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加賀 恋の行方編 7話

【モニタールーム】

東雲教官から連絡をもらい、私は加賀教官と一緒にモニタールームへと急いだ。


あ、兵吾さんこっちです

加賀
ビンゴか?


もちろん。やっぱり敵は警察内部にいるかも

サトコ
「ど、どういうことですか?」


これね、全警察内の極秘情報のデータ

誰もいないモニタールームで、東雲教官が各モニターに無数のデータを映し出す。

サトコ
「す、すごい‥!」


外部の仕業だって思われるように細工して、ハッキングをかけたんだけど

(警察のデータにハッキング‥!?東雲教官ってそんなことまでできるの!?)


怪しまれないようカモフラージュされてるようだけど
かなりの頻度で内部情報がリークされてるね

加賀
事件に共通で関わってる奴はいるか?


今のところいないですね。誰の事件、とかあまり関係ないのかも
どちらかと言えば、事件の大きさの方が重要視されてるみたいだし

(なんともない風に話してる‥この2人やっぱりすごい‥)

サトコ
「あの、でもどうしてこんな‥」

加賀
‥お前はおかしいと思わねぇのか

サトコ
「え?」

加賀
元刑事の妻だからって、女が刑事の車に細工できるか
銃を送りつけた奴も、どこのクズか洗い出さなきゃ気がすまねぇ


それに、サトコちゃんがいる時だったよね?梅田に襲われたのって

サトコ
「梅田って‥竹田とつながってた、あの爆弾魔ですか?」

(そういえば、教官と一緒に竹田の尾行をしてる時に梅田に襲われたことがあったっけ)

加賀
梅田も、浜口の嫁も、俺の動きを把握していた
事前に誰かが情報を流してなきゃ、不可能なことが多い

サトコ
「確かに‥」


浜口さんの銃の話を聞いた時は、どこぞの怖い組の人たちかと思ったんだけど
それだと、兵吾さんの動きが読まれてたことの説明がつかないんだよね

サトコ
「それで、東雲教官がハッキングして追ってたんですか?」


そういうこと

今回の事件に関しては、私が立件しないと決めたことで一応の解決を見たと思っていた。

(でも、まだ終わってなかった‥教官の中ではあんな中途半端な形じゃ終われないんだ)

加賀
歩、関連がありそうなデータバンクをしらみつぶしに洗い出せ


え?いいんですか?結構危険だと思うけど

加賀
やるなと言っても、お前ならやるつもりだろう


いや、そこはやっぱりほら、知りたがりの血が騒ぐというか

加賀
どの道、押さえといて損はない。なんにでも使えるからな

(うわ、教官たちのこの悪い笑顔‥)


とりあえず、今まで引っ張れたデータを見てるんですけど‥
過去にも、不正なデータ書き換えや損失がありそうですね

加賀
なんだと‥?


不自然に抜け落ちてる事件がいくつかあります
リークした人間にとって、都合の悪いデータなんでしょうね

加賀
‥‥‥

サトコ
「‥教官?」

加賀
‥なんでもねぇ

何か考え込むように、教官が私から顔をそらした。

サトコ
「あの‥そのリークしてる人って、複数なんですか?」


警察の情報を外部に漏らしてる人間が複数いたら大変だよ
一人か、複数いたとしても仲間同士でやってると思っていいだろうね

加賀
‥もっと深く探っておけ。行けるところまでだ


了解

東雲教官に指示を出すと、加賀教官がモニタールームを出ていく。

<選択してください>

A:追いかける

サトコ
「あ‥教官、待ってください!」

加賀
お前は報告書作成に戻れ

サトコ
「でも、さっき東雲教官の‥」

加賀
他言無用だ

言葉少なにそう言って、教官が私に背を向ける。

B:どこに行くんですか?

サトコ
「教官、どこに行くんですか?」

加賀
いちいち駒に許可を得る必要があるのか?

サトコ
「そうじゃないですけど、もしかしてまた単独の捜査かなって」

加賀
だったらなんだ?

