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欲しがりカレシのキスの場所 加賀カレ目線

サトコ
「おはようございます···」

ある朝、俯き加減にサトコがオフィスに入ってきた。

加賀
······

(何を隠してやがる?)

不自然に額辺りに添えられた手に、違和感を覚える。
しばらく見ていると、眉辺りに2枚、ばんそうこうが貼られていることに気付いた。

加賀
······っ

吹き出しそうになるのを、必死に堪える。
ほかの連中も気付いたらしく、サイボーグ派もぶるぶると肩を震わせていた。

黒澤
サトコさーん、その眉、どうしたんですか~?

サトコ
「こっ、これは···!」

黒澤
まさか、両眉を剃り落としたとか!?

(···やめろ)

黒澤
ちょっとだけ!ちょーっとだけ見せてください!
サトコさんの眉毛が無事か、オレが確認しますから!

サトコ
「黒澤さんに確認してもらわなくても、無事なことは私が一番よく知ってますから···!」

(やめろ、黒澤···これ以上そいつに構うんじゃねぇ)
(···笑いを堪え切れなくなったらどうしてくれる)

相変わらず、俺の駄犬はわけのわからねぇことをしでかす。
あのばんそうこうを引っぺがしてやってもいいが、さすがに危険すぎた。

(···笑わねぇ自信がねぇ)
(とりあえず、今は距離を置くか···)

コーヒーカップを持って立ち上がり、サトコの方は見ずに給湯室へ向かった。

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給湯室でコーヒーを淹れていると、背後でドアが開く音がした。

サトコ
「加賀さん···?」

(···何で来やがった)
(そこまでして俺を笑わせてぇのか)

さっきのサトコを思い出すと、また笑いが込み上げてくる。
必死に堪えても、肩が震えるのは止められなかった。

加賀
···こっち見んな

サトコ
「さすがにそれは!ひどいですよ!」

両眉にばんそうこうを貼りながら、サトコが憤慨している。
だが見れば見るほど笑ってしまい、傷つけるつもりはないが悪循環だ。

(そもそも、なんだってこんなことになった···?)
(普通に生きてたら有り得ねぇだろ、両眉を失うなんざ)

剥がしてやろうかと手を伸ばしたが、すばしっこいサトコはさっさと逃げて行ってしまう。

(まあいい。まだ今日は始まったばかりだからな)

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退庁時間を少し過ぎた頃、オフィスへ戻るとちょうど帰ろうとしていたサトコに出くわした。

サトコ
「あの、お先に失礼します···」

加賀
さっさとどけ

サトコ
「はい!すみません!」

サトコが横にずれるその動きを読み、手を伸ばす。
ばんそうこうを剥がした直後、一瞬の間の後、プリン野郎がコーヒーを吹き出した。

石神
ぶほっ···
げほっ、ごほっ

後藤
石神さん、だい、だいじょ···
······っ

堅物コンビが、ふたりそろって肩を震わせていた。
それほどに、サトコの眉が衝撃的だったのだろう。

サトコ
「加賀さん!なんてことを···!」
「ひどい仕打ちですよ、これは···!」

(···確かに、やり過ぎたな)

傷ついているというよりはふてくされている様子のサトコを、ぐっと抱き寄せる。
顔が見えないように胸に顔を押し付け、オフィスを後にした。

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その後、サトコには仮初の眉が戻った。
こうなった理由を聞けば、好きな映画の影響だという。

(ったく、女ってのはなんでこう、無駄が多いんだろうな)

サトコ
「はあ···予定では、今頃仕事も恋も完璧な凛々しい眉になってるはずだったのに」

加賀
眉の形を変えたって、鈍くささは変わんねぇだろ

サトコ
「そうなんですけど、気の持ちようというか」

呆れながら、サトコに鍵を投げてやった。

(テメェといると、いい意味でも悪い意味でも退屈しねぇな)

サトコ
「加賀さんは、どうしてあんなにメイクが上手なんですか···」

飯を食いながら、サトコが何やら面倒なことを聞いてきた。

(顔見りゃ、大体何考えてるかくらいは分かる)
(どうせまたくだらねぇ嫉妬でもしてんだろ)

