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欲しがりカレシのキスの場所 津軽カレ目線

緊張感溢れる公安課の朝ー-のはずが。
難波室が合流してから、若干緩い気がしている。

(1番の原因は、あの子だと思うけど)

出会った頃は短かった髪が、少し伸びてきた。
そんな些細な変化にも気付いてしまう相手。

津軽
おはよ、ウサちゃん

サトコ
「ひっ!」

津軽
『ひっ』って···

(なに、その対応···俺に声かけられてそんな反応するの君くらいだよ)
(ていうか、なんで俺の顔見ないわけ?)

いつも以上によそよそしいオーラを全開にし、なぜか猫背気味にデスクに張り付いている。

津軽
···なんでこっち向かないの

サトコ
「それはその、つ、津軽さんの顔は良すぎるので、朝から直視するのははばかられるというか···」

津軽
ふーん···

(ほんと隠し事できない子だよね)

津軽
「ねぇ」

サトコ
「!」」

肩に手を置きこちらを向かせると、大きくその目が見開かれた。
そして瞬時に視線を逸らせる。

(間違いない。何か隠してる)

俺の顔も見られないほどの、“ 何か ”。

(何を隠してる?潜入捜査の間は、特別な変化はなかった)
(捜査明けに···)
(ん?何か、いい匂いする)

甘い仄かな香りはウサからしていた。
鼻先が触れるほどに顔を寄せれば、髪も肌もいつもより色艶がいい。

(は?なんで?)

ウサが俺の知らない間に綺麗になったのかと思うと。
無性に腹が立って仕方がなかった。

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緩い空気と朝思ったが、それでも難波室というか、公安学校組。
ウサの変化には気付いていて、ちらちらと気にしているー-特に胸を。

(スーツのボタンがパツパツになるくらい···ジャケットのサイズを落とした?)
(じゃなきゃ胸のサイズが変わった?)
(俺が触った時は、中の中って感じだったし)

出会ってすぐ、互いを知るより早く知った胸のサイズ。
左右微妙に大きさが違うのも愛嬌だと思っていたけど。

(ウサの胸を気にするのは、俺だけでいいんだよ)

いっそのこと適当な理由をつけて、自分のスーツのジャケットをかけてしまおうかと思っていると。

黒澤
公安のエース&ホープ!黒澤参上!

(透くん···)

基本的に便利に使える奴なのだが。

黒澤
ふふ、本当は皆さん、気がそぞろになるくらい気にしてるんですよ
色香に溢れる、今日のサトコさんのことを!

サトコ
「こ、これはっ」

黒澤
今まで隠してたなんて···せめて、オレくらいには真実を···

(どこ見てんだよ)
(···黒澤、マジで邪魔だな)

心の中で舌打ちをしながら、指を小さく鳴らす。

百瀬
「!」

ガタッと席を立ったモモを見て、軽く頷いた。

津軽
ねぇ、君、セクハラって知ってる?

黒澤
つ、つ、つ···つがっ

(目潰ししなかっただけでも、感謝しなよ)

津軽
···百瀬。連れてけ

百瀬
「はい」

黒澤
い、いやーっ!

(とりあえず···しばらく香港にでも飛ばしておくか)

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透くんを撤去したものの、ウサが落ち着かないのは相変わらず。
そして急に育った胸の謎も解けていない。

サトコ
「あ···!」

12時、昼休みになると同時に席を立つ。

(そんなに急いで、どこに行くつもり?)
(誰かと待ち合わせてるとか?)

ひどく急いだ顔で課を出て行こうとしたウサに声をかけたのは誠二くんだった。

津軽

(まさか、誠二くんと密会か!?)
(急激に育った胸の裏には、あの誠実そうな···)
(ムッツリスケベが!)

透くんと同じく香港送りかと席を立つと。

サトコ
「今日はお腹ペコペコでして。はは···っ」

後藤
そうか。そういえば、黒澤を見てないか?

サトコ
「さ、さあ···」

(ん?それだけ?)

どうやら密会の話をしているわけではないようだ。

(じゃあ、どこに行くんだよ···)

津軽
なに食べる?