C:歩を手伝う

サトコ
「東雲教官、私、何かお手伝いします」


いいよ。オレ一人でも事足りてるし

加賀
歩の仕事でお前が役に立つことは何もない

サトコ
「でも‥」

(教官が狙われたあの事件、浜口さんが主犯じゃないとしたら)
(誰が裏で操ってるのか、どうしても気になるよ‥)

結局その日、教官は学校に戻ってこなかった。

【屋上】

サトコ
「今日もここにはいない、か‥」

数日後、屋上に来てみたけど、加賀教官の姿はなかった。

(モニタールームで東雲教官と3人で話したあの日以来、教官、学校にきてない)
(きっと一人で、浜口さんに拳銃を流した犯人の行方を追ってるんだろうけど)

サトコ
「でも教官、あの時、様子がおかしかったような気がする‥」

(一人でじっと考え込んでたし、東雲教官に指示してすぐモニタールームからいなくなった)
(あのあとすぐ、捜査だって言って学校から出て行って‥)

サトコ
「もしかして、何か思いついたことがあったとか‥?」

鳴子
「いたー!サトコ、大変!大変大変!」

その声に振り返ると、鳴子と千葉さんが血相を変えてこちらに走ってくる。

サトコ
「そんなに急いでどうしたの?」

千葉
「やっぱりまだ知らないんだな」
「‥加賀教官が、拘束されたって‥!」

サトコ
「‥え?」

鳴子
「警察の内部情報を外部や犯罪者たちにリークしてきた疑いだって」
「ねえサトコ、どういうこと!?」

(どういうことなのか聞きたいのは私の方だよ‥教官、いったい何があったの‥!?)



【モニタールーム】

急いで東雲教官のところへ向かうが不在だった。
途中で会った颯馬教官と一緒に、緊急の捜査会議が開かれるというモニタールームに飛び込む。

後藤
‥来たか

サトコ
「後藤教官‥加賀教官が」

松田
「遅いぞ」

颯馬
すみません。加賀さんの専任補佐官の氷川さんも会議に同席します

松田
「最初から参加していた訓練生だな。許可する」

モニタールームには松田理事官と後藤教官、それに黒澤さんがいた。

松田
「おおむね、いま話した通りだ。加賀の容疑は、警察庁の内部情報のリーク」
「つまり外部の人間に、事件に関する重要機密を漏らした疑いがある」

(教官がそんなことするなんてあり得ない!)
(それに外部情報が洩れてるっていうのは、この前東雲教官が探り当てたことなのに)

松田
「加賀は外部にそれを漏らすかわりに、利益を得ていたと考えられる」
「奴が以前から他の者に比べて大きな手柄をあげることが多かったのは、これに起因する」

サトコ
「待ってください!教官はちゃんと自分の足で‥」

松田
「ごく一部の人間しか知らない情報を、奴は良く入手していた」
「それは、こちらの情報を流す見返りに得ていたものと考えていいだろう」

(違う!教官はやり方は強引だったかもしれないけど、独自ルートを持っていた)
(それに以前、敵に捕まった捜査員を助ける見返りに、相手を味方につけたり‥)

サトコ
「お願いします、教官がそんなことをしてたなんて、何かの間違いです!」
「もう一度調べ直してください!」

松田
「その必要はない」
「奴は、5年前に仲間を殺して手柄を立てたという噂がある」

サトコ
「あれは‥!」

松田
「あれが何よりの証拠だ。実際に仲間が死んでるんだからな」

<選択してください>

A:あれはただの噂です

サトコ
「あれはただの噂です!信じる値もないような‥」

松田
「当時を知らないお前が、なぜそう言い切れる?」

サトコ
「それは‥!」

(確かに私はその当時のことを何も知らないけど‥教官のこと誰よりも信じてる!)

B:部下を信じてないの?

サトコ
「失礼ですが、理事官は部下を信用されてないんですか!?」

松田
「訓練生が生意気な口をきくものだな。加賀の教育がどれほどのものか知れる」
「やはり『仲間殺し』の噂は間違いないようだな」

(どうしてただの噂を事実だなんて決めつけるの!?)
(教官が自白したわけでもない、他の人からの供述だって取ったわけじゃないのに!)

