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総選挙2016公約達成 石神2話

【駐車場】

サトコ

「あ、あの‥!」

婚活パーティーで出会った朝田さんに手を引っ張られ、思わずその手を引き返す。

朝田

「ごめん、ちょっと強引だったかな」

「‥でも、もう少し君と話したいと思ってさ」

振り返った朝田さんは、相変わらず爽やかに微笑んでいる。

朝田

「はい、どうぞ」

連れて来られたのはパーティー会場の駐車場。

朝田さんは、車の助手席のドアを開けてエスコートしてくれる。

(うーん‥逃げることもできるけど‥)

下心が見え見えというわけでもなく、本当に厚意で言ってくれてるのかもしれない。

(なるべく穏便に済ませたいし、どう断るのが一番かな‥)

考えていたその時、突然誰かがガッと車のドアを押さえつけた。

(なっ‥何!?)

石神

悪いが、先着順なので

サトコ

「い‥」

危うく名前を呼びそうになり、慌てて言葉を飲み込む。

朝田

「あなたは‥」

会場で一番人気だった石神さんを、朝田さんも認識しているらしい。

そんな石神さんの登場に、とても驚いている様子だ。

朝田

「先着順ってことは、つまり‥」

石神

彼女はもう予約済みということです

石神さんは、グッと私の腕を掴んだ。

(い、石神さんもかなり強引‥!)

驚きの中にも嬉しさを感じる。

そんな私の様子に気付いたのか、朝田さんはフッと肩の力を抜いた。

朝田

「‥そういうことなら仕方ないかな」

全てを察したように、大人の態度で車のドアを閉める朝田さん。

朝田

「残念、どうやら君とは縁がなかったようだ。今夜はおとなしく1人で帰るよ」

最後まで爽やかな笑みを湛え、朝田さんは1人車に乗り込んで帰っていった。

走り去る車を、私はホッとしながら見送る。

(悪い人じゃなさそうだったけど‥)

石神さんが来てくれなかったら、断りきれなかったかもしれない。

(来てくれてよかった‥)

石神

何ボーっとしてる。帰るぞ

サトコ

「は、はい‥!」

掴まれた腕を引かれ、ちょうど通りかかったタクシーに乗せられた。

【タクシー】

タクシーに乗るも、石神さんはずっと無言のまま窓の外を見ている。

(怒ってるのかな‥?石神さん、誤解してるのかも‥)

サトコ

「石神さん、違いますからね‥!」

石神

何がだ

サトコ

「私、朝田さんについて行こうとしたつもりなんかなくて」

石神

‥心配するのはそこか?

(え‥)

誤解されたくなくて訴えたのに、石神さんは怖いくらい冷静な態度だ。

石神

見当違いも甚だしいな

言いながら、スッと手を伸ばしてくる。

サトコ

「‥!」

石神さんの指先がわずかに耳に触れ、ビクッと肩を震わせた。

でもその指は、私の耳に入ったインカムを引き抜いただけだった。

石神

今日の任務は終わりだ。これは回収する

(‥またやられちゃった!)

伸びてくる手についドキッとしてしまった自分が情けない。

パーティー中にも、同じ手でまんまと踊らされている。

サトコ

「言ってくれたら自分で取りますから!」

悔しくて言い放つと、石神さんは余裕の笑みを浮かべた。

石神

わざとに決まっているだろう

お前のその顔が見たいからな

(なっ‥)

<選択してください>

A: からかわないでください!

サトコ

「もう‥からかわないでください!」

石神

悪いが、俺の唯一の楽しみを自粛する気はない

サトコ

「楽しみって‥」

石神

諦めろ

(はい‥って言うしかなさそう‥)

B: 石神さんには敵いません

サトコ

「‥石神さんには敵いません」

石神

今頃気付いたか?

サトコ

「もう‥本当に意地悪なんだから」

石神

その顔も見たかった顔だ

(またそんなこと言って‥)

C: もう見せません‥

サトコ

「もう見せません‥」

石神

それは残念だな

サトコ

「どんな顔かもわからないですけど‥」

石神

その困ったような顔のことだ

(そうなんだ‥って、結局見せちゃってるし)

一枚も二枚も上手の石神さんに、私は降参するしかない。

(ていうか‥、あれ?このタクシー、どこに向かってるの?)

ふと見た車窓から景色に、違和感を覚えた。

(学校の方向じゃないよね‥?)

サトコ

「あの、学校に戻らないんですか‥?」

石神

戻りたいのか?

サトコ

「そういうわけじゃないですけど‥」

(でも、寮に帰るにしても方向が違うし‥)

サトコ

「どこかに寄るんですか?」

石神

‥恋人同士に、まっすぐ帰らない理由が必要か?

