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デイドリーマー(津軽目線)

サトコ
「おかえりなさい!」

津軽
ただいま

仕事を終えて帰ってくれば、エプロン姿のサトコが駆け寄ってくる。

サトコ
「いつもより早いですね!」

津軽
今日は特別

サトコ
「それって···!」

ぱっと顔を輝かせたサトコを抱き寄せ、その唇を塞ぐ。

サトコ
「んっ···」

津軽
······

いつもより長めのキス。
最初こそ驚いていたものの、すぐに力が抜け身を委ねてくる。

津軽
ご褒美、先にもらっちゃった

サトコ
「ってことは···」

津軽
昇進、決まったよ

サトコ
「やった···!ついにアドサンロードの営業部長ですね!」

津軽
サトコが支えてくれたおかげだよ

サトコ
「お祝いしましょう!ご飯、外に食べに行きますか?」

津軽
いい匂いがする。夕飯、作ってくれてるんでしょ?

サトコ
「冷蔵庫に入れておけば、明日でも大丈夫ですよ」

津軽
俺の1番のご馳走はサトコの手料理
お腹ペコペコ
今夜は、なに?

サトコ
「高臣さんの好きなハンバーグカレーです」

津軽
それ、十分お祝いご飯だよ

サトコの肩を抱きながら、家の中に入る。

(最愛の彼女とも上手くいってて、仕事も順調)
(こんなに幸せでいいのかな)

テーブルの上にはハンバーグカレーとサラダ、それからワインボトルが置かれていた。

津軽
これ、シャトー・ディケムじゃん。婚約のお祝いに司波さんからもらったやつ
ここぞって時に、とっておこうって言ってったのに

サトコ
「今日が、ここぞって時ですよ」
「候補に挙がってた石神さんと加賀さんは、どんな感じでしたか?」

津軽
秀樹くんと兵吾くんの反応ね~
サトコにも見せてあげたかったなあ

津軽
···ってことで、俺がひと足先に出世しちゃって、ごめんね?

石神
営業のスキルという点では、お前が優れているのは認めざるを得ない

加賀
いいボスになるだろうよ

津軽
ありがと

石神
いずれ、俺より上に行くと思っていた

加賀
お前は俺が認める、唯一の野郎だ

後藤
聞きましたよ、津軽さん!おめでとうございます!

津軽
ありがとう、誠二くん

後藤
これからも俺はずっと津軽さんについていきます!

津軽
はははは、皆の期待に応えるために俺ももっと頑張るよ

津軽
ーーーってな感じで、みんな喜んでくれたよ
これでライバル会社の一柳くんにも、一歩リードかな

サトコ
「高臣さんなら、まだまだ上を目指せますよ!」

津軽
もうすぐ最高の妻を迎えるわけだしね?

ハンバーグを食べながら視線を上げると、彼女ははにかんだ顔を見せる。

津軽
今週末、ウチに挨拶に来るでしょ?

サトコ
「はい。そういえば···高臣さんの家族のこと、詳しく聞いたことなかったですね」
「どんな心構えで行けばいいですか?」

津軽
んー、俺の家族、超怖いからな~

サトコ
「えっ」

津軽
ビビらないように?俺が言えるのは、それだけかな

サトコ
「そ、そんなに怖いんですか?ご両親も弟さんも全員!?」

津軽
特に怖いのは、弟のタケル。俺の歴代の彼女、全員タケルに噛みつかれて逃げたから

サトコ
「か、噛みつき?」
「わ、私、ダメですかね···何か弟さんの好物をお持ちして···」

本気で慌てるサトコに笑みが零れた。
彼女はいつだって素直で、俺の言葉も真っ直ぐに受け止める。

(こんないい子を嫌う人間なんていないって)

津軽
ウーソ。父さんも母さんもタケルも絶対気に入るよ
俺が選んだ、大切な子なんだから

サトコ
「もう、騙したんですね!」

津軽
この方が緊張しなくなったでしょ

サトコ
「それはそうですけど···」
「ご家族への挨拶が無事終わったら、銀さんのところにも報告に行かないとですね」

津軽
え···

(銀って···え?あ···?)

サトコ
「それから付添人の話を百瀬さんに···」

(百瀬···モモ···百瀬尊···)

サトコの声が少しずつ遠くなっていく。
そしてなぜか視界が歪んでーー

津軽

(ここは···)

津軽
······
············

(···夢、見てた?)

どんな夢だった?
サトコの家にいて、知った顔が出てきた気がする。
···が、詳しい内容は覚えていない。

(···心臓がバクバクいってる)
(どんな夢、見てたんだ?)

いい夢だったのか、悪い夢だったのか···それすらも曖昧だ。
思い出せないか、ぼんやりと無機質な仮眠室の天井を見上げていると···

百瀬尊
「津軽さん、容疑者確保の連絡が入りました」

ノックと共にモモの声が届いた。
一気に現実に引き戻される。

津軽
さて、お仕事行きますか

百瀬尊
「車の用意しておきます」

津軽
ん。ね、モモ今日ハンバーグカレー食べに行かない?

百瀬尊
「···いいですよ。店、探しておきます」

津軽
お願いね

今夜はハンバーグカレーがいい。
特別な調味料も味付けもいらない···ただのごく普通のハンバーグカレーが無性に食べたかった。

Happy End

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