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恋人書き初め プロローグ



鳴子
「サトコ、あけましておめでとう」

サトコ
「おめでとう。どうだった、旅行は?」

鳴子
「すっごく楽しかった!」
「やっぱり冬はあたたかいのが一番だねー」

サトコ
「まぁ、確かにね」

鳴子
「そういうサトコはどうだったの?」

サトコ
「えっ‥」
「わ、私は‥」

脳裏に浮かんだのは、もちろん『教官』と過ごした年末年始のこと。

(いろいろあったよね。でも‥)

鳴子
「なにニヤけてんの」

サトコ
「!」

鳴子
「白状しなよ。サトコ」

サトコ
「あ、えっと‥アハハ‥」

そう、ことの起こりは冬季休暇前のある日のこと‥



成田
「‥というわけで、幸いなことに今回赤点補修者はいないわけだが」
「冬季休暇だからといってハメを外すなど言語道断!」
「そもそも公安たる者、いついかなるときも‥」

朝礼での成田教官の挨拶を聞きながら、私は手帳を確認する。

(今年の冬季休暇は1日から3日までかぁ)
(とりあえず、久しぶりに実家でのんびりしたいなぁ)

成田
「それから今日の午後の講義だが、武道に変更になった」
「日直は、前もって武道館の準備をするように」

(あ‥今日の日直、私だ)
(じゃあ、今日の昼ごはんは早めに済ませなきゃ)



昼休み。

サトコ
「失礼します」

教官たちに頭を下げて、私は鍵ボックスを確認する。

(鍵を開けたら竹刀の準備だよね。それから‥)

サトコ
「ん?」

(変だな、武道館の鍵がない‥)
(誰かが持ってるのかな)

加賀
何をウロウロしてる、クズ

サトコ
「あ、おつかれさまです」
「武道館の鍵を探しているんですが‥」

加賀
武道館だと?

すると、近くの席にいた石神教官が「ああ」と声を上げる。

石神
すまない、私だ

加賀
珍しいな。お前が武道館の鍵を持ってるとは
朝からその白い身体の鍛錬でもしていたか?

石神
白‥っ!?
‥コホン
あいにく視察者の案内をしていただけだ

加賀
警察庁からのか?‥ご苦労なこった

石神
そう思うならたまには代わってくれ

加賀
俺に務まると思うか?

石神
‥‥‥
‥氷川、鍵だ

サトコ
「ありがとうございま‥」

バタン!

黒澤
ええっ、いいじゃないですか!
やりましょうよ、忘年会

後藤
興味がない

黒澤
またまたそんなこと言って~
あ、サトコさん、おつかれさまです!

サトコ
「おつかれさまです。忘年会のお話ですか?」

黒澤
そうなんですよ~
後藤さんってば本当は飲み会とか好きなくせに、興味ないフリして

後藤
フリじゃない。本気だ

黒澤
この黒澤のお目目が黒いうちはごまかせないですよ!
クリスマスだって、浮かれてたクセに~

後藤
!!

黒澤
ところで、サトコさんは来てくれますよね?

サトコ
「えっ、私ですか?」

黒澤
はい!今のところ、30日にやろうと思ってるんですけど

(30日‥うーん‥)

サトコ
「すみません、今回はちょっと‥」
「私、翌日朝イチの新幹線に乗る予定なので‥」

黒澤
えっ、まさか帰省するんですか?

サトコ
「はい、お正月ですし」

とたんに微妙な空気が流れる。

(あれ‥私、なにかおかしなこと言った?)

怪訝に思いつつも、私は‥

<選択してください>

A: 後藤教官を見た

私は後藤教官を見た。

サトコ
「あの‥」

後藤
ああ、いや‥
そうか、帰るのか

サトコ
「はい‥」

後藤
‥そうか

(えっ、しょんぼりしちゃった!?)

B: 加賀教官を見た

私は加賀教官を見た。

サトコ
「あの‥私、なにかおかしなことを‥」

加賀
このガキが

サトコ
「えっ」

(な、なんで『ガキ』って‥)

C: 石神教官を見た

私は石神教官を見た。

サトコ
「あの‥」

石神
帰省は久しぶりか?

