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欲しがりカレシのキスの場所 加賀2話

加賀
······

サトコ
「加賀さん」

加賀
っ······

サトコ
「もう、加賀さん!」

加賀
······

私から目を背け続ける加賀さんの顔を何度か覗き込み、ようやく目が合った。

加賀
···ぶはっ

サトコ
「やっと目が合ったのに笑われた···!」

加賀
こっち見んな···

サトコ
「ええ···!?さすがにひどい!彼女に対して言う言葉じゃない!」

(でもちょっと待って···こんなに笑ってる加賀さん、初めて見たかも)
(加賀さんが笑ってくれるなら)
(眉毛くらいたまになくなってもいいか。どうせまた生えてくるし···)

サトコ
「···いや、違う。加賀さんが笑ってくれてるんじゃない。加賀さんに笑われてるんだ」

加賀
笑い過ぎて腹痛ぇ

サトコ
「お腹痛くなるほど笑うなんて、ほんとひどい···」

加賀
···で?なんだそりゃ

サトコ
「いや、あの···」

(みんなが言うように眉毛を剃り落としちゃったんです···とは言えない)
(···っていうか、言いたくない!)

サトコ
「さっきも話した通り、不慮の事故が起きまして」

加賀
······

サトコ
「た、たいしたことはないんですけど、念のためー-にっ!?」

サッと手が伸びてきて、あわやばんそうこうを剥がされかける。

サトコ
「ななな、何するんですか!」

加賀
剥がさせろ

サトコ
「嫌ですよ···!」

加賀
逃げんな

サトコ
「無理です!」

めずらしくニヤニヤしながら、加賀さんが私のばんそうこうに狙いを定める。
その魔の手から逃れるため、給湯室を飛び出した。

黒澤
サトコさん、覚悟!

サトコ
「くっ···」

津軽
隙あり!

サトコ
「何を!とぉっ」

後ろに飛びのき、黒澤さんや津軽さんの手をギリギリのところでかわす。
すると後ろに控えていた百瀬さんが、素早い動きでこちらに手を伸ばしてきた。

サトコ
「!」

百瀬
「くそっ、ちょこまか動き回るんじゃねぇよ」

サトコ
「百瀬さんまで···!さっきは近寄るなって言ったじゃないですか!」

百瀬
「剥がしたくなるから近寄るなって言ったんだ」

サトコ
「じゃあもう近付きませんから!百瀬さんも近づかないでください!」

百瀬
「それが先輩への態度か」

話しながらも、百瀬さんは攻撃の手を緩めない。
壁際に追い詰められ、絶体絶命の大ピンチになった。

黒澤
いけー!百瀬さん、ひと思いにやってください!

サトコ
「不吉な言い方!」

百瀬
「覚悟しやがれ」

サトコ
「何この状況···!?」

百瀬さんが手を伸ばしてくるよりも一瞬早く、その腕の下をかいくぐるようにして抜け出した。

黒澤
あ~、もうちょっとだったのに!

百瀬
「くっ···」

東雲
あの子、動き素早くなってません?

颯馬
そうですね。いっそう犬らしくなってきたような

サトコ
「もう!みなさん、やめてください!」

給湯室から戻って来た私を待っていたのは、恐るべき刺客たち···
···ではなく、先輩たちによる『ばんそうこう剥がしゲーム』だった。

サトコ
「本当に、別に面白いもんじゃないですから!」

東雲
なら剥がして見せてくれてもよくない?

サトコ
「お、乙女心として見せるのははばかられるんです」
「もう、そっとしておいてくださいよ···」

黒澤
もらったー!

