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放課後 石神2話

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【トレーニングルーム】

射撃場から無事に脱出した後。

私はトレーニングルームで筋トレをすることにした。

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(石神さんに追いつくためには、まずはもっと基礎筋力をつけないと!)

そそっかしさを直す訓練は簡単にはできないけれど、体を鍛えることはできる。

(筋トレをすることで集中力を鍛えることもできるかもしれないし)

基礎メニューを一通りこなし、いつもより重いダンベルに挑戦してみたりする。

サトコ

「ふぅ‥一気にやりすぎても筋肉を傷めるだけか‥」

気持ち的にはもう少し頑張りたいけれど、休憩するためにベンチに座る。

(あれ?タオルどこに置いたっけ‥)

汗を拭うタオルを探していると、上からふわっとタオルが降ってきた。

石神

探し物はコレか?

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サトコ

「石神さん!」

頭に乗せられたタオルを手に顔を上げると、すぐ後ろに石神さんが立っている。

サトコ

「ど、どうしてここに‥!」

石神

見回っていたら、まだ電気が点いているのが目に入ったんでな

サトコ

「見回り‥」

石神

時間も忘れて筋トレか?

時計を見ると、もうすぐ23時を過ぎようとしている。

サトコ

「すみません。もうこんな時間だとは思わなくて‥」

(いくらなんでも遅くまで残りすぎちゃった)

サトコ

「すぐに帰り支度をします」

まずはタオルで顔を拭こうとすると、石神さんがタオルを手に優しく拭ってくれる。

サトコ

「じ、自分でできますから‥」

石神

その震えた手でか?

小さく笑う石神さんに、私は自分の手を見る。

石神さんの言葉通り、私の手はかすかに震えていた。

サトコ

「いつもより重いダンベルに挑戦したせいかな‥」

石神

大人しくしていろ

石神さんの手が頬から髪、首筋へとタオルを運んでくれる。

(く、くすぐったい!)

少しぎこちない手が恥ずかしくも嬉しい。

石神

まあ、こんなところだろう

サトコ

「ありがとうございました。じゃ、これで‥」

石神

その前に、これを飲め

私の前に差し出されたのはスポーツドリンクのペットボトル。

石神

水分補給も重要だ

サトコ

「あ‥そう言われれば、すごく喉が渇いてる‥ありがとうございます!」

(わざわざ買ってきてくれたのかな?)

ペットボトルはまだ冷たく、その感触も心地いい。

さっそくフタを開けようとすると、するっと手が滑ってしまった。

サトコ

「あれ?」

もう一度開けようと手に力を入れても上手くいかない。

石神

フッ‥そうだったな

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石神さんは私の手からボトルを取り上げると、代わりに開けてくれた。

石神

これなら飲めるだろう

サトコ

「何から何まで、お手数をお掛けします‥」

一口飲むと身体に染み渡るようで、一気に飲んでしまう。

(美味しい‥!)

サトコ

「はぁ‥」

石神

‥‥‥

(ん?)

ペットボトルから口を離すと、石神さんがジッと見つめてきていることに気付く。

サトコ

「どうしたんですか?」

(石神さんも喉渇いたのかな?)

私が尋ねると、石神さんはふっと目を逸らした。

石神

そろそろここも閉めるぞ。消灯時間を過ぎた

サトコ

「はい。石神さんのおかげで回復しました!」

私は勢いよくベンチから立ち上がり、荷物をまとめる。

石神さんは電気のスイッチへと向かった。

石神

消すぞ

サトコ

「はい」

電気が消え、スポーツバッグを手に出口で待つ石神さんの元に急ぐ。

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石神

忘れ物はないか?

サトコ

「ええと‥大丈夫です!」

石神

‥いや、ひとつあったな

サトコ

「石神さんの忘れ物ですか?」

石神

俺とお前の忘れ物だ

サトコ

「え?」

その言葉を理解するよりも早く、石神さんの手が私の肩を押した。

トンッと背中がトレーニングルームの壁についたと思うと、顔を持ち上げられる。

サトコ

「石神さ‥んっ!」

メガネを外した石神さんの顔が近づいてきたと思った時には、口づけられていた。

あまりに突然のことで、私はキスを受け入れることしかできない。

(石神さんが、こんなところでキスするなんて‥)

石神

‥‥‥

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ゆっくりと唇が離され、私たちは暗い中で見つめ合う。

サトコ

「さ、さっきは校内だからって言ってたのに‥」

見つめられるのが恥ずかしくてそう聞くと、石神さんは少しイジワルな笑みを浮かべた。

石神

もう消灯時間を過ぎているから、問題ない

サトコ

「そうなんですか‥?」

石神

業務時間外まで教官ぶるつもりはない

今は任務についているわけでもないしな。お前は俺の部下でもなければ生徒でもない

サトコ

「じゃあ、私は‥」

(恋人って思っていいの?)

さすがに口には出せなくてモゴモゴとしていると、もう一度軽いキスをされる。

石神

それに、さっき言っただろう?

あとで覚えておくように‥と

サトコ

「石神さん‥」

先ほどの言葉通り、石神さんは教官の顔をしていない。

微笑が浮かぶその顔に、私も微笑み返す。

石神

今日の訓練はもう終わり‥だ

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サトコ

「はい‥」

頷くともう一度顔が近づいてきて、目を閉じる。

静かな学校の中。

教官でない石神さんを独り占めするように、私はそのキスに応えた。

Happy  End

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