サトコ
「はい!」

石神
では、ご家族も喜ぶだろう
思う存分、親孝行してくるといい

サトコ
「はい!」

すると、再び教官室のドアが開いた。

成田
「おい‥なぜ、こんなところで固まっている」

黒澤
あ、成田さん!どうもご無沙汰してまーす
相変わらず素敵な髪型ですね

成田
「‥‥‥」
「‥褒めても何も出んぞ」

(ってい言う割に、どことなく嬉しがっているような‥)

成田
「ん?‥ここにいたのか、氷川」
「ちょうどいい。このクジを引け」

サトコ
「あ、はい‥」

いきなり差し出された四角い箱から、私はクジを1枚引く。

サトコ
「え‥『あたり』‥?」

成田
「!?」

サトコ
「あの、これは‥」

成田
「ゆゆしき事態だ。まさか女が‥」
「しかも氷川が『あたり』を引くとは」

石神
もしかして寮の居残り当番ですか?

成田
「他になにがある」

サトコ
「あの‥『居残り当番』というのは‥」

石神
実は冬季休暇の間、寮を完全に空っぽにするわけにはいかないとのことで
生徒の中から1人だけ寮に残ってもらうことになった

サトコ
「そ、それが、まさか‥」

石神
お前だ、氷川

(ええっ!?)

放課後。
私は泣く泣く実家に電話する羽目になった。

サトコ
「うん、だから帰れないんだってば」
「休暇の間、ずっと寮で留守番するから」
「うん、うん‥ごめんね、来年は帰れると思うから」
「じゃあ、また‥お父さんにもよろしく」

通話を切るなり、ついついため息がこぼれてしまう。

(せっかく久しぶりに実家に帰れると思ったのに)
(お母さんの作った年越しそば、食べたかったなぁ)

???
「残念だったね」

(えっ?)

東雲
キミ、寮の居残り当番に選ばれたんだって?

サトコ
「あ、はい‥」
「クジであたりを引いてしまって‥」

颯馬
4日間とも貴女が残るんですか?

サトコ
「そうみたいです」

颯馬
それは大変ですね
ですが、これもいい経験になると思いますよ

サトコ
「え‥」

颯馬
きっと、いろいろなことがあるでしょうし
もちろん、それも貴女次第でしょうが

(私次第‥)

サトコ
「そうですよね」
「考えようによっては、これって生徒代表で寮の留守を任されたようなものですよね」

(そうだよ、帰省できないからってがっかりしてる場合じゃないよ!)

サトコ
「わかりました」
「今年の年末年始はしっかりと留守役をつとめさせていただきます!」

そう宣言して、私は‥

<選択してください>

A: 颯馬教官を見た

私は、颯馬教官を見た。

颯馬
‥そうですね。今はそういうことにしておきましょう

サトコ
「『今は』‥?」

颯馬
せっかくの年末年始‥
貴女がどんな経験をするのか楽しみですね

(な‥なんで近づいて‥)
(しかも、笑顔が妙に意味深なんですけど!)

B: 東雲教官を見た

私は、東雲教官を見た。

東雲
うわ、ウザ‥

サトコ
「!?」

颯馬
歩、素が出てますよ

東雲

あー、すみません。つい、うっかり

C: 後ろを振り返った

私は、後ろを振り返った。

ドスンッ!

サトコ
「ふぐっ!?」

難波
あーすまん‥
徹夜明けで避け損ねた‥

サトコ
「そ、そうですか‥おつかれさまです」

難波
ああ‥
ふわあああ‥

(は、背後にいる気配が全然なかったんですけど‥!)
(さすが室長‥)

東雲
ところで忘年会の件、どうします?