仕事だと説明すると、ガタッと立ち上がる音がした。

サトコ
「パリコレ···!?つまり、綺麗なモデルさんに囲まれてウハウハ···!?」

加賀
仕事だって言ってんだろ

サトコ
「でもやっぱり、男の人としては悪い気はしないのでは」
「加賀さん、モデルにも絶対モテるし」

(断言か)

呆れながら、野菜が入っていない料理を平らげる。
どうやら、眉を描いてやった礼らしい。

(サラダつける姑息さはいただけねぇが···)

食事が済んでも、サトコはまだ何やらぶつぶつ言っている。

サトコ
「モデルかぁ···スタイルいいし美人だし、眉毛の形もさぞかしいいんだろうなぁ」

加賀
······

(ばんそうこう剥がしたら剥がしたで喚くし、綺麗に描いてやりゃ、今度は嫉妬か)
(女ってのは、つくづく忙しいな)

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その夜、寝室で待っているとようやくサトコが現れた。
だが、なかなかこちらに近づこうとせず、ドアの辺りでウロウロしている。

加賀
まだむくれてんのか

サトコ
「別にそういうわけじゃ···むくれてないわけでもないですけど」

加賀
めんどくせぇな

本を閉じると、覚悟を決めたようにサトコが歩いてくる。
だが今朝のように額に手を添えて、完全に俯いていた。

(さっき散々見ただろうが。今さら隠して何の意味がある)

あろうことか、ベッドに入ってきたサトコはこちらに背を向け横になった。

加賀
テメェ···なんの真似だ

サトコ
「ヒッ···後ろから後頭部を鷲掴みにするのやめてください···!」
「もう···だから今日は帰るって言ったんです」

頑なにこちらを向こうとしないサトコの、小さな声が聞こえてきた。

サトコ
「これ以上、加賀さんにこの眉を見られたくないんです···」

加賀
······

(この駄犬は、学習能力皆無か)
(誰がいつ、顔でテメェを選んだって言った)

分からせてやるため、腕を引いて眉にキスをしてやる。
驚いたように俺を見上げたサトコは、やっぱり手で眉を隠した。

加賀
おい、隠すな

サトコ
「無理です···!それは本当に無理です!」

加賀
クズが。なら、んなもん気にならねぇようにしてやる

羞恥に満ちた表情に煽られて、強引に唇を奪う。
部屋着を脱がせ、肌に唇を這わせた。

サトコ
「か、顔は見ないでくださいね···」

加賀
言ってろ

(眉があろうがなかろうが、テメェ自身が俺を掻き立てるんだろうが)

顔を隠せないよう両手の自由を奪いながら、サトコの身体を攻めていく。
唇を下へと滑らせながら、柔らかい肌の感触を愉しんだ。

サトコ
「ぁっ···ん、兵吾さっ···」

加賀
これなら顔見えなくていいだろ

サトコ
「ダメ···ダメ、ですっ···そこは···」

加賀
見るなっつったりダメっつったり、わがままな駄犬だな

わざと強く吸いついてやれば、サトコの腰がびくりと揺れる。
強引に押さえつけて、更に肌を攻めた。

サトコ
「もっ···兵吾さん···っ」

加賀
喚くな

(俺に隠し事するとは、まだまだ躾が足りねぇか)
(···あいつらに笑われるくらいなら、その前にさっさと白状すりゃいいものを)

笑われる状況を作ったのは自分なのに、矛盾した感情に内心失笑する。

(結局、ただ面白くねぇだけだ。テメェが他の男にいじられんのが)
(普段からこうやって、大人しく腕の中に収まってやがれ)

だがそう思い通りにいかないのがこの女のダメなところでありー-気に入っているところだ。

サトコ
「ぁあ···っ」

加賀
······

腰、太ももへとキスを落とし、次第に甘くなっていくサトコの声に気を良くする。

(どうせテメェは、知らねぇだろうが)

あとで、腰と太ももへのキスの意味を教えてやるのもいいかもしれない。
その時のサトコの顔を想像しながら、その熱に溺れて行った。

Happy End

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