一瞬の隙をついて攻めてくる黒澤さんの腕をいなし、そのまま転ばせた。

津軽
へぇー、お見事

黒澤
くっ···サトコさん、よくここまで成長しましたね···
もう、オレが教えることは何もありません···

サトコ
「そもそも、何も教えてもらってないですから···!」

(ふう、本当に油断も隙もない···)
(これを剥がされたら末代までの恥···!絶対に死守しないと)

加賀
······

加賀さんと言えば、給湯室から戻ってきて以来、特に私のばんそうこうを剥がそうとはしない。
でもまるでラスボスのようにオフィスに君臨しており、私の不安を掻き立てた。

(でもまあ、大丈夫だよね。加賀さんだってそこまで暇じゃないだろうし)
(今日は外に行く用事がなくて助かった···誰にもこの姿は見せず、粛々と仕事しよう)

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粛々と仕事をするー-そう思いながら迎えた午後5時、退庁時間。

(つ、疲れた···今日はなんか、仕事以外の疲れがひどい気がする)
(みんなの魔の手をかいくぐりながらちゃんと仕事終わらせた私偉い。今日は早く帰ろう)

モタモタしているとまた黒澤さんたちが狙ってくるので、急いで帰る準備をする。

サトコ
「すみません、今日はお先に失礼します」

後藤
めずらしく早いな

サトコ
「はい、早く帰った方がいいかなと思って···」
「私のせいで、みなさんの業務にも支障が出そうですし」

後藤
主に黒澤だな。すまない、きつく言っておく

サトコ
「ありがとうございます。でもゲンコツは許してあげてください···」

方々に頭を下げ、バッグを抱えて顔を隠すようにしてオフィスを出る。
でも入口のところで、会議から戻って来た加賀さんにバッタリ会ってしまった。

サトコ
「あっ···」

加賀
······

サトコ
「お、お先に失礼します···」

加賀
邪魔だ、どけ

サトコ
「はいっ、すみません!」

慌てて、横にずれようとしたその時ー-

ベリッ

サトコ
「!!!???」

無情に響く、ばんそうこうを剥がす音···
そしてそれと同時に、私の両眉の秘密が白日の下にさらされた。

石神
ぶほっ

黒澤
えっ?えっ!?

津軽
ウサちゃん、ほんとに眉毛がない!

サトコ
「······!」
「かっ、加賀さん!?何を···」

加賀
······

(また肩震わせて笑ってる···!)
(絶対こうなると思ったから隠してたのに!)

東雲
···ぷっ

百瀬
「······」
「···クッ」

サトコ
「えっ、百瀬さん、今笑いました!?笑い声、初めて聞いたんですけど!」

百瀬
「笑ってねぇよ」
「···ククッ」

サトコ
「やっぱり笑ってるじゃないですか!」

颯馬
まあまあみなさん、女性を笑うなんて失礼ですよ
···ふっ

サトコ
「颯馬さん···!」

後藤
······

(後藤さん、加賀さんみたいに肩震わせて笑ってるし···!)
(っていうか石神さん、最初に盛大に吹き出したよね···!?)

サトコ
「加賀さん、なんでこんなこと···!」

加賀
······

(仮にも彼女に、この仕打ち···!)
(言うほどは傷ついてないけど、でもちょっとひどすぎる···)

ぐいっと肩を抱き寄せられたのはそのときだった。
気が付けば、みんなの前で加賀さんの胸に顔を押し付けるような格好になっている。

サトコ
「もがっ!かっ、加賀さ···」

加賀
そのナリじゃ帰れねぇだろ

サトコ
「誰がそうしたんですか···!?」

加賀
···仕方ねぇ
おい、歩

東雲
はいはい。いってらっしゃーい

サトコ
「え?ど、どういう···」

加賀
送ってやる

有無を言わさず、加賀さんは私の後頭部を掴んで歩き出した。

送ってやる···と言われたはずなのに、なぜか着いた先は給湯室だった。
どうして、と聞く前に顎を持ち上げられる。

サトコ
「ちょっ···さすがに庁内でキスはっ···」

加賀
出せ

サトコ
「へっ?」

(···有り金を?)

to be continued

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