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誕生日 加賀1話

【寮 自室】

それは11月に入ってすぐのこと。

カレンダーを確認しながら、大事なことに気付く。

(11月7日‥もうすぐ、加賀さんの誕生日だ!)

(クリスマスは、キーケースにしたけど‥誕生日プレゼントは何にしようかな)

サトコ

「加賀さんの好きなものといえば、甘くて柔らかいものだよね‥」

「ケーキ‥大福‥お餅‥お団子‥」

(シフォンケーキなら柔らかいけど、加賀さんが求める柔らかさではない‥)

(加賀さんが好きなのは、もちもちぷにぷにした、しっとりな感じの柔らかさだし)

サトコ

「あ!いっそのこと、お餅にろうそく立てる‥?」

「いや、そんなことしたらアイアンクローを食らうな‥」

「うーん、プレゼントは今まで女の人から色々もらってるだろうし」

(そうだ、こういう時こそ教官たちにリサーチすればいいんだ!)

(よし、明日早速、教官たちに聞いてみようっと)

【教官室】

翌日の放課後、さっそく教官室におじゃました。

颯馬

今までもらって嬉しかったもの?

サトコ

「はい!特に、女性からのプレゼントで感動したものとか」

「今後もらうならどんなものがいいかとか、教えていただけると」

颯馬

後藤は?何かありますか?

後藤

そうですね‥

‥手袋

サトコ

「わあ、この時期にピッタリですね」

石神

筆記具なら相手を選ばないんじゃないか?

サトコ

「ふむふむ、仕事でも使ってもらえていいかもしれません!」

颯馬

寒くなってきましたし‥マフラーなんてどうですか?

(なるほど‥やっぱり男の人に聞くと参考になるな)

サトコ

「ちなみに、東雲教官は」

東雲

なんでそんなことをキミに教えなきゃいけないの

だいたい、キミが聞きたいのって‥

必死に首を振って、東雲教官の言葉をさえぎる。

サトコ

「む、無理に聞こうとは思ってないので‥!」

東雲

へぇ‥そう?

そのニヤニヤ笑いに、ゾクリと震えが走った。

(危ない‥!東雲教官のご機嫌を損ねたら、加賀さんとのこと色々突っ込まれる‥)

(でもとりあえず、参考になりそうなプレゼントは教えてもらえたし)

黒澤

サトコさん!なんでオレには聞いてくれないんですか!?

サトコ

「わっ!?黒澤さん、また学校に来てたんですか!?」

黒澤

オレは、やっぱり好きな子からもらえるモノならなんでも嬉しいです!

東雲

出た

後藤

何しに来たんだ

石神

お前には聞いてない

黒澤

ひどい!でもそれが快感!

東雲

透って、どんどん変態になっていくよね

黒澤

だって、皆さんだってそうでしょう!

結局は、好きな人からのプレゼントが一番うれしいんですよね?

石神

‥‥‥

後藤

‥‥‥

(すごい‥石神教官と後藤教官を同時に照れさせらせるのなんて、黒澤さんくらいしかいない‥)

颯馬

サトコさんも、好きな人へのプレゼントのリサーチですか?

サトコ

「え!?」

黒澤

なるほど、それなら力が入りますよね!

ちなみに、去年渡したであろうキーケースは、プレゼント候補から外れますよね?

サトコ

「な‥!?」

(黒澤さん、なんでそこまで知ってるの‥!?)

(いや、それより‥この流れは非常にまずい!私のカンがそう告げている!)

黒澤

じゃあ、恋するサトコさんのために、皆で考えましょうか!

サトコ

「い、いえ!参考意見は充分聞けましたから‥!」

黒澤

皆さん、意見募集中です!何がいいと思いますか?

黒澤さんは相変わらず、全然私の話を聞いていない。

颯馬

そうですね‥王道ですが、アレはどうでしょう?

黒澤

アレって?

颯馬

『プレゼントは私です』‥っていうアレです

サトコ

「私!?」

黒澤

ああ!裸になってリボンとかつけるヤツですよね?

サトコ

「裸にリボン!?」

東雲

キモ

後藤

周さん‥さすがにそれは大胆すぎるんじゃ

颯馬

後藤、何を想像してるんですか?

後藤

そ、想像なんて‥

石神

くだらない‥

東雲

そんなおぞましいもの、絶対オレには見せないでよね

サトコ

「み、見せるわけないじゃないですか!」

「っていうか、本当にそれで男の人は喜ぶんでしょうか‥?」

颯馬

もちろんです。好きな女性なら、なおさらのこと

颯馬教官の笑顔に、東雲教官がわざとらしく思い出した顔になる。

東雲

そういえば、もうすぐ兵吾さんの誕生日じゃなかったっけ?

サトコ

「!?」

颯馬

歩、そんな意地悪をしてはかわいそうですよ。黙っているのが優しさです

サトコ

「!!!???」

黒澤

いやー、そうですよね!やっぱり上官の誕生日を祝うのは部下の務めですもんね!

