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欲しがりカレシのキスの場所 颯馬2話

颯馬
貴女のパジャマをそろそろ新しくしようかと

カフェを出て連れて来られたのは、ルームウエアのショップだった。

サトコ
「気になっているものって、私のパジャマのことだったんですか?」

颯馬
ええ。季節的なこともありますが、惹かれるデザインを見つけまして

サトコ
「惹かれるデザイン···」

(もしや···スケスケのネグリジェとか···)

颯馬
これなんですけどね

颯馬さんはにっこりと微笑んで、一着のパジャマを手に取った。
それはごく普通のスタンダードな形のパジャマ。

(···スケスケじゃなくてよかった)
(ふんわりとした手触りだし、着心地も良さそう···だけど······)

ホッとしたのも束の間、プリントされた柄を見て目が点になる。

サトコ
「これって···ぼ、盆栽柄!?」

颯馬
ええ、よく分かりましたね

颯馬さんは満面の笑みで答える。

颯馬
見事な枝ぶりの黒松が、可愛らしくデザイン化されているんです

サトコ
「そ、そうなんですね···」

(盆栽柄のパジャマなんてあるんだ···)

颯馬
なかなかレアな一着だと思いませんか?

サトコ
「思います···めちゃくちゃ激レア商品かと···!」

颯馬
ぜひ貴女に着てもらいたいと思いまして

サトコ
「貴重なデザインですし、いいかも、ですね···」

颯馬
でしょう

サトコ
「でも、私より盆栽好きの颯馬さんが着るべきもののような···」
「男性用はないんですか?」

颯馬
残念ながらないそうです

(颯馬さん···本気で残念がってる···)

颯馬
ペアで着られたらよかったのですが

(うーん···それはそれでどうなんだろう···?)

颯馬
女性用だけですし、これはプレゼントさせてください

サトコ
「でも···」

颯馬
貴女に着てもらいたいと思うのは、俺のワガママだから

サトコ
「じゃあ···お言葉に甘えて」

(そんなににっこり微笑まれたら断れない···)

颯馬
では、ここで待っててください

颯馬さんはいつもと変わらないスマートさでレジに向かった。
でもその背中は、どこか嬉しそうに揺れていた。

颯馬さん “念願” の買い物を終え、ご飯も食べてそろそろいい時間。
夜の街をゆっくり歩いているとー-

颯馬
このパジャマ、早速今夜着て見せてくれますか?

サトコ
「え···」

(それってつまり、今夜はお泊まり···ということだよね)

サトコ
「はい···せっかくなので着てみようかな」

颯馬
楽しみですね

(ふふ、颯馬さんってば、盆栽柄が本当に気に入ってるんだな)

そんな颯馬さんがかわいく思えて、思わず私も笑顔になった。

サトコ
「激レアパジャマ、私も着るのが楽しみです」

颯馬
きっと可愛いですよ

サトコ
「だといいんですけど」

颯馬
あ、このパジャマはそのまま私の家に置いておくということでいいですか?

サトコ
「え···あ、はい」

颯馬
節約のため、私の家に泊まる機会も増えそうですしね

幾つもの紙袋を掲げ、颯馬さんはニヤリと悪戯っぽく微笑んだ。

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颯馬
今日は色々と買い込みましたね

サトコ
「ショッピングデート、楽しかったです」

颯馬さんの家に着き、荷物を置いてひと息つく。

(楽しかった分、明日から節約生活だ···!)
(あ、お泊りするから今夜からか)
(なんか上手く誘導されたような気もするけど···)

でも颯馬さんと過ごせる時間が増えるのはもちろん嬉しい。

サトコ
「ちょっと手洗いとうがいをしてきますね」

颯馬
どうぞ

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サトコ
「あっ···!」

洗面所に来た私は、鏡に映る自分を見て思わず目を見開いた。

(そうだ!前髪問題があったんだ···!)
(なんとなく誘導されるままお泊りするつもりでいたけど···)

このヘアバンドを外したら、あの小学生のような髪型がバレてしまう。

(おでこ丸出しの斬新ヘア···)
(どうしよう···見られたら絶対に笑われそう···)
(というか、見られたくない···!)

