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でも幸せならいいんです(モモ目線)

課に戻れば、最近1番に目が行くのはーー

津軽
知ってる?脳天のツボって、いろんな身体の不調に効くんだって

サトコ
「私の頭をあご置きにする理由だったら却下ですよ」

津軽
ウサを元気にしようとしてあげてるんじゃん~

百瀬
「······」

津軽さんはアイツの頭にあごを乗せ、覆い被さって遊んでいる。
最近、こんな光景を見ることが増えた。

(津軽さんは、あいつのために死ねる)

あの人が、消えてしまうかもしれないと思った日。
あの人が、誰かのために死ねるのだと知った日。

(こういうのも前進って言うのか···?)

あの人は何度でも、あいつのために命を賭けるだろう。
なら俺は、そうするあの人のために命を賭ける。
連鎖の先に新しいものが加わった···それだけのことーーのはずなのに。

津軽
あ、モモ、おかえり

サトコ
「!」
「は、離れてください!」

津軽
マッサージしてあげてるんだよ
モモにもしてあげよっか?

百瀬
「いえ、いいです」

津軽
俺、上手いよ?ね?ウサ

サトコ
「私が百瀬さんの視線で殺される前に退いてください!」

津軽
モモはそんなことしないよね~?

百瀬
「はあぁ···」

津軽
え、溜息つかれた?

サトコ
「百瀬さん···?」

百瀬
「昼飯行ってきます」

津軽
お昼まだだったんだ?いってらっしゃい

ひらひらと手を振る津軽さんに、目をきょどきょどさせているあいつ。

(あいつのどこがいいんだか···なんつーのは、もう愚問なんだよな)

ひっつき虫のごとく離れない津軽さんから視線を外し、再び課を出た。

三邑会の一件を経て、2人の関係が変わったことは、すぐに分かった。

百瀬
「なにが、あなたのためなら死ねる···だ」

生きてこそだろ。
俺は絶対に死なせたくないのに。
津軽さんにそういう気持ちを抱かせる、あいつがーー

百瀬
「くそっ」

けど、あいつだから津軽さんは誕生日の過ごし方を変えた。
思い知らされる、無力感。

百瀬
「······」

後藤
百瀬?どうかしたのか

前から歩いてきた後藤が苛ついた俺を見て足を止めた。

百瀬
「お前は···」

後藤
ん?

百瀬
「石神さんが、誰かのために死のうとしたら、どうする?」

後藤
それは···
······
俺が石神さんを死なせない
それから···幸せになることを願う

百瀬
「······」
「···だな」

(俺に必要なのも、それだけだ)
(余計なことを考える必要はねぇ)
(誰がいようと、俺が見るのは津軽さんだけだ)

百瀬
「お前、昼飯は?」

後藤
これからだ

百瀬
「なら行こうぜ。ラーメン奢ってやる」

後藤

···ああ

(にしても、本気の恋人か?あの人に···)
(ろくに恋愛なんかしてこなかったのに、上手くいくのか···?)

別の意味で、あの人の心が死ぬことになったら。
その時こそ、視線で殺すどころじゃない。
ーーあのウサギを吊るすまでだ。

Happy End

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