ールームウェアの好みー
【教官室】
黒澤
「こういうのはどうですか？」
難波
「なんだぁ？最近はこういうモコモコしたのが流行ってんのか？」
教官室に入ると、そこにいたのは室長と透だった。
女性向けの雑誌を広げて、ああでもないこうでもないと話している。
（またいるよ···）
連日のように学校に来る透に呆れながら、ふたりの横を通り抜けて自分のデスクに座る。
すると、さっそく透がこれ以上ないほどの笑顔で振り返った。
黒澤
「歩さんはどれがいいですか！？」
東雲
「透、うるさい」
黒澤
「もう！ちゃんと聞いてくださいよ」
「女性が着るルームウェアって言ったら、やっぱりモコモコですよね？」
東雲
「いや、暑苦しいでしょ···」
実はさっきチラリと見えた雑誌の写真には見覚えがある。
あの子に以前、“モコモコ” のルームウェアをあげたことがあるからだ。
一瞬柔らかな素材に包まれた色白なあの子を思い出してしまったが、すぐ頭を切り替える。
（···適当に流そ）
黒澤
「かわいいじゃないですか、モコモコ！」
東雲
「好き嫌いの問題でしょ」
「これからの季節、暑苦しいし」
黒澤
「じゃあ歩さんは、どんなルームウェアがいいんですか？」
東雲
「家ではシャツで寝てる」
黒澤
「歩さんのルームウェアじゃないですよ！好きな人が着ると仮定して！」
難波
「ルームウェアって、寝間着か？」
黒澤
「寝間着···」
難波
「ハハ、石神が意外とこだわりあったりしてな～」
石神
「···機能性が高いのは、しっかりボタンが付いたパジャマでしょう」
石神さんも巻き込まれ、話が変な方向に盛り上がり始める。
黒澤
「あ～もう、じゃあ好きなパジャマでいいですから！」
「みなさん、どんなのが好みですか！？はい、後藤さんから！」
後藤
「妙な話に巻き込むな」
「···似合ってるなら、なんだっていいだろ」
颯馬
「フフ、模範解答ですね」
黒澤
「じゃあ、加賀さんは？」
加賀
「くだらねぇこと聞くんじゃねぇ。裸だ」
黒澤
「ルームウェアって言ってるのに···」
加賀
「どうせ脱がすんだから、何着ても一緒だろうが」
石神
「フッ、野蛮すぎるな。パジャマが一番清楚だろう」
颯馬
「ネグリジェもなかなか清楚ですよ」
「ああ、多少透けてた方がそそられますが」
東雲
「どこが清楚なの···」
黒澤
「やっぱり、モコモコが最強じゃないですか？」
難波
「大きめのＴシャツ１枚で充分だろ」
（大きめのＴシャツ···）
自分のＴシャツを着て困ってるあの子を想像する。
（···すっごいバカっぽい）
うっかり裾から垣間見える白い太ももを想像しかけたところで、黒澤に声をかけられた。
黒澤
「結局、歩さんは何がいいんですか？」
東雲
「···まともな服装」
黒澤
「あ！今、誰かを思い浮かべませんでした？」
東雲
「は？」
黒澤
「歩さんって、特定の人を想像する時、ちょっと顔が引き締まるんですよね～」
「ニヤけるのを必死で抑えてるとか？」
東雲
「···別に」
デスクの上の書類に視線を落とすフリをして、透からの追及を避けた。
Happy End