颯馬
どうしたんですか?そんなにしげしげと自分の顔を見つめて

サトコ
「!」

いつの間にか現れた颯馬さんと、鏡越しに目が合った。

サトコ
「あ、いや···そう言えば今日はヘアバンドをしてたんだなぁって···」

颯馬
お似合いですよ

最初に見た時と同じように、颯馬さんは柔らかに微笑んで褒めてくれる。

(でも、これを外したら···)

颯馬
よかったら先にお風呂に入ってください
それとも一緒に入る?

サトコ
「え···あはは···」
「今日はお言葉に甘えて、サクッと先にいただきますね!」

颯馬
···そうですか

さりげないお風呂への誘いを私に交わされ、颯馬さんは少し残念そうな顔をする。
でもまたすぐに柔らかそうな笑みを浮かべー-

颯馬
では、お風呂上りにはこのパジャマを

買って来たばかりの盆栽柄のパジャマを手渡し、颯馬さんは出て行った。

(今さら帰るとは言えないし···)
(でも、お風呂に入ったらこのヘアバンドを外すことになる···)
(髪は洗わず一晩ヘアバンドを付けたままで過ごすとか?)

颯馬さんに突っ込まれたら、会う前に美容院でシャンプーしたからと言えばいい。

(いや···それは無理があるよね)

サトコ
「はぁ···どうしよう」

悶々としたまま、とりあえずお風呂に入った。

サトコ
「お待たせしました。お先にいただきました···」

お風呂から上がり、前髪を押さえながらリビングへ戻って来た。

颯馬
では、私も入ってー-

おでこに手を当てている私を、颯馬さんが訝し気に見る。

颯馬
どうかしましたか?

サトコ
「ちょっと暑くて···」

颯馬
のぼせました?

サトコ
「いえ、大丈夫です···!」

心配そうに近づく颯馬さんを避けるように、慌ててタオルを被った。

颯馬
そうですか。では、私が風呂に入っている間、ゆっくり涼んでいてください

サトコ
「はい。いってらっしゃい」

タオルをターバン巻きにして誤魔化しながら、バスルームへ向かう颯馬さんを見送った。

サトコ
「ふぅ···ヘアバンドの次はタオルで難を逃れ···」
「でも、もうこれが限界かも」

いつまでもターバン巻きにしてるわけにいかず、仕方なくドライヤーをかけ始めた。

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颯馬
お待たせしました

サトコ
「···おかえりなさい!」

お風呂から出てきた颯馬さんを迎えた私は、咄嗟にまた前髪を押さえた。

颯馬
まだ暑いですか?

サトコ
「あ、いや···」

颯馬
のぼせたわけではないんですよね···?

サトコ
「え、ええ···まあ···」

颯馬
だったらその手は?汗をかいているようにも見えません

サトコ
「これは、その···」

じりじりと近付く颯馬さんに、ソファの方へ追い詰められる。

颯馬
何を隠してるんです?

サトコ
「べ、別に何も···」

颯馬
では、その証拠を見せてもらいましょうか

サトコ
「···!」

おでこに当てた手の手首をグッと掴まれ、そのままソファに押し倒される。

颯馬
隠し事は好きじゃない

サトコ
「あっ···!」

掴まれた手首を引かれ、強引に手を剥がされてしまいー-

颯馬
······

無防備なおでこが丸出しとなり、颯馬さんはきょとんとした顔で固まった。

(つ、ついに見られてしまった···!)

颯馬
これは···

(うぅ、恥ずかしい)
(お願い、そんなに見ないで···!)

まじまじと見られ、恥ずかしさで顔も身体も熱くなる。

颯馬
隠してたのはコレだったんですね

サトコ
「えっと、あの···これは、その···」

颯馬
······かわいい

サトコ
「えっ···?」

ぽつりと零れたひと言に、今度は私が固まったー-

to be continued

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