サトコ

「‥!!い‥いえ‥」

妖しくも強い視線に捉えられ、私はそれ以上何も言えなくなった。

【ホテル】

タクシーのついた先は、都心の一流ホテル。

石神

入れ

最上階の部屋のドアにカードキーを差し、私を促す石神さん。

【部屋】

言われるまま部屋に入ると、目の前に夜空が見えた。

(すごい‥)

大きな窓までまっすぐに進むと、そこには東京の夜景が広がっている。

サトコ

「きれい‥」

美しい夜景に目を奪われたのも束の間、その窓に映る石神さんの姿に目が行く。

石神

ようやく一息つける‥

小さなため息と共に、ネクタイを緩める石神さん。

その一連の仕草がとても絵になっていて、思わずドキッとした。

(カッコイイな‥)

石神

ん?

私の視線に気づき、石神さんがチラリとこちらを見た。

サトコ

「な、何でもないです‥」

慌てて窓の外に視線を戻す。

(なんでだろう、ちっとも夜景が入ってこないよ‥)

ドキドキと騒ぐ鼓動に邪魔され、綺麗な夜景も心に響いてこない。

その動揺を隠すかのように、私は更に夜景に目を向ける。

石神

そんなに面白いか?よく飽きないな

(え‥)

私の隣に立った石神さんが、窓に片手をついた。

(わ、近い‥)

その距離の近さに、再び鼓動が跳ね上がる。

私の動揺に気付いているのかいないのか、石神さんは何食わぬ顔で夜景を見下ろしている。

(こ、こんなんじゃ、ますます夜景なんて目に入らない‥)

ひとりドキドキと鼓動を速め、なんだか息苦しくなってくる。

サトコ

「石神さんはずるいです‥」

石神

ずるい?

サトコ

「だって、ドキドキするのはいつも私だけ‥」

思わず本音をこぼした時だった‥

サトコ

「‥っ!」

石神さんがもう片方の手も窓につき、その腕の中にすっぽりと囲まれた。

(い、石神さん‥?)

窓に背を押し付けられるようにして、じりじりと迫られる。

両側は腕に阻まれ逃げ場がなく、出窓の枠に座るような格好になってしまう。

石神

‥そうか、お前だけだと思うのか

(え‥?)

目の前に迫った石神さんを見上げたその時‥

サトコ

「‥っ!」

窓に押し付けられた状態で、強引にキスされる。

(んっ‥きゅ、急にどうしたの!?)

いつになく強引で情熱的なキスに、私は戸惑いを隠せない。

(石神さんが、こんなキスをするなんて‥)

甘く激しいキスは、どんどん深くなっていく。

(もうダメ‥足が震えてきちゃう‥)

のけぞるような格好で、必死に石神さんのキスを受け止めた。

石神

これで分かっただろう、お前だけじゃないってことを

(‥なんのことだっけ‥‥)

突然の激しいキスに、まだ頭の芯がぼんやりしている。

(あ‥ドキドキしてるのは、私だけじゃないってこと?)

石神

もう少し分からせてやる必要がありそうだな

サトコ

「え、あ、んっ‥!」

再び唇を塞がれ、今度は腰をグッと引き寄せられる。

思わず石神さんのシャツを掴み、もう片方の手を背中に回す。

(今日の石神さん、本当にいつもと違う‥)

荒々しいほどの激しいキスに、戸惑いながらも溺れていく。

石神

‥邪魔だな

一瞬唇が離れ、石神さんはもどかしそうに眼鏡を外した。

石神

‥‥‥

眼鏡を通さない瞳で見つめられ、私の心臓は更にドキドキと早鐘を打つ。

視線を絡めたまま、ゆっくりと近づいていく2人の距離。

そしてまた、そっと触れ合うように唇が重なる。

(石神さん‥)

徐々に深まるキスに、いつしか私も夢中になっていく。

唇だけでは収まらず、首筋にも熱いキスが落とされる。

サトコ

「んん‥」

(こんな窓辺で‥こんなこと‥)

サトコ

「外から誰かに見られてしまいます‥」

石神

こんな高層階、見えると思うか?

(そうだけど‥)

石神

見えるとしたら、相当腕利きのスナイパーくらいだな

サトコ

「あっ‥」

ニヤリと微笑んだ石神さんの熱い唇が、再び容赦なく首筋に押し当てられた。

私の首筋にキスしながら、石神さんはゆっくりと窓から離れていく。

(あ、足がもつれちゃう‥)

上手く歩けずに倒れそうになり、グッと腰を支えられる。

サトコ

「すみま‥」

石神

いいから

(ん、あっ‥!)