サトコ

「そ、そうなんです!ハ、ハハハ‥」

「それじゃ‥私、失礼します!」

【廊下】

逃げるように教官室のドアを開けた瞬間、目の前に誰かが立ちはだかった。

加賀

‥‥‥

(こ、この鬼のようなオーラは‥!)

加賀

ちょっと来い

サトコ

「ひぃっ!」

腕を引っ張られて、有無を言わさず連れ出された。

【資料室】

誰もいない資料室に押し込まれてドアが閉まると、いつものように壁際に追い詰められた。

加賀

テメェ‥

サトコ

「お、お怒りですか‥?」

加賀

‥‥‥

(ものすごくご立腹だ‥なんで‥!?)

(というか、またサプライズにできなくなっちゃったんじゃ)

年越しの時も、石神教官たちにサプライズの話をしているのを、

当の加賀さんに聞かれて、すべて無駄になってしまったことがある。

(あの時は『成功すると言いな、サプライズ』って意地悪に言われたけど)

加賀

まさか、真に受けてんじゃねぇだろうな

サトコ

「は、はい‥?」

加賀

裸リボンだ

サトコ

「!!!」

(や、やっぱり聞かれてた‥!)

(しかも、真に受けるな、ってことは‥あれ、やっぱり嘘だったんだ!)

サトコ

「危うく、颯馬教官に騙されるところでした‥」

加賀

テメェは単純すぎる

サトコ

「あの‥それじゃ、加賀さんは誕生日に何をもらったら嬉しいですか?」

加賀

テメェで考えろ

サトコ

「ですよね‥」

予想通りの答えに、がっくりと肩を落とす。

サトコ

「じゃあせめて‥11月7日は、一緒に過ごせたら嬉しいなーなんて‥」

加賀

‥‥‥

サトコ

「ご、ご予定がなければ、の話ですが‥!」

加賀

‥ねぇ

サトコ

「はい‥?」

加賀

予定なんざねぇ

(それって、つまり‥)

サトコ

「あの‥7日は空けておいていただけると、そういう‥」

加賀

そう思いたきゃ勝手にしろ

その言葉は、加賀さんにとって了承の返事だった。

(よかった‥!完全にサプライズは無理だけど、プレゼントはまだ決めてないし)

(それにしても、プレゼントは何にしようかな‥教官たちの話を参考にして)

加賀

余計のもんはいらねぇ

サトコ

「うっ‥で、でもせっかくの誕生日じゃないですか」

加賀

‥もし、間違ったもんをよこしやがったら、奴隷に格下げだ

サトコ

「奴隷!?それ、付き合う前どころか、入学した頃の称号ですよ!?」

加賀

称号じゃねぇだろ

サトコ

「汚名ですね‥」

加賀

7日は、学校は休みだな

サトコ

「あ、はい、そうですね。土曜日ですから」

加賀

なら、家に来い

サトコ

「いいんですか?お邪魔します!」

(もしかして、加賀さんも一緒に過ごしたいって思ってくれてた‥?)

(よし、その日までに加賀さんが喜んでくれてるものをしっかり考えなきゃ!)

【教場】

加賀さんの誕生日の、数日前。

(まだプレゼントが決まらないんだよね‥)

(加賀さんが喜びそうなものって言ったら‥うーん)

成田

「氷川、私の講義中にぼんやりするとは偉くなったものだな?」

サトコ

「ハッ!?すみません!」

成田

「まったく‥これでは、11月7日が思いやられる」

サトコ

「じゅ、11月7日‥?」

(それって、加賀さんの誕生日‥)

成田

「いいか。11月7日は朝から夜まで、特別訓練講習があるからな」

「訓練生は全員、強制参加だ。覚えておくように」

サトコ

「特別訓練講習‥!?」

鳴子

「うわあ‥やるかもしれないって聞いてたけど、本当にあるんだ‥」

千葉

「ものすごく厳しいらしいよね‥しかも丸1日なんて、気が重いな」

サトコ

「そ、そんな‥」

(まさか加賀さんの誕生日に、そんな講習が入るなんて‥!)

(加賀さんと約束してたのに、どうしよう‥?)

【個別教官室】

加賀

特別訓練講習?

サトコ

「はい‥成田教官にそう言われて」

加賀

そういや、そんなのもあったな

サトコ

「全員、強制参加だそうです‥」

加賀

ああ。訓練が終わった後は何もする気力がなくなるほど厳しい講習だ

サトコ

「そ、そんなに過酷なんですか‥?」

「加賀さんの誕生日‥ずっと、一緒にいられると思ったのに」

加賀

‥‥‥

落ち込んでいると、ガッと顔面を掴まれた!

サトコ

「またアイアンクロー!」

加賀

しけたツラしてんじゃねぇ

訓練が優先だ。しっかりやって来い

サトコ

「加賀さん‥」

(加賀さんは、私と一緒にいられなくても平気なのかな‥)

(ちょっと寂しいけど‥でも、一人前の公安刑事になることが優先だ!)

サトコ

「わかりました。加賀さんの専任補佐官として、頑張ってきます!」

加賀

ああ

加賀さんの笑顔に、少しだけ前向きになれた現金な私だった。

to  be  continued

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