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恋の行方編 颯馬 エピソード3

Episode 10.5
「紳士のギャップ♡」

颯馬
これからも、私の補佐官として···それに、恋人として、そばにいてください

告白しようと意気込んで行ったのに、逆に颯馬教官から告白されたその日。

(教官に誘われて、部屋に行くことになっちゃったけど)
(なんかもう、突然のことに頭がついていかない···)

サトコ
「あ、あの···教官のお家は遠いんですか?」

颯馬
もう少しですよ
ほら、向こうに見えるマンションです

教官が指したのは、遠くからでもよくわかる、綺麗な高級マンションだった。

(あそこが、颯馬教官が住んでるマンション···)
(ううっ···実際に見たら、なんか緊張で頭が混乱してきた···)

颯馬
ふふ···

サトコ
「え?」

颯馬
そんなに緊張しないでください。何も取って食おうと思ってるわけじゃないですから

サトコ
「は、はい···」

颯馬
それにしても、あとで黒澤と歩がうるさそうですけど

その言葉に、さっきみんなに見られてしまったことを思い出す。

サトコ
「私、次、どんな顔をして教官室に行けば···」

颯馬
堂々と、私の恋人として来てください

サトコ
「え!?」

颯馬
ただ一応、表向きには付き合っていることは内緒になってしまいますけどね

(付き合ってるか···私、本当に颯馬教官と恋人同士になれたんだ)
(なんだか、まだ信じられないかも···)

サトコ
「でもやっぱり教官は、石神教官たちといる時は楽しそうですね」

颯馬
そうですか?自分ではあまりわかりませんが···
さっきも言ったように、一緒にいると楽だから『居場所』だと思えるのかもしれませんね

(居場所、か···そういうのっていいな)
(颯馬教官、他の教官たちと一緒の時って、すごくリラックスしてる感じだもんね)

颯馬
そういえば、前に私とサトコさんがいた時に、黒澤が···

颯馬教官の話を聞きながら、なんとなく違和感を覚えた。

(教官って自分のことをいつも『私』って呼んでるけど)
(たまに『オレ』になるよね···あれって無意識なのかな?)

颯馬
サトコさん?疲れましたか?

サトコ
「い、いえ!そんなことないです!」

(颯馬教官が自分のこと『私』って言うの、大人っぽくて素敵だなぁ···)
(でも、『オレ』って呼んでるのもかっこいいかも!普段と違って、ちょっと強引な感じする···)
(ちょっと強引な教官か···)

晴れて教官と付き合うことになった私だけど、もちろん、鳴子たち他の生徒には内緒だった。

(一応、他の教官たちにも言ってないんだよね···みんな気付いてる気もするけど)

颯馬
サトコさん、すみません。せっかくの放課後を、資料整理に付き合わせてしまって

サトコ
「いえ、こういうのも勉強になりますから」

(そういえば、教官と2人きりになるの、久しぶりだな···)
(みんなの前ではカップルらしいことはできないし、教官は毎日忙しいから、デートも無理だし)

サトコ
「今日は、他の教官たちはいないんですね」

颯馬
ええ、みんな捜査や聞き込みで出払ってるんですよ

(はあ···もし、こうして付き合ってる時に、あの同棲生活が始まったら···)
(本当に『おかえりなさい、周介さん』とか言って、夫婦ごっこしたり···)

チラリと颯馬教官を見ると、ちょうどこちらを見ていた教官と目が合った。
その視線が思いがけず真剣で、思わず釘付けになってしまう。

サトコ
「あ、あの···」

颯馬
···サトコ

サトコ
「!」

颯馬
どうしたんですか?そんな驚いた顔をして

サトコ
「だ、だって···」

(今、呼び捨てにした···!?)

慌てる私の方へ、教官がゆっくりと歩いてくる。
本棚に背中がぶつかると伸びてきた教官の手が頬を包み込んだ。

サトコ
「きょ、教官···!ここ、教官室ですよ!」

颯馬
でも、2人きりです
それに···オレは、どこでも構わないんです

『オレ』という言葉に、更に胸が高鳴った。

颯馬
貴女を手に入れられるなら、どこでも···

サトコ
「ま、待ってください···もしかして、黒澤さんとかが見てるかも!」

颯馬
みんな、今日は夜まで帰ってきませんよ
これからは、オレたち2人きりの時間です

頬に添えられた手が、顎から胸元へとなぞるように落ちていく。
そして、その手が私のブラウスのボタンに触れる···

サトコ
「っ···颯馬教官!」

颯馬
···ったんですよ。知ってましたか?
サトコさん?

サトコ
「···えっ?」

ハッと気づくと、颯馬教官が運転席から私を心配そうに覗き込んでくる。

颯馬
大丈夫ですか?車に酔いましたか?

サトコ
「い、いえ!大丈夫です!」

(今、も、ものすごい妄想しちゃってた···!)

あまりの恥ずかしさに、教官の顔が見れなくなってしまった。

部屋にお邪魔すると、手入れの行き届いた盆栽を眺めたりしながら、
教官が淹れてくれたコーヒーを飲み、ソファで寛がせてもらった。

颯馬
···ということがあって、それ以来自粛してるんですよ

サトコ
「そうだったんですか。意外ですね」

颯馬
ああ、そういえばその時オレが···

その言葉に、ハッとなる。
思わず颯馬教官を振り返ると、不思議そうに首を傾げられた。

颯馬
どうかしましたか?

サトコ
「いえ···教官って、普段は『私』なのに、たまに自分のこと『オレ』って言いますよね」

颯馬
え?

気付いていなかったのか、教官がきょとんとする。

(あ、今の顔、かわいい···)

颯馬
そうでしたか?

サトコ
「そうです!『オレ』に切り替わるタイミングを知りたかったんですけど」
「教官が気付いてないなら、あんまり法則性とかないのかな」

颯馬
···もしかして

コーヒーカップをテーブルに置き、颯馬教官がゆっくりと私に顔を近づける。

颯馬
さっき、車の中でぼんやりしてたのは···そのことを考えてたんですか?

サトコ
「あ···」

図星のツッコミに、咄嗟に言葉が出て来ず頬が熱くなる。
私の反応を見て、颯馬教官がくすっと笑った。

颯馬
そんなに、オレのことを考えていてくれたんですね

サトコ
「!?!?」

颯馬
サトコさんのそういうところが好きですよ

肩を抱き寄せられて、唇が耳たぶに触れる。

サトコ
「ひゃっ···!」

颯馬
くすぐったいですか?

サトコ
「は、はいっ···」

颯馬
かわいいな、オレのサトコは

(タ、タメ口!)
(しかも、呼び捨て···!)
(っていうか、教官わざとやってる!?)

ぎゅっと目を閉じると、至近距離で顔を覗き込まれている気配。

颯馬
···サトコ

サトコ
「ず、ずるいです···!」

颯馬
オレのどこが好きか、教えてくれる?

サトコ
「教官!からかわないでくださいっ···」

颯馬
ん?前みたいに『周介さん』って呼んでくれないのかな

サトコ
「っ···」

その後は、颯馬教官が満足するまでからかわれ続けた私だった···

Secret End

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