サトコ
「鳴子、ごめん。お願いしていいかな」
鳴子
「いいよいいよ。サトコは早く教官室に行きなよ」
うなずくと、急いで教官室へと走り出した。
【教官室】
アンケートを持って、教官室に駆け込む。
サトコ
「石神教官!アンケート、持ってきました!」
石神
「‥‥‥」
遅くなったせいか、石神教官の鋭い視線が突き刺さる!
(お、怒られる‥!今日のお説教タイムは、何時間!?)
サトコ
「あ、あの‥遅くなってすみませんでした‥!」
石神
「‥はあ」
ふっと視線を逸らすと、石神教官が小さくため息をついた。
石神
「もういいから、それをよこせ」
サトコ
「は、はい」
(怒られない‥!?それに、石神教官がため息をつくなんて珍しいな)
(ちょっと疲れてるみたいだし、もしかして何か大きな事件を抱えてるとか?)
不思議に思いながらもアンケートの束を渡すと、妙に湿度が高い気がして振り返る。
そこには、デスク用の加湿器をふたつも置いた東雲教官がいた。
(‥女子か!)
東雲
「‥何?」
サトコ
「え!?い、いえ‥」
(危なかった‥思わず声に出してツッコミ入れるところだった)
(でも、あれくらいしないと、今年の風邪やインフルエンザには勝てないのかも)
学生たちが次々に倒れる中、教官たちだけは毎日休むことなく出勤している。
(さすがだな‥私も、見習わなきゃ)
教官室を出て行こうとすると、加賀教官のデスクが視界に入った。
そこには、たくさんの栄養ドリンクが所狭しと置かれている。
(こ、これは‥!?)
(石神教官といい、加賀教官といい‥やっぱり捜査で疲れてるのかな)
加賀
「おい、そこのクズ」
サトコ
「は、はい!」
加賀
「これ捨てとけ」
渡されたのは、栄養ドリンクの空き瓶が大量に入ったビニール袋だった。
サトコ
「これ‥加賀教官が一人で飲んだんですか?」
加賀
「テメェにゃ関係ねぇ」
袋を受け取った時、一瞬、加賀教官がフラリとよろめいたように見えた。
サトコ
「教官、大丈夫ですか!?」
加賀
「ああ゛?」
サトコ
「ヒイッ!なんでもないです!」
(いつも通り‥!?だけど確かに今、ちょっとフラついたような)
東雲
「兵吾さん、いい加減に認めたらどうです?」
「だから、オレの加湿器ひとつ貸してあげるって言ったのに」
加賀
「必要ねぇ」
東雲
「でもそれ絶対、か‥」
加賀
「余計なこと口走る暇があんなら、ガキのお守りでもしてろ」
東雲
「ほーんと、素直じゃないんだから」
ふたりの会話を聞きながら、ゴミを捨てるために教官室を出る。
(でも、なんだろう‥今のふたりの会話‥)
(東雲教官、何か言いかけてたみたいだけど)
首を傾げながらドアを開けたとき、ドンと誰かにぶつかった。
サトコ
「す、すみません!」
颯馬
「サトコさんでしたか」
顔を上げると、颯馬教官が立っていた。
颯馬
「ちゃんと前を見て歩いてくださいね」
サトコ
「は、はい。本当にすみません」
颯馬教官が、優しくぽんぽんと頭を撫でてくれる。
でもその温もりを感じたとき、何か違和感を感じた。
(颯馬教官の手、少し熱い‥?)
(そういえば、声もいつもより低かった‥もしかして、風邪でも引いたのかな)
颯馬
「花粉症ですよ」
サトコ
「!?」
颯馬
「心配してくれたんですか?」
サトコ
「あ、あのっ‥失礼しました!」
(また颯馬教官に心読まれた‥!)
慌てて、頭を下げて教官室を後にした。
【教官室】
その日の放課後。
(さて、今日もカレのお手伝い、頑張らなきゃ)
サトコ
「失礼します。あの‥」
ドアを開けたものの、そこにカレの姿がない。
(ここにいると思ったのに‥どこに行っちゃったんだろう?)
私が探しているのは‥
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