颯馬
ああ、黒澤主催のですか?
そうですね。参加しても構いませんが、飲み過ぎには気を付けないと
翌日も仕事ですし

(えっ‥)

サトコ
「颯馬教官、31日も出勤なんですか?」

颯馬
31日だけではなく、ずっと出勤ですよ

サトコ
「じゃあ、冬季休暇は‥」

颯馬
後日改めて取ることになるでしょうね

東雲
言っとくけど、颯馬さんだけじゃないから
オレたち全員そうだから

サトコ
「ええっ!?」

颯馬
そういうわけですので、4日間よろしくお願いしますね

サトコ
「は、はい!」

(やっぱり大変なんだな、教官たちって‥)

その日の夜。

サトコ
「うーん‥」

(ここの戸締り確認は絶対に必要だよね)
(あと、こっちのフロアも意外と死角になりやすいし)

千葉
「おつかれ、氷川」

鳴子
「何書いてるの?」
「『寮の点検計画』‥?」

サトコ
「うん、冬季休暇用にね」
「点検計画を書いて提出しろって、成田教官が」

鳴子
「あー、そう言えばサトコ、クジ当てちゃったんだって?」

千葉
「その‥大変だな。冬季休暇ナシなんだろ?」

サトコ
「うん、でも一応振替休暇はもらえるみたいだし」
「せっかくの居残りだから頑張らないとね」

千葉
「そっか‥」

鳴子
「エラい、サトコ!」
「私、サトコにだけ特別なマカダミアンナッツを買ってくるね!」

千葉
「俺も地元のお土産を買ってくるよ」

サトコ
「ハハッ、ありがと!」
「千葉さんは実家に帰るんだよね?」

千葉
「ああ、両親が『たまには顔を見せろ』ってうるさくてさ」

サトコ
「鳴子はハワイに行くんだっけ?」

鳴子
「まーね」
「これで彼氏との2人旅なら完璧だったんだけど」

千葉
「今回は友達と?」

鳴子
「うん、学生時代のね」
「でも、やっぱり新しい年は好きな人と迎えたいよねー」

(『好きな人』と‥)

サトコ
「あっ!」

(そう言えば、教官たちも『居残り』だったよね)
(じゃあ、もしかしたら『あの人』と一緒に新年を迎える‥なんてことも‥)

千葉
「‥氷川?どうかした?」

鳴子
「なんかいきなり顔がにやけだしたけど‥」

サトコ
「そ、そんなことないって!」

(でも、そっか、うわぁ‥)
(そういうの、ちょっとだけ期待してもいいのかな)

その数日後。

サトコ
「おつかれさまでーす」

寮母
「ああ、氷川さん。小包が届いてるよ」
「はい、これね」

サトコ
「ありがとうございます」

(あ、実家から‥)

サトコ
「うっ‥重‥っ」

寮母
「大丈夫?部屋まで手伝った方がいい?」

サトコ
「い‥いえ、大丈夫です。ありがとうございます」

サトコ
「よいしょ‥っと」

(うう‥小包、重たすぎ‥)
(きっと、またお母さんがいろいろ詰め込んだんだろうなぁ)

痛む腰をさすりつつも、私は小包の箱を開ける。
中に入っていたのは‥

サトコ
「うわぁ、リンゴだらけ‥」

(あ、信州そばも入ってる。年越し用にってことかな)
(こっちの箱は‥干し柿!?しかもこれ、市田柿だ!)

ふと段ボールのフタの裏を見ると、サインペンでメッセージが書いてある。

サトコ
「『体に気を付けて、お仕事頑張ってね 母』‥」
「‥‥‥」

(あ、マズイ‥なんか泣けてきた‥)

サトコ
「‥ダメダメ」

私は慌てて目元を擦ると、改めて段ボール箱の中を確認する。

(そばは保存できるし、干し柿も食べきれるとして‥)
(問題はこの大量のリンゴだよね)

ざっと見ただけでも10個以上はある。
さすがに、これを1人で食べるのは無理だ。

(よし、『あの人』にお裾分けしよう!)
(今日は寮監だから、教官宿泊室にいるはずだよね)

教官宿泊室にいるのは‥

<選択してください>

A: 後藤教官

B: 加賀教官

C: 石神教官

D: 颯馬教官

E: 東雲教官

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