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放課後 後藤1話

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【教場】

午前中の講義終了後。

私はお弁当を食べて午後の講義の準備を手伝ってから、教場に戻ってくる。

鳴子

「なかなか難しいよね~」

千葉

「いざ改めて考えるとな」

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(鳴子と千葉さんが何か考えるような顔をして話してる‥)

サトコ

「何の話?」

鳴子

「あ、サトコ」

「今ね、自主勉強するなら、どこ?って話をしてたの」

千葉

「放課後、自習しようと思っても、ついぼんやりしちゃうよなぁって話になってさ」

鳴子

「集中できる場所とか、気分転換になる場所ってないかなって」

サトコ

「なるほど‥」

鳴子

「鳴子がお気に入りの場所って、どこ?」

サトコ

「お気に入りの場所ってわけじゃないけど‥」

「自主勉強するのは自分の部屋か資料室が多いかなぁ」

鳴子

「やっぱり、その辺が妥当だよね~」

「カフェでタブレットPCとか開いて勉強って憧れるけどね」

サトコ

「うんうん」

千葉

「ノマドってヤツか~」

サトコ

「だけど、私たちの仕事は外で資料広げられるものでもないし‥」

鳴子

「そう、そこが一番の問題で‥」

千葉

「ま、限られた場所で勉強するしかないんだよな」

「たまに気分転換で場所を変えるのはいいかもしれないけど」

千葉さんの言葉に、私と鳴子はコクコクと頷いた。

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【カフェテラス】

その日の放課後。

昼間の話題に触発され、私はカフェテラスで自主勉強をしていた。

???

「珍しいな。ここで勉強してるの」

(この声は‥)

声を掛けられて顔を上げると、スーツ姿の後藤さんが立っていた。

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サトコ

「たまには環境を変えてみたくて」

後藤

それで集中していたのか。だが、もうこんな時間だ

サトコ

「わ、いつの間に!」

時計を見ると20時を過ぎていて、カフェテラスにいるのは私だけだった。

サトコ

「そういえば、さっき見回りの人が来てたような‥」

後藤

頑張るのはいいが、メリハリも大事だ

遅いから、もう部屋に戻れ

サトコ

「はい!」

テーブルを片付けようとすると、ペンケースに手が当たってしまった。

サトコ

「あっ‥」

ペンケースが床に落ちた拍子にペンが飛び出て散らばってしまう。

サトコ

「すみません!」

後藤

そそっかしいのは相変わらずだな

苦笑した後藤さんが一緒にペンを拾ってくれる。

後藤

随分といろんな種類のペンを持ってるんだな

サトコ

「そうですか?シャープペンにボールペン、蛍光ペン‥」

「学生時代の頃よりは本数減らしてるんですけど」

テーブルの下に入ってしまったペンを取ろうとするが、微妙に手が届かない。

サトコ

「‥っと」

後藤

俺が取る

私の隣で後藤さんが手を伸ばす。

伏し目がちになったその横顔に思わず目を奪われた。

(カッコイイ‥)

後藤

どうした?

前を向いたままの後藤さんに尋ねられ、視線に気づかれていることがわかる。

サトコ

「い、いえ‥!届くかなと思っただけで‥」

後藤

取れた

蛍光ペンを取った後藤さんが手渡してくれる。

サトコ

「ありがとうございます。手の長さ、こんなに違うんですね」

後藤

手の大きさも違うからな

身体を起こした後藤さんが私の手を取って合わせてみせる。

その瞬間、カフェテラスの電気が消えた。

サトコ

「わっ」

後藤

消灯時間になったみたいだな

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驚く私とは違い、後藤さんは平然とした顔をしている。

すると触れていた手にギュッと力が込められて、私はそちらに意識を戻した。

サトコ

「あの、ペンは‥」

後藤

もう全部集まったんじゃないか?

サトコ

「どうでしょう。数えてみないと‥」

後藤

あとで一緒に数えよう

手を合わせたまま指を絡めるようにして引き寄せられる。

後藤さんの胸に倒れ込むようなかたちになり、鼓動が一気に駆け足になった。

サトコ

「誰かが来たら‥」

後藤

見回り、もう来たんだろ

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サトコ

「そうですけど‥」

後藤

なら、もう誰も来ない

繋いでいた手がゆっくりと離される。

頬に移った後藤さんの手が優しく私の顔を持ち上げた。

後藤

‥1回だけ

サトコ

「本当ですか?」

後藤

ああ

耳元でくすぐるような声で囁かれると断れるはずもない。

目を閉じると、唇がそっと重なった。

サトコ

「ん‥」

後藤

‥‥‥

後藤さんの腕が腰に回る。

二人とも床に座るような体勢だったために、

そのまま後藤さんの膝に乗るようなかたちになってしまった。

サトコ

「‥っ」

角度を変える度に深くなる口づけ。

息継ぎをする間もなく、そのシャツをつかむと、やっと解放された。

サトコ

「後藤さ‥」

(学校でこんなキスするなんて‥)

後藤

1回は1回だ

サトコ

「‥だから、なかなか離してくれなかったんですか?」

後藤

約束は守っただろ?

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サトコ

「はい‥」

(驚いたけど、後藤さんとこうできるなら‥)

サトコ

「たまには‥場所を変えての勉強もいいものですね」

後藤

そうだな

後藤さんは私の背中をポンポンッとしてくれる。

見慣れたはずのカフェテラスの景色も、後藤さんの腕から見るとまた違って見える気がした。

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