サトコ
「今日のパスタランチで···」

津軽
俺も同じのにしよ

サトコ
「······」

警察庁を出たところで捕まえたものの。
ウサはそわそわと落ち着かず、やけに時計ばかり気にしている。

(なに気にしてんの?目の前に俺がいるってのに、気もそぞろとか)
(早く席を立ちたいって顔に出すぎ)

ここまで来ると、さすがに本気で面白くない。

津軽
そんなに嫌なわけ?

サトコ
「はい?」

津軽
顔も見ずに話しもせずに速攻で食べ終わりたいくらい、俺と食べるの嫌なんだ?

サトコ
「そ、そんな、まさか···」

津軽
じゃあ、何でそんな急いでるの

サトコ
「······」

言えないということは、やましいということだ。
俺に言えないのは、銀室が“ 恋愛禁止 ”だから···だとしたら。

(いや、あくまで禁止なのは課内の話···待てよ。相手は課の誰かってことも···)
(いやいや、あり得ないだろ。潜入捜査の時は男の影なんてなかったのに、この短期間で?)
(···兵吾くんか!?)

いつもなら、そろそろ口を割ってもいいはずのウサが今日に限っては頑なで。
結局食事が終わっても、なにも掴めないままだった。

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食後、生意気にも俺を撒こうと銀さんの名を叫んだウサ。

(本気で俺を撒けると思ってるなら、1から教育し直しだな)

こそこそと彼女が向かった先は最寄り駅のファッションビル。
待ち合わせかと思いきや、入って行ったのはランジェリーショップだった。

(は?新しい下着買うために、こんなに急いでたって?)
(どうしても今日必要って···どういう···)

津軽
······

(つまり、今着けてるのがデート向きじゃない?)
(慌てて買い替えるのは、今夜···)

津軽
···っ

(誰だよ、相手は!)

ウサの向こうにちらつく男の影に、思い切り近くのゴミ箱を蹴りそうになったが。
音で気付かれるわけにはいかないと、ぐっと堪えた。

津軽
俺を置いてくなんて、随分なことしてくれるね

サトコ
「つ、つつつつ、つがっさっ···!」

(蛇の生殺しはもううんざりだ。白黒はっきりつけてやる)
(ウサに男がいた時には···)

いた時にはー-

(どうするんだ?俺は···)

津軽
もしかしてさ···

聞こうと決めたはずなのに、いざ口にする瞬間はドクッと心臓が脈打った。

津軽
···男でも出来た?

サトコ
「はぁ!?」

津軽
急に胸が大きくなったりして、そんなの揉む相手が···

サトコ
「デ、デリカシー···!!」

津軽
うぐっ

核心に迫る問いをしたが、ウサの反応はいつもと同じものだった。

(あれ?男じゃない?)
(じゃあ、いったい···)

若干気を抜きながら、さらに問い詰めてみると。

サトコ
「実は今日、海外の下着を着けてきてしまって···」

津軽
ん?だから?

サトコ
「だから、パッドがすごく厚くて!こんなふうになってるんです!」

(胸、大きくなったわけじゃなくて、そう見せてるだけ···?)
(···だよな。風船じゃあるまいし、そう簡単に膨らむわけないよなー)

当たり前のことに今さら気付く自分もおかしくて、笑いが止まらなくなってくる。

(盛りブラくらい想像つきそうなもんなのに)
(ウサがするとは思ってもなかったから)

仕事のことも、女の子のことも、大抵のことは予測できるのに。
予測できない、君だけはー-

サトコ
「あの、今日は···」

津軽
ん?

サトコ
「バタバタしてましたけど、ランチ、嬉しかったです」

津軽
え···あ、うん···

(なに、急に素直に···)

前に座るウサは昼とは違い、俺をじっと見つめている。
瞳が潤んで見えるのは照明のせいなのか。
かすかに紅潮してる頬は空調のせいなのか。

サトコ
「夕食もありがとうございます。すごく美味しいです!」

津軽
君さ···
つまりそれは、次は俺が好きなのを選んでいいってこと?

サトコ
「!?」

(今日買ったのもいいけど、俺が君に買ってあげるなら···)

今日買ったみたいな可愛いのもいいし、俺が想像した大人っぽいのもいい。
まぁ、その前に···服を脱がせる関係になるのが先なのだけれどー-

Happy End

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