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本編① 津軽16話

津軽さんと共に遺伝科学生物物理学研究所への潜入捜査が始まった。
目的は五ノ井博士の確保。
前回と違い会合など人が集まるイベントはないため、潜入は慎重にならざるを得なかった。

津軽
バナナの皮で滑ったりしないでよ

サトコ
「こんなところに落ちてます?」

津軽
子どもがいる施設なんだから、バナ皮くらい落ちてるでしょ

(そうかな···いや、それよりも)

サトコ
「今日はどうして百瀬さんじゃないんですか?」

津軽
モモはちょっと別の用事

(そうかなとは思ったけど···)

サトコ
「じゃあ、どうして私を代わりに?」

津軽
いい匂いだから

サトコ
「え?」

津軽
男って、ほんとクサイよね。汗とか整髪料とか
それに比べて、女の子はいい匂い

サトコ
「ちょ···」

鼻先を寄せてくる津軽さんから慌てて距離を取る。

サトコ
「汗くさいですよ、きっと」

津軽
銭湯のシャンプーの匂い

サトコ
「それを言ったら、津軽さんも同じ匂いじゃないですか」

津軽
ウサちゃんってば、やらしー

サトコ
「何でですか!?」

そんな話をしてる間に研究所の地下、五ノ井博士のラボがあるフロアまでやってきた。

サトコ
「厳重そうなドアが見えてきましたね。セキュリティが厳しそう」

津軽
指紋認証に網膜認証か

サトコ
「どうしますか?パスワード解析で突破できない場合は···」

津軽
どうすればいいと思う?

<選択してください>

必要なデータを取り寄せる

(通常の捜査手順で考えれば···)

サトコ
「必要なデータを取り寄せる···ここに出入りが許可されている研究員の指紋と網膜のデータを」

津軽
それ、どこにあるの?

サトコ
「津軽さん、持ってたりしませんか?」

津軽
そこで俺に頼るわけ?

サトコ
「津軽さんが何も準備してない訳ないですよね?」

津軽
ウサちゃんって結構卑劣な手を使うんだね

サトコ
「卑劣ですか!?」

別の進入口を探す

(ここを通るのが難しいなら···)

サトコ
「別の進入口を探します」

津軽
下調べに寄れば、ここしか出入口はない

サトコ
「じゃあ、ここを突破するしか···あ!」

(津軽さんがこういう聞き方をする時は···)

サトコ
「津軽さん、使える指紋と網膜のデータ持ってますよね?」

津軽
持ってるといいねー

教えてくださいと言う

(津軽さんは上司、こういう質問をされた時は···)

サトコ
「教えてください」

津軽
答えになってない

サトコ
「どうすればいいかわからないから教えてくださいと言ってるんです」

津軽
つまんないなー。世の中、そう簡単にはいかないよ
次はもっと面白い答えを用意しとくんだよ

津軽さんは小型のPCを取り出して、表示させた指紋と網膜データでロックを解除した。

津軽
次はウサちゃんの番だから、君が突破してね

サトコ
「私にできることならやります!」

津軽
···と、さっそく君の出番だ

廊下を順調に進んでいた津軽さんが立ち止まった。
その視線の先にあるのは、先ほどと同じ分厚い厳重な扉。

サトコ
「この扉は···」

津軽
ものすごくデカい南京錠がついてるね

サトコ
「ここの鍵、持ってますか?」

津軽
物理的な鍵は1本も持ってない

サトコ
「じゃあ、本当にこの南京錠は···」

津軽
何とかして

サトコ
「······」

(これは津軽さんに試されてる?)
(ここで突破できなかったら、また捜査から外されるかもしれない)
(馬鹿みたいに頑丈そうな鍵を壊すには···)

サトコ
「この研究所、防音ですよね。しかもかなりの」

津軽
フロア内でも音は完全に遮断されてるって調査書はあるけど

サトコ
「じゃあ、この方法でいきます。しっかり耳塞いでてください!」

私は拳銃を構えると、南京錠に狙いを定める。
そしてーー響く銃声。

(5発全部命中!これなら···)

サトコ
「鍵、壊せました!」

津軽
壊せたのはいいけど、弾全部使っちゃったでしょ

サトコ
「いざという時は警棒で対処します」

津軽
銃に棒っきれで挑むつもり?

サトコ
「他に方法が思いつかなくて···間違ってましたか?」

津軽
いや、間違ってないよ。方法は物理的破壊しかなかった
この状況じゃ使えるのは拳銃だけ。もっと装弾数を増やせばいいのにね
だけど···

津軽さんは自分の拳銃を取り出すと、こちらに差し出した。

津軽
君が丸腰とか怖すぎ

サトコ
「でも、そうしたら津軽さんが丸腰になりますよ!?」

津軽
それでトントンくらいでしょ

サトコ
「トントンって···銃を持った私と丸腰の津軽さんの力が同じってことですか···?」

津軽
まだ俺の方が強いけどね

サトコ
「いやいや、私の実力見誤ってますよ!津軽さんこそ腹パンでよろける優男風なのに!」

津軽
この廊下でお留守番したいの?仕方ないなー

サトコ
「!···ま、間違えました!津軽さんの方が強いです!」

津軽
君、この仕事終わったら、お口のマナー講座に通いなさい

サトコ
「そんな講座、どこに···」

津軽
じゃないとそのうち、お口かがり縫合するよ

サトコ
「···はい」

(そんな講座があるなら津軽さんに通って欲しい···何て言ったら、どうなることやら)

津軽さんとの会話を少し勉強した気になりながら、さらに進んでいく。

サトコ
「このフロア、やけに道が入り組んでますね。消防法とか大丈夫なんですかね」

津軽
防火シャッターは設置されてる

サトコ
「本当だ···デジタル認証に鍵、その上この入り組んだ構造···」
「ここまでするって、すごいですね」

津軽
そりゃ取り扱ものが取り扱うものだからね
外へ流れないように必死なんだろ

(何かあった時、迷わずに戻れるかな)

ここまでの道を思い返して確認しながら歩いていると···
『GONOI』というプレートが掛かった部屋が見えた。

サトコ
「あれが···」

津軽
五ノ井のラボだ。五ノ井の行動パターンの想定は出来てるな?

サトコ
「はい!」

(五ノ井博士はうろたえて固まる可能性が1番高い)
(次に考えられるのは動揺からくる異常行動···)

資料で覚えたことを頭の中で復唱する。

津軽
行くぞ

頷きながらドアに身を寄せ、私は津軽さんの銃を構える。

津軽
3、2、1···

(ゼロ!)

バンッという音と共に扉を蹴破り突入するとーー

五ノ井慧悟
「······」

サトコ
「!」

津軽
······

サトコ
「五ノ井博士!?」

私たちの前にいたのは、イスに縛られ血まみれになった五ノ井博士だった。

to be continued

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