強引なキスに言葉を飲み込まれ、そのままベッドへと押し倒された。

でも、まだ唇は離れない。

それどころか、さらに深く熱いキスになっていく。

(石神さん‥)

いつになく激しく求められ、身体が汗ばんでくる。

息も苦しくなり、少しだけ首を傾ける。

その瞬間、私はふと気づく。

(そういえば、部屋の電気つけっぱなし‥!)

天井で輝く豪華なシャンデリアが目に入り、ハッとした。

(窓からは見えないにしても、こんな明るいままじゃ恥ずかしいよ‥)

<選択してください>

A: 「消して」とお願いする

サトコ

「あの‥」

石神

なんだ?

サトコ

「電気‥消してください‥」

唇が離れた一瞬をつき、お願いしてみた。

石神

何のために?

石神さんは、ニヤリと意地悪く笑う。

(分かってるくせに‥)

B: それとなく訴える

サトコ

「ん~‥」

石神

サトコ

「ちょっと眩しくて‥」

唇が離れた一瞬をつき、それとなく訴えた。

石神

そうか、そんなに俺が眩しいか

石神さんは、わざとはぐらかすようにとぼけて微笑む。

(電気を消して欲しいこと、絶対わかってるよね‥)

C: そのまま我慢する

(電気‥消して欲しいけど‥)

タイミングがつかめなくて言い出せない。

(キスは激しくなる一方だし、我慢するしかないかな‥?)

諦めかけたその時、ふと唇が離れた。

石神

何考えてる?

サトコ

「あ、あの‥」

(その目は‥私の言いたいこと分かってる?)

石神

消して欲しいか?

チラリと天井に視線を向け、思わせぶりに聞いてくる。

サトコ

「はい‥」

小さく頷くと、石神さんは唇の端にわずかに笑みを浮かべる。

石神

この方が、お前の顔がよく見える

言いながら、そっと指先で私の頬を撫でる石神さん。

意地悪な言葉とは裏腹な優しい手つきに、背中にゾクリと甘い悪寒が走る。

サトコ

「でも‥」

石神

でも‥?

サトコ

「‥恥ずかしいです」

言わせたい言葉を私の口から聞けて満足なのか、石神さんはフッと柔らかに微笑む。

石神

そうか、それならそうと早く言えばいい

(もう‥最初から分かってたくせに‥)

ベッドサイドに手を伸ばした石神さん。

その身体を、そっと私の上に沈めてきた。

石神

サトコ‥

名前を囁かれた瞬間、スッとシャンデリアの明かりが落ちた。

石神

やはりお前は可愛いな

(え‥?)

深く愛された後、腕枕をされたまま唐突に言われて驚く。

石神

仕草も、声も、話し方も、この髪も、この瞳も‥すべて

(え、ええっ?急にそんな‥どんな顔をすればいいの?)

突然の褒め攻撃に恥ずかしくなり、思わず俯いて目を逸らす。

が、すぐにアゴを掴まれ、ぐっと上を向かされた。

石神

お前は、こんな風に言われたんだろう?

強引に目を合わせられ、その強い視線から逃れられない。

石神

あいつにあれこれ褒められて、嬉しかったか?

(あいつ‥?もしかして‥!)

さっきパーティー会場で、朝田さんがやたら私を褒めてくれたことを思い出す。

(石神さん、インカムを通してあの会話を聞いてた‥!?)

石神

俺はお前と目が合うまで、ただ待ったりはしない

サトコ

「!!」

石神

見つめて欲しければ、自ら見つめさせるまでだ

(やっぱり聞いてたんだ!)

朝田

「やっと合った」

目が合うと、朝田さんははにかむように微笑んだ。

(石神さんってば、あの時の朝田さんに対抗してこんなこと‥)

顎をつかんで強引に視線を合わせてきた石神さんが、急に愛しくなる。

石神

で、どうなんだ?嬉しかったのか?

サトコ

「確かに、褒められたことは単純に嬉しかったです」

石神

‥‥‥

サトコ

「でも、今ほど嬉しくなかったです」

石神

サトコ

「好きな人に褒められてこそ嬉しいし、ドキドキするんです」

「だから私‥今すごくドキドキしています‥」

石神

‥そうか

一瞬だけ少し驚いた顔をした石神さん。

でもその後に見せてくれた微笑みは、今までで一番優しい微笑みな気がする。

石神

お前だけじゃない‥俺も今すごく‥

(あ‥)

顎をつかまれていた手で、そっと頬を包まれた。

大きな手から伝わる温もりが心地よくて、私は静かに目を閉じる。

うっとりしながらも、胸の鼓動はどんどん高まっていく。

(石神さんも今‥これくらいドキドキしてくれてるのかな‥)

そう思った瞬間、甘く柔らかなキスが、そっと唇に落とされた‥

Happy  End

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