C:後藤と颯馬を見る

助けを求めるように、後藤教官と颯馬教官を振り返る。
でも2人とも、どうしようもないというように小さく首を振った。

黒澤
こればっかりはね‥

2人のかわりに、黒澤さんがつぶやくように言った。

松田
「とにかく、この件はすべて加賀の‥‥」

サトコ
「そんなのおかしい‥証拠がないのに教官を犯人に仕立て上げてるのと同じです!」

松田
「なんだと‥?」

颯馬
氷川さん、そこまで

サトコ
「颯馬教官‥」

颯馬
それ以上、上層部に反抗したら、あなたの刑事としての可能性が潰える
それは加賀さんも望んでいないはずです

サトコ
「‥‥っ!」

颯馬教官に耳打ちされて、何も言えなくなる。

(でもこれじゃ、警察の不祥事を全部教官になすりつけてるのと同じだよ)

やがて松田理事官が退室すると、颯馬教官が深くため息をついた。

黒澤
サトコさん、グッジョブです!
言いたいこと言ってくれて、スカッとしましたよ~

サトコ
「だって‥加賀教官が情報流すなんて、そんなことあり得ません」

颯馬
もちろん、私たちもそう思っています
でも‥正直今回は、加賀さんを白と証明するのは難しい

サトコ
「どうしてですか!?」

颯馬
加賀さんが強引な捜査をしていたのは事実です
報告書を出していないこともあれば、ごまかしている個所もある

サトコ
「それは確かに‥でも‥!」

颯馬
今回のことに関して言えば、確かに加賀さんを黒と断定はできない
でも‥白だと証明するのは、もっと難しい

後藤
‥こういう時は、今まで積み重ねてきたものを重視する

サトコ
「今までの積み重ね‥?」

後藤
加賀さんを信じてるというのは、俺たちの気持ちの問題だ
組織とのことを考えれば、間違いなく黒にされる

サトコ
「そんな‥」

絶望的な気持ちになった時、ハッと気づいた。

サトコ
「石神教官なら‥加賀教官の無実を晴らしてくれるじゃ」

後藤
石神さんは、別件の捜査で不在だ

颯馬
向こうも相当時間がかかるでしょうから、いつ戻ってくるかわからない‥
石神さんの援護は期待しない方がいいでしょうね

(じゃあ、本当に八方塞がりなの‥?)
(私が何をしても、何を言ってもどうにもならない‥教官の無実を晴らすこともできないなんて‥)



【屋上】

加賀教官の身柄が拘束されたという一方から、数時間が経過した。

(後藤教官たちの話では、まだ加賀教官は口を割ってないって‥)
(こんな時に、石神教官も東雲教官も不在だなんて)

サトコ
「私には何もできることはない‥わかってるけど、もどかしい‥」

屋上のフェンスに寄りかかってぐっと涙を堪えていると、扉が開いて誰かが歩いてくるのが見えた。

颯馬
サトコさん、ここにいたんですか

サトコ
「颯馬教官、後藤教官‥」

後藤
大丈夫か

サトコ
「すみません‥私よりもお二人の方がずっと辛いのに」

後藤
‥15分だ」

サトコ
「え?」

後藤教官の声に、顔をあげる。

颯馬
加賀さんはまったく口を割ろうとはしない‥取調官にも疲労が見えています
何とか15分だけ、取調官の休憩がてらの時間を貰うことができました

後藤
その15分をお前にやる

サトコ
「それって‥」

(加賀教官の力になれるかもしれない‥)

後藤
可能なら、少しでも加賀さんに有益な情報をもらってこい
俺たちよりも‥お前になら、何か話すかもしれない

サトコ
「‥はい!ありがとうございます!」

(加賀教官が、少しでも私を信じてくれているのなら‥)
(教官のサインを、絶対に見逃したりしない!)

to be continued

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