怒りだ···!)

サトコ
「あ、あの···!すみません!今行こうと」

佐々木鳴子
「あっ、いたいたサトコ!卓球やらないの?」

千葉大輔
「今、颯馬警部と後藤警部補の真剣勝負中なんだけど」

加賀
······

佐々木鳴子
「あっ···」

千葉大輔
「察した···」

加賀
こんなところで油売ってるとは、偉くなったもんだな

サトコ
「こっ、これから向かおうと思ってたんです···!」

加賀
言い訳か

サトコ
「違います!本当に···」

勢いよく首根っこをつかまれて、ずるずると後ろ向きに引きずられる。

佐々木鳴子
「サトコ···」

千葉大輔
「どうか、命だけは取られませんように···」

サトコ
「ふたりとも、手合わせないで···!縁起悪い!」

助けも呼べないまま、加賀さんの部屋へと連行されるしかなかった。

加賀さんの部屋は、驚くほど広かった。

サトコ
「ここ、家族で止まる部屋じゃないんですか···!?」

加賀
知るか

サトコ
「だってこの部屋、露天風呂ついてますよ!?」

(もしかして、石神さんや津軽さんの部屋も···!?)
(すごい贅沢···!羨ましい!)

サトコ
「あ、露天風呂といえば私、ご飯の前に鳴子と···」

加賀
脱げ

サトコ
「···はい?」

加賀
テメェの戯れ言なんざ聞くつもりはねぇ。さっさと脱げ

脱げ、と言ったわりに、加賀さんは私が脱ぐのを待たず浴衣の帯を解いた。

サトコ
「ちょっ、待っ···自分で脱げますから···!」

加賀
遅ぇ

サトコ
「『脱げ』って言われてから帯と枯れるまで、10秒もなかったのに···!?」

必死に胸元を押さえて抵抗したけど、そんなものが加賀さんに通用するはずもない。
部屋で全て引っぺがされると、問答無用で部屋付きの露天風呂に投げ込まれた。

サトコ
「···追いはぎにあった人って、こういう気分なのかな···」

加賀
あ?

サトコ
「だって、着ぐるみ全部剥がされて温泉に投げ込まれたんですよ···」
「正直、途方に暮れる···」

加賀
テメェの都合なんざどうでもいい

サトコ
「ですよね···」

加賀

サトコ
「はい?」

加賀
なんでそんなところにいる

サトコ
「そんなところ、とは···」

広いお風呂の端に身を寄せる私を引っ張り、加賀さんが無理やり腕の中に抱き込んだ。

サトコ
「あの、ちょっと恥ずかしいです···」

加賀
今さらだろ

サトコ
「だって、一緒に露天風呂···っていうのは、あんまりないじゃないですか」

加賀
家の風呂と同じだ

サトコ
「家のお風呂でも未だにちょっと緊張するのに」
「外だと思うと、なんていうか···落ち着かなくて」

加賀
テメェの都合はどうでもいい

サトコ
「二度目···」

結局加賀さんに後ろから抱きしめられながら、部屋付きの露天風呂を堪能した。

サトコ
「風が気持ちいいですね」
「そういえば加賀さん、旅館の露天風呂は入りました?」

加賀
ああ

サトコ
「私もさっき入ったんです。鳴子と一緒に」
「男湯と意外に距離が近くて、ちょっとびっくりしました」

加賀
······

サトコ
「でもあそこからの景色もすごく素敵でしたね」
「温泉もご飯も景色もいいなんて、本当に最高の···」

つ···と伸びてきた指先が、胸元を行き来した。

サトコ
「加賀さんっ···今、研修中···!」

加賀
一緒に風呂に入っときながら何言ってやがる

サトコ
「それは、無理やり···!」

加賀
無理やり?

巧みな動きで少しずつ欲を煽られて、腰が揺れた。
お湯が跳ね、加賀さんの手が動くたびに私の呼吸も浅くなっていく。

サトコ
「こんな、ところで···」

加賀
···ん

促されて振り向くと、すぐに唇を食まれた。
お湯とは別の濡れた音を立てて、加賀さんが舌で奥に熱を灯す···

サトコ
「かが、さんっ···」

加賀
研修もクソもねぇだろ。こんなのただの慰安旅行だ

サトコ
「じゃあ本当に、大福目当てで···?」

加賀
じゃなきゃこんなところまで来るか

(ふたふたまるまる···は、仕事とは関係なかった···)
(でもただの慰安旅行だとしても、外でこんな···)

体勢を変えられて、加賀さんと向き合う。
その唇が、揺れる胸元をなぞった。

サトコ
「っ······!」

加賀
なに声我慢してんだ

サトコ
「や、ぁっ···」

黒澤
ふ~ぅ☆いい景色!

サトコ
「!!!」

(この声···くっ、黒澤さん!?隣から···!?)

どうやら壁のすぐ向こうが、隣の部屋の露天風呂らしい。

難波
おー、俺の部屋より景色良いなー

黒澤
津軽さん、よかったんですか?オレたちも入らせてもらって

津軽
もちろん。透くんのお陰で素晴らしい混浴が体験できたからね
これからも、君とは是非仲良くしたいよ

黒澤
ふふ···喜んでいただけで何よりですよ。色々調べた甲斐がありました
オレの方こそ、今後ともよしなに

難波
おいおい、裏取引か~?まあ、止めねぇけど
それにしても、部屋付きの露天風呂で一杯やるなんて、乙なもんだな

(隣、津軽さんの部屋なんだ···!しかも室長までいる!?)
(これにさすがにまずい···!)

必死に首を振って加賀さんに訴えたけど、もちろんやめてくれるはずもない。
それどころか指先と舌はさらに艶めかしく動き始め、肌を味わう音がひっそりと響いた。

サトコ
「だめ···っ···」

加賀
好きなんだろ、こういうのが

サトコ
「え···?」

加賀
意地悪されんのが快感だって言ってたじゃねぇか

サトコ
「そんなの、いつ···」

(ん···?意地悪···?)
(···もしかして、さっきの露天風呂の···)

サトコ
「聞いてたんですか···!?」

加賀
テメェらの声がでかすぎだ

サトコ
「じゃああの時入ってきたのは···」

(っていうか、意地悪されるのが快感だなんて一言も言ってない···!)
(『意地悪』っていう言葉だけを都合よく解釈してる···!?)

黒澤
ん?何か聞こえません?お隣さんかな?

難波
隣、誰だ?

津軽
兵吾くんだったはずですけど

黒澤
えっ、そうなんですか?おーい加賀さーん、入ってます~?

加賀
···仕方ねぇ

ようやく私の身体を離すと、加賀さんが壁を振り返る。

加賀
沈めて黙らせるぞ、黒澤

黒澤
壁越しでも怖い···

難波
お前、今なんか喋ってなかったか?

加賀
気のせいでしょう。もう上がります

ザバッと立ち上がると、加賀さんが私の腕を引いてドアへ向かう。

加賀
···あとで覚えてやがれ

サトコ
「!!!???」

(私···何もしてないのに!)

ちゅっと二の腕にキスをされ、まるでのぼせたように急激に頬が熱くなる。
加賀さんに支えられ、ふらつきながら露天風呂をあとにしたのだった···

Happy End

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