【玄関】
サトコ
「お邪魔します!」
後藤さんの家にお呼ばれし、せっかくならとお昼を作ることになった。
後藤
「入ってくれ」
リビングのドアを開けると、見慣れた光景が広がっている。
サトコ
「お昼の前に、先に片付け‥にしましょうか」
後藤
「‥‥」
サトコ
「どうかしましたか?」
後藤
「‥いつもと違う」
(いつもと違う?)
サトコ
「何がですか?」
後藤
「いや‥なんでもない。すまないな、散らかっていて」
サトコ
「いえ!ちゃちゃっとやってしまいましょう!」
(なんだったんだろう?)
サトコ
「こんな感じですかね」
後藤
「ああ、助かった」
「いつも悪いな。アンタにはしてもらってばかりだ」
サトコ
「いえ、これも‥カノジョの特権ですから」
後藤
「嬉しくない特権だろう」
後藤さんが笑う。
サトコ
「いいんです。私には充分なので」
「それじゃあ、お昼ご飯作りま‥」
不意に後藤さんの腕が伸びて来て、ギュッと抱きしめられた。
サトコ
「ご、ごと‥」
後藤
「アンタ‥今日、何かつけてるか?」
サトコ
「何かって‥」
後藤
「香水、とか‥」
サトコ
「何もつけてないですけど‥」
後藤
「甘い香りがする」
(甘い香り?)
(寮で使ってるシャンプーは柑橘系だったような‥)
後藤
「アンタが部屋に来た時から‥触れたかった」
サトコ
「!」
ふぅ‥と、耳元で吐かれた吐息が熱い。
サトコ
「あの、香水とか、特に何もしてなくて‥」
後藤
「アンタ、だからか」
サトコ
「ごはんは‥」
後藤
「それよりも‥このままじゃ、ダメか?」
(うぅ‥)
サトコ
「私が断れないって、わかってますよね」
自分の身体に回された腕。
その袖をキュッと掴むと、その瞬間、フッと笑う声が落ちてきた。
後藤
「じゃあ‥もう少しだけ